ヘンリー・メルヴェール卿シリーズの長編第5作。冒険・スパイものっぽい異色作。自身の結婚式を翌日に控えた人物が、大物スパイ絡みの調査を命じられる。わけのわからぬままにトラブルに巻き込まれつつ、なんとか目当ての家に辿り着くと、そこにはその家の主人の死体が。[??]
ケンウッド(ケン)・ブレイク:元情報部部員
イヴリン・チェイン:同, ケンの婚約者
チャーターズ大佐:デヴォンの警察部長
ジョゼフ・サーポス:大佐の秘書
ポール・ホウゲナウア:元ドイツ・スパイ
ヘンリー・バワーズ:ホウゲナウアの使用人
アルバート・ケッペル:ドイツ人科学者, ホウゲナウアの友人
ローレンス(ラリー)・アントリム:医師
エリザベス:アントリムの妻
ジョンソン・ストーン:H・Mを探すアメリカ人
L:正体不明の国際的ブローカー
デイヴィス:巡査部長
マーチスン:警部
ヘンリー・メルヴェール卿(H・M):陸軍情報部長官
ブレイクは上司のH・Mから呼び出され、新たな任務を指示された。正体不明の大物スパイ“L”についての情報を売りたいという人物がいるが、その情報の真贋を見極めるために、彼の家に忍び込むようにというものだった。そんな仕事ならほかにも適任者はいるだろうし、ましてや自分は翌日に結婚式を控えている身だからと断りたかったが、結局押し切られてしまう。
そこでブレイクはホウゲナウアの家へと向かったが、その途中、なぜかブレイクは窃盗容疑で逮捕されてしまった。それはなんとH・Mの指示だと聞かされる。事情がわからず、任務について明かすわけにもいかず、とりあえずブレイクは警官に扮して警察署から逃げ出した。そしてようやくホウゲナウアの家に到着すると、そこには彼の死体があった。そしてそのそばには薬瓶を持った女が――
※以下反転表示部のネタバレ注意。
H・Mものとしてはちょっと変わった作風。主人公っぽいケンウッド・ブレイクがわけもわからず次々とトラブルに巻き込まれ、変装を繰り返しつつ危機を脱していく様は、まるで冒険・スパイもののパロディ。
軽めの異色作みたいなものだから、ハヤカワ文庫新訳版で二階堂黎人がカー初心者向けと書いてるのも納得できるような、そうでもないような。読んでいて何が起こってるのかよくわからず、スラップスティックな軽い作風の割には読みづらい気もするんだ。
最終的には本格物らしい謎解きも成されているんだけど、もうそこはどうでもいいかなという感じw 作品全体に手掛かりがばら撒かれ、きちんとまとまっているんだけど、なんとなく取って付けたみたいな印象が…w
話がドタバタなだけに、「意外な犯人」効果が薄められている面もある。重さや深刻さがまったく伝わってこない。感覚的には、「執事が犯人でした」なんてのと大した差がないw
「前日に結婚式を控えた半婿」というタイムリミットもののサスペンスなんだけど、結婚式くらいではいまいちその深刻さが伝わらない。当の本人にとってはとてつもなく深刻な問題であっても、他人としてはどうもねw
極悪人ではないとして犯人を見逃すH・Mの人情味が云々という文章を見かけたけど、この犯人がやったことは結構ひどい。もし遺族や親しい知人がいるなら、犯人の逃亡に手を貸すとは、彼らにとっては堪らないだろう。
犯人は偽札事件の押収物の中に本物の札が混じっていることを知っており、その鑑定をホウゲナウアに依頼し、口封じのために彼を毒殺(ついでに巻き添えでもう一人が死亡)したが、その毒物の出元に迷惑を掛けることを恐れて偽装工作した。
[1 花婿の旅立ち] 自身の結婚式の前日。ブレイクはホウゲナウアの調査をH・Mから指示される。ホウゲナウアは謎の大物スパイ“L”についての情報を握っているという。
[2 逆さになった植木鉢] ホウゲナウアはLの情報の売買を持ちかけている。しかし彼自身もまた怪しい人物なので、その情報の真偽も含め、調査を要する。H・M、チャーターズ、ブレイクが話し合っていると、アントリムが訪問してきた。ストリキニーネが入った瓶を、取り違えてしまったのか、紛失したという。
