ペリイ・メイスン・シリーズ。財閥の御曹司が関わる轢き逃げ事件。[???]

ペリイ・メイスン:弁護士
デラ・ストリート:メイスンの秘書
ポール・ドレイク:私立探偵
アディソン・バルフォア:バルフォア財閥の総帥
ガスリー:アディソンの弟
ドーラ:ガスリーの妻
シオドア:ガスリーの甥
バナー・ボールズ:バルフォア財閥の紛争調停人
フローレンス・イングル:ガスリーの友人
マリリン・ケイス:アディソンの秘書
マートル・アン・ヘイリー:轢き逃げ事件の証人
モーティマー・ディーン・ハウランド:弁護士
ジャクソン・イーガン:被害者
ハミルトン・バーガー:地方検事
ロジャー・フェリス:地方検事補
マービン・スペンサー・キャドウェル判事



「ある裁判を傍聴してほしい」 それは女性の声だったが、電話の主は身元を明かそうとしなかった。その依頼に興味を惹かれた弁護士・ペリイ・メイスンが観ることになったのは、さほど珍しくもなさそうな轢き逃げ事件の裁判だったが、彼はその事件の証言者のひとりから、嘘を感じ取った。

被告はバルフォア財閥の一族のひとりで、メイスンは正式な依頼を受ける。しかしその矢先、事件の様相が一変する。車に轢かれて死んだと思われていた被害者の頭部に、銃弾がめり込んでいることが判明したのである。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



ペリイ・メイスン・シリーズの52作目。最後にギリギリのタイミングで重要な証拠を入手するというのは、いつもあざとさを感じざるを得ないが、本作のストーリーテリングの巧みさは、シリーズ中でも優れてる部類に入るだろう。轢き逃げ事件が殺人事件へと変わり、被害者と思われていた人物は、数年前に死亡していることになっていたと判明する。財閥の紛争調停人・バナー・ボールズはメイスンに「事件の真相」を語るが、法廷ではそれとは異なるストーリーを証言し、メイスンと真っ向から対峙する。

作者はそこにはあまり力を入れてないが、「顔のない死体」の目的を誤認させるトリックが用いられている。作者が考慮した結果なのかわからないが、犯人が弾丸を取り出さなかった理由にもなってる。

被害者を射殺した経緯には釈然としない部分がある。きちんと計画がまとまっているわけでもないのに、不貞がバレてしまったからには仕方ないと、殺害したように解釈できるが、かと言って咄嗟に、衝動的に行なったようでもない。


殺害された人物を、その殺害犯として消す。
ペリイ・メイスン・シリーズ。貴重な金魚を自分の手に取り戻したい依頼者が殺される。[???]

ペリイ・メイスン:弁護士
デラ・ストリート:メイスンの秘書
ポール・ドレイク:私立探偵
トム・グリッドリイ:ペットショップの店員
サリイ・マディスン:トムの恋人
ハリントン・フォークナー:不動産業者
エルマー・カースン:ハリントンの共同経営者
ジェネヴィーヴ・フォークナー:ハリントンの先妻
ジェーン・フォークナー:ハリントンの後妻
アルバータ・スタンリイ:ハリントンの秘書
ウィルフレッド・ディクスン:ジェネヴィーヴの顧問
アデル・フェアバンクス:ジェーンの友人
デイヴィッド・ロウリンス:ペットショップの主人
ジェームズ・L・スタウントン:保険代理業者
ドーセット殺人課の部長刑事
トラッグ:同警部
サマヴィル判事:予審裁判長
レイ・メッドフォード:検事



辣腕弁護士・ペリイ・メイスンのもとに持ち込まれた依頼は、採るに足らぬものと思えた。ハリントン・フォークナーにとっては貴重な黒い金魚が危機に晒されているという。共同経営者・エルマー・カースンがなぜか急にフォークナーに敵対的な態度を示すようになり、金魚を会社の所有物と主張し、その病気の治療を妨害しているだけでなく、フォークナーを名誉毀損で告訴までしたのだ。

まったく気乗りしないメイスンであったが、結局はこの件に関わってしまうことになる。しかしそれは金魚をフォークナーの手に取り戻すことではなく、フォークナー殺害事件についてであった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



多作作家ガードナーの大人気シリーズ「ペリイ・メイスン」物の(たぶん)26作目。

主人公が弁護士という設定上、会話や説明がくどかったり、話を転がすためにドタバタが過ぎたりする嫌いはあっても、このシリーズは論理パズル的ではあるし、最後の法廷場面が探偵のプレゼンテーションみたいだし、そのフォーマットは割と僕好みなのだが、本作はいまいち。犯人以外の人物が嘘ばかりつくというのもやはり好みではないが、そんなことよりも話がゴチャゴチャしすぎ。枝葉の部分ばかり長々と説明した挙句、唐突に最も重大な部分をテキトーに流したみたいで、読み終わっても、どうもすっきりしない。気づけば、「いったいどんな事件だったっけ?」状態。

道楽の金魚にはカネを惜しまないフォークナーだったら、5000ドルどころかそれ以上の額だってさっさと支払うだろうに、なぜそれを出し渋って、わざわざ手間を掛け、恨みまで買う手段を採るのかさっぱりわからない。狙撃によるフォークナー殺害未遂の事情や、なぜ彼が不法行為に加担してまでも、不当な安値で株を手放すのかも、まったく掘り下げられてない。

殺人未遂犯。窃盗犯。脱税犯。殺人犯。犯罪者だらけ。
連作短編集。話を訊くだけで真相を見抜く球団オーナー・虹森多佳子。背水の陣で優勝を目指す万年弱小球団・東海レインボーズ。[???]

「第一話 幻の虹」:試合中のスタジアムの観客席で大金をばら撒く男。
「第二話 見えない虹」:自宅にてヘッドフォンで音楽を聴いているときに殺された男。
「第三話 破れた虹」:封筒を巡って付け狙われる。
「第四話 騒々しい虹」:鉢植えの水やりのバイト少年が訪れた部屋に脅迫電話。
「第五話 ダイヤモンドにかかる虹」:元アイドルの藤田吉子の溺死事件。

※以下の反転表示部はネタバレ注意。




亡夫の後を継ぎ、リーグ随一の不人気球団・東海レインボーズのオーナーとなった虹森多佳子はまったく野球に疎く、これではいけないと、球場の観客席に足を運ぶ日々。そこになぜか舞い込んでくる事件の話を聞くうちに多佳子が真相解明してしまうという、安楽椅子探偵物語の短編集。元々は自費出版だったが、各所に配布されるうちに好評を得て、東京創元社からも出版された。

好感の持てる作品ではあるが、「幻の名著」とまで持ち上げられると、それは果たしてどうだろうか。むしろそれは本書に堅苦しい印象を与え、この緩やかで、暖かな雰囲気を損ねてしまうのではないかとも思える。本書は、細かい欠点や粗はあまり気にせずに、大らかな気持ちで読むような本ではないだろうか。新保博久による解説にあるように、「ちょっといいミステリ」。





「第一話 幻の虹」
レインボーズの本拠地の客席はいつものように閑散としていた。そこに現れた男は、どうも試合には興味がなさそうだった。それがよほど大事な物なのか、鞄を抱え込んだまま落ち着かない。そして試合が終盤に入ると、その男は奇妙な行動を取った。鞄から出した大量の札をばら撒き始めたのである。我が子を誘拐され、その犯人にそうするように要求されたという。既に事情を聞かされ、張り込んでいた刑事とともに、その話を聞くレインボーズのオーナー・多佳子。その最中、子供が無事発見されたという情報がもたらされるが、それと同時にもうひとつの知らせがあった。別口の殺人事件の報だった。



「カネが球場でばら撒かれる」という、通常では予測不能な突発的な出来事をアリバイ・トリックに利用。




「第二話 見えない虹」
レインボーズのファン同士ということでペンパルとなった真波と達也は、球場で初対面することになった。不人気球団ゆえ、さほど多くの観客は入ってないが、ふたりの近くの席に現れた、色摩と呼ばれた老サラリーマン風の男性を連れた、貴婦人のような出で立ちの多佳子という女性の姿に、真波はつい見とれてしまった。次に現れたのが、元・刑事らしき鎮目老人と元(?)・置き引きらしき“メンチの克”。彼らの話は、いつしか近隣高校の教師殺害事件についてのものになった。