[3 田舎家の鎧戸] 身分を隠し、調査に出たブレイクは知人のストーンに遭遇し、さっそく好ましからぬ事態に。腹立たしくその場を後にしたが、なぜか窃盗容疑で逮捕されてしまう。警官が言うには、H・Mとチャーターズの指示だという。ブレイクはわけの判らぬまま連行されてしまう。ところがすぐに署に、彼を起訴しないという連絡が来る。警官もどうすべきか判断できず、とりあえずブレイクは一晩留め置かれることになった。ブレイクとしては事情を明かすわけにもいかず、一晩このままというのも困るので、警官の制服を盗み、脱出した。
[4 毒薬の瓶] ブレイクはホウゲナウアの家を訪れた。そこにはホウゲナウアの使用人バワーズが留守番していたが、偽警官のブレイクは適当な話をでっち上げて中に入り込んだ。物音に気づき、二人でホウゲナウアの部屋に入ると、そこには彼の死体と、小瓶を持った女がいた。
[5 四つのカフスボタン] 部屋に潜んでいた女はアントリムの妻エリザベス。アントリムの診察室の薬瓶が誰かによって入れ替えられ、それによってストリキニーネがホウゲナウアの手に渡ったことに気づき、それをこっそり取り戻しに来たという。ブレイクは警官のふりをしてバワーズやエリザベスから話を訊いていたが、本物の警官がこの家の前までやって来た。
[6 百ポンドの新聞紙] ブレイクはホウゲナウアの家を脱出し、チャーターズと連絡を取る。なぜブレイクが逮捕されるに至ったか、その事情が判明。チャーターズの秘書サーポスが重要な品を盗み出し、ブレイクは彼と間違えられた。H・Mはブレイクに、ケッペルの部屋に忍び込むように指示する。
[7 鞄の中の悪魔] ブレイクは駅でサーポスと遭遇。彼から鞄を奪い取り、彼の身柄は洗面所に閉じ込める。
[8 地下六フィート] ブレイクは列車の中で警官から牧師に姿を変え、イヴリン、ストーンと合流。ストーンはLの正体を知っているという。Lは6週間以上前に死亡。
[9 二人の牧師] Lには娘がおり、それはエリザベスらしい。車内で本物の牧師から追及を受け、ブレイクは再び危機に。
[10 空飛ぶ死体] サーポスの鞄からは大量の紙幣が見つかった。ブレイクはイヴリンたちの協力もあり、窮地を脱した。ブレイクはイヴリンが持って来たチャーターズの服に着替え、ようやく落ち着いた服装に戻った。ケッペルが泊まっているホテルに到着。彼の不在を確認し、窓から彼の部屋に侵入を試みる。怪しい気配を感じ、ナイフを使って窓を探った。するとギロチンの仕掛けが作動した。指を落とされずに済んだブレイクはなんとか部屋に入り込んだ。
[11 ギロチン窓] 室内にはケッペルの死体。その容貌はホウゲナウアに酷似。ブレイクは目的の書類を入手した。その頃、ブレイクがホテルの受付で使用したのが偽札と判明。彼らは窮地に。
[12 静まり返ったホテル] ブレイクたちは“ウィロビー事件”の一味と誤解される。そこにストーンと、彼の義理の息子だというマーチスン警部が現れ、ブレイクたちは解放される。
[13 Lの復活] ケッペルの部屋にあった書類を読む。ホウゲナウアの謎の行動の真相などについて書かれている。電話が掛かってくる。相手はLと名乗る。その電話はアントリムの家から掛けられたもの。
[14 パンチとジュディ] ブレイクたちはアントリムの家へ。そこにはH・Mを始め、関係者たちが集まっている。誰がそこから電話したのか不明。
[15 三つの電話] H・Mがエリザベスを尋問。
[16 信じがたい盗人] H・Mがアントリムを尋問。電話を使ったのはサーポス。
[17 客間の声] H・Mがバワーズを尋問。
[18 五つの答え] H・Mを含め、その場の5人の人物が殺人犯とその動機について紙片に記す。H・Mがサーポスを尋問。
[19 殺人者] 紙片に書かれた推理について検討。
[20 「そしてジョリスは沈黙を破った――」] ブレイクとイヴリンはなんとか結婚式に間に合いそう。H・Mが事件の真相を語る。【ホウゲナウアがLの情報を売るという話の根拠は、チャーターズによる説明しかない。“ウィロビー事件”の偽札はチャーターズによって管理されていた。チャーターズはホウゲナウアの家を訪問したことがないはずなのに、その室内の様子に触れた。ホウゲナウアは偽札に関しての権威。ホウゲナウアの家にあった、偽札が挟まっていた古新聞の日付は4日前。それは証拠物件の偽札がチャーターズの金庫に収まっていた頃。偽札はダミーで、札束の中には本物が隠されていた。口封じのためにホウゲナウアを殺しても、そのためにアントリムに冤罪を負わせたくはなかった。殺人捜査の責任者はチャーターズだが、殺人犯を正体不明のLとすれば、逮捕できなくても不手際は責められない。サーポスはチャーターズの犯行に気づき、彼を脅迫した】
ケンウッド(ケン)・ブレイク:元情報部部員
イヴリン・チェイン:同, ケンの婚約者
チャーターズ大佐:デヴォンの警察部長
ジョゼフ・サーポス:大佐の秘書
ポール・ホウゲナウア:元ドイツ・スパイ
ヘンリー・バワーズ:ホウゲナウアの使用人
アルバート・ケッペル:ドイツ人科学者, ホウゲナウアの友人
ローレンス(ラリー)・アントリム:医師
エリザベス:アントリムの妻
ジョンソン・ストーン:H・Mを探すアメリカ人
L:正体不明の国際的ブローカー
デイヴィス:巡査部長
マーチスン:警部
ヘンリー・メルヴェール卿(H・M):陸軍情報部長官
ブレイクは上司のH・Mから呼び出され、新たな任務を指示された。正体不明の大物スパイ“L”についての情報を売りたいという人物がいるが、その情報の真贋を見極めるために、彼の家に忍び込むようにというものだった。そんな仕事ならほかにも適任者はいるだろうし、ましてや自分は翌日に結婚式を控えている身だからと断りたかったが、結局押し切られてしまう。
そこでブレイクはホウゲナウアの家へと向かったが、その途中、なぜかブレイクは窃盗容疑で逮捕されてしまった。それはなんとH・Mの指示だと聞かされる。事情がわからず、任務について明かすわけにもいかず、とりあえずブレイクは警官に扮して警察署から逃げ出した。そしてようやくホウゲナウアの家に到着すると、そこには彼の死体があった。そしてそのそばには薬瓶を持った女が――
※以下反転表示部のネタバレ注意。
H・Mものとしてはちょっと変わった作風。主人公っぽいケンウッド・ブレイクがわけもわからず次々とトラブルに巻き込まれ、変装を繰り返しつつ危機を脱していく様は、まるで冒険・スパイもののパロディ。
軽めの異色作みたいなものだから、ハヤカワ文庫新訳版で二階堂黎人がカー初心者向けと書いてるのも納得できるような、そうでもないような。読んでいて何が起こってるのかよくわからず、スラップスティックな軽い作風の割には読みづらい気もするんだ。
最終的には本格物らしい謎解きも成されているんだけど、もうそこはどうでもいいかなという感じw 作品全体に手掛かりがばら撒かれ、きちんとまとまっているんだけど、なんとなく取って付けたみたいな印象が…w
話がドタバタなだけに、「意外な犯人」効果が薄められている面もある。重さや深刻さがまったく伝わってこない。感覚的には、「執事が犯人でした」なんてのと大した差がないw
「前日に結婚式を控えた半婿」というタイムリミットもののサスペンスなんだけど、結婚式くらいではいまいちその深刻さが伝わらない。当の本人にとってはとてつもなく深刻な問題であっても、他人としてはどうもねw
極悪人ではないとして犯人を見逃すH・Mの人情味が云々という文章を見かけたけど、この犯人がやったことは結構ひどい。もし遺族や親しい知人がいるなら、犯人の逃亡に手を貸すとは、彼らにとっては堪らないだろう。
犯人は偽札事件の押収物の中に本物の札が混じっていることを知っており、その鑑定をホウゲナウアに依頼し、口封じのために彼を毒殺(ついでに巻き添えでもう一人が死亡)したが、その毒物の出元に迷惑を掛けることを恐れて偽装工作した。
[1 花婿の旅立ち] 自身の結婚式の前日。ブレイクはホウゲナウアの調査をH・Mから指示される。ホウゲナウアは謎の大物スパイ“L”についての情報を握っているという。
[2 逆さになった植木鉢] ホウゲナウアはLの情報の売買を持ちかけている。しかし彼自身もまた怪しい人物なので、その情報の真偽も含め、調査を要する。H・M、チャーターズ、ブレイクが話し合っていると、アントリムが訪問してきた。ストリキニーネが入った瓶を、取り違えてしまったのか、紛失したという。
[3 田舎家の鎧戸] 身分を隠し、調査に出たブレイクは知人のストーンに遭遇し、さっそく好ましからぬ事態に。腹立たしくその場を後にしたが、なぜか窃盗容疑で逮捕されてしまう。警官が言うには、H・Mとチャーターズの指示だという。ブレイクはわけの判らぬまま連行されてしまう。ところがすぐに署に、彼を起訴しないという連絡が来る。警官もどうすべきか判断できず、とりあえずブレイクは一晩留め置かれることになった。ブレイクとしては事情を明かすわけにもいかず、一晩このままというのも困るので、警官の制服を盗み、脱出した。