ヘッドフォンで音楽を聴いているときに殺害された、その教師はひどい男だったようで、女も寄り付かず、広い家で一人暮らしを続けていた。生徒からの評判も最悪で、その怨恨の線も充分考えられた。殺される少し前から嫌がらせ被害が続いており、同僚の教師にも愚痴っていたという。その嫌がらせはなぜかレインボーズの試合の翌朝に発覚していたので、おそらく犯人はレインボーズの試合観戦に足を運び、帰宅する際に近所の教師宅に通っていたのだろうと推測された。教師が死んだ晩もやはりレインボーズの試合があったが、それは八回までに0対8という大劣勢であり、犯人は試合終了を待たずして、教師宅へ向かい、もう嫌がらせも充分だろうと、ついに殺害したものと思われる。



広い家に一人暮らしの教師が、ヘッドフォンをしていたこと。嫌がらせも含めた犯行がレインボーズの試合の晩に限られていたこと。




「第三話 破れた虹」
ある日、萌子が独りで番をしていた喫茶店に、二人連れが来店した。その片方が席を離れたときに、萌子はもう片方から封筒を渡され、しばらく預かってほしいと頼まれた。数日もすると、萌子はその封筒のことはすっかり忘れていたが、来店した客の顔を見て、思い出した。間違いなく、あの封筒の客の連れである。あの客の友人になら構わないだろうと、封筒を返そうとすると、自分はここに来るのは初めてだ、そんな封筒を受け取る謂れはないと、断固として主張するのだった。

では、自分の記憶違いだったかと、萌子はその場では思ったものの、その日以来、その男は萌子を付け回すようにようになった。するとやはり男は嘘をついており、封筒を堂々と受け取らないのは、そこに何か後ろ暗い理由があるに違いない…。



思いもかけぬ幸運が策をまったく不要なものにしたとき、策を思案する男にとっては却って不意打ちとなった。男は咄嗟の嘘で、自らを窮地に追い込んでしまう。




「第四話 騒々しい虹」
出逢ったばかりの女性から、旅行で部屋を空ける間の鉢植えの水遣りのバイトを頼まれた少年。それを引き受け、部屋に入り、水遣りしていると、留守番電話に脅迫めいた男の声が入ってきた。「ユキエ」というのが、この部屋の主の名前なのだろう。その彼女だけではなく、「あの男」もひどい目に遭うことになると、その声は脅すのだった。そして脅迫電話は日に日にエスカレートしてくる。そしてある日、いつものように部屋を訪れると、部屋がひどく荒らされていた。あの脅迫男の仕業に違いないと、少年は怯えるのであった。



ほかにもっとひどいことがあれば、それよりはマシなことは受け入れようという気になる、というプロットだが、どう考えても納得できるような筋書きじゃない。危険な男に付きまとわれてるから、それよりはマシな男とさっさと結婚させて、めでたしめでたし、万事解決などと親が胸を撫で下ろすはずがない。そんな危険な男なら、相手が別の男と結婚したとなれば、そのふたりとも殺しかねないとして、警察沙汰に発展すると考えるのが自然だろう。




「第五話 ダイヤモンドにかかる虹」
元アイドルの藤田吉子が貯水池に落とされ溺死した。彼女の偏執狂的なファンである飛島五郎がその容疑者となるが、既に彼は姿をくらましていた。



真の標的を悟られぬように、それとは別のもっと目立つ事件の中に埋もれさせてしまうというもの。木を隠すなら森の中、森がないなら作ってしまえばいい、という系統だろうか。

というのがメインの事件だが、物語の中心となっているのは、それに絡む小さな事件のほう。「レインボーズが優勝したら結婚なんて、どう?」という、冗談とも本気とも判断がつかぬ昭次の言葉に思い悩む裕香と、彼女に掛かってきた一本の電話の謎が軸になっている。