[4 毒薬の瓶] ブレイクはホウゲナウアの家を訪れた。そこにはホウゲナウアの使用人バワーズが留守番していたが、偽警官のブレイクは適当な話をでっち上げて中に入り込んだ。物音に気づき、二人でホウゲナウアの部屋に入ると、そこには彼の死体と、小瓶を持った女がいた。
[5 四つのカフスボタン] 部屋に潜んでいた女はアントリムの妻エリザベス。アントリムの診察室の薬瓶が誰かによって入れ替えられ、それによってストリキニーネがホウゲナウアの手に渡ったことに気づき、それをこっそり取り戻しに来たという。ブレイクは警官のふりをしてバワーズやエリザベスから話を訊いていたが、本物の警官がこの家の前までやって来た。
[6 百ポンドの新聞紙] ブレイクはホウゲナウアの家を脱出し、チャーターズと連絡を取る。なぜブレイクが逮捕されるに至ったか、その事情が判明。チャーターズの秘書サーポスが重要な品を盗み出し、ブレイクは彼と間違えられた。H・Mはブレイクに、ケッペルの部屋に忍び込むように指示する。
[7 鞄の中の悪魔] ブレイクは駅でサーポスと遭遇。彼から鞄を奪い取り、彼の身柄は洗面所に閉じ込める。
[8 地下六フィート] ブレイクは列車の中で警官から牧師に姿を変え、イヴリン、ストーンと合流。ストーンはLの正体を知っているという。Lは6週間以上前に死亡。
[9 二人の牧師] Lには娘がおり、それはエリザベスらしい。車内で本物の牧師から追及を受け、ブレイクは再び危機に。
[10 空飛ぶ死体] サーポスの鞄からは大量の紙幣が見つかった。ブレイクはイヴリンたちの協力もあり、窮地を脱した。ブレイクはイヴリンが持って来たチャーターズの服に着替え、ようやく落ち着いた服装に戻った。ケッペルが泊まっているホテルに到着。彼の不在を確認し、窓から彼の部屋に侵入を試みる。怪しい気配を感じ、ナイフを使って窓を探った。するとギロチンの仕掛けが作動した。指を落とされずに済んだブレイクはなんとか部屋に入り込んだ。
[11 ギロチン窓] 室内にはケッペルの死体。その容貌はホウゲナウアに酷似。ブレイクは目的の書類を入手した。その頃、ブレイクがホテルの受付で使用したのが偽札と判明。彼らは窮地に。
[12 静まり返ったホテル] ブレイクたちは“ウィロビー事件”の一味と誤解される。そこにストーンと、彼の義理の息子だというマーチスン警部が現れ、ブレイクたちは解放される。
[13 Lの復活] ケッペルの部屋にあった書類を読む。ホウゲナウアの謎の行動の真相などについて書かれている。電話が掛かってくる。相手はLと名乗る。その電話はアントリムの家から掛けられたもの。
[14 パンチとジュディ] ブレイクたちはアントリムの家へ。そこにはH・Mを始め、関係者たちが集まっている。誰がそこから電話したのか不明。
[15 三つの電話] H・Mがエリザベスを尋問。
[16 信じがたい盗人] H・Mがアントリムを尋問。電話を使ったのはサーポス。
[17 客間の声] H・Mがバワーズを尋問。
[18 五つの答え] H・Mを含め、その場の5人の人物が殺人犯とその動機について紙片に記す。H・Mがサーポスを尋問。
[19 殺人者] 紙片に書かれた推理について検討。
[20 「そしてジョリスは沈黙を破った――」] ブレイクとイヴリンはなんとか結婚式に間に合いそう。H・Mが事件の真相を語る。【ホウゲナウアがLの情報を売るという話の根拠は、チャーターズによる説明しかない。“ウィロビー事件”の偽札はチャーターズによって管理されていた。チャーターズはホウゲナウアの家を訪問したことがないはずなのに、その室内の様子に触れた。ホウゲナウアは偽札に関しての権威。ホウゲナウアの家にあった、偽札が挟まっていた古新聞の日付は4日前。それは証拠物件の偽札がチャーターズの金庫に収まっていた頃。偽札はダミーで、札束の中には本物が隠されていた。口封じのためにホウゲナウアを殺しても、そのためにアントリムに冤罪を負わせたくはなかった。殺人捜査の責任者はチャーターズだが、殺人犯を正体不明のLとすれば、逮捕できなくても不手際は責められない。サーポスはチャーターズの犯行に気づき、彼を脅迫した】