天地龍之介シリーズ。幽霊館と呼ばれる廃ビルの壁に映る空中浮遊の人影。幽霊館の中で窓から落ちて消えた女が死体となって発見される。[???]

天地龍之介:IQ190, 臆病
天地光章:龍之介の従兄弟
長代一美:光章のガールフレンド
池渕:支配人
三田村学:地元の小学校の教師
人見優子:助教授
降旗吾光:大学生, 人見の教え子
飛島一馬:同, 同
向井君子:同, 同
次家幸四郎:電気店主, 観光用電気設備保守点検請負
安藤:刑事



旅行中の天地龍之介、光章、長代一美が間欠泉を見物に向かう。案内看板が故障しており、1秒ほどの間隔で点滅する明かりが闇夜を照らしている。そのとき彼らは幽霊館と呼ばれる廃ビルの前の空中に、浮遊する人影を目撃してしまう。一瞬の暗黒の後、人影は少し高い位置に移動し、次に照らされたときにはさらに高い位置、3階の窓の辺りにまで移動していた。そして二度と姿を見せなかった。

彼らは幽霊館の中に入った。3階に上がると、別の窓に腰掛ける女が突然に出現し、窓から外へと落下した。光章が窓の下を見てみると、そこには誰もいなかった。

翌日、脱輪したまま放置された車のトランクから、女の死体が発見された。それは前夜に光章たちが目撃した女だった。


※以下反転表示部のネタバレ注意。



文庫本で138ページ、さらに文字も大きめということで、その分量は通常のミステリの100ページぶんくらいかも。1冊まるごと使ったものとしてはかなり短い。なのに冒頭に本筋とは無関係なちょっとしたエピソードを入れたり、内容は詰め込まれている。普通のミステリでは事件が発生してから、その調査が展開されて、そして解決編という流れだが、本作は事件が発生してすぐに解決編という感じ。

明滅する明りの中で空中を上昇していく人影のトリックは偶然に依ったものだが、人の思い込みを利用している。人影はそれぞれ別人のものなのに、それを同一人物のものと誤認させる。目撃者の一方はそれを女と認識し、もう一方は男と認識するというのがヒントになっている。

3階の映写機のトリックの処理は稚拙だが、この分量では仕方なかろう。死体の隠し場所も含めて、よくそれだけ詰め込んだと、むしろ褒めたい。 繰り返すが、この分量の中に被害者の幼馴染や怪しげな作業員を登場させ、誤った解決まで入れるというのは立派w



[1] 龍之介、光章、一美、温泉地のホテルに滞在中。従業員と客が揉めている。落とし物を拾った客は、従業員が落とし主と話していたと主張するが、従業員はまったく覚えていない。龍之介は難なくその謎を解決。近辺では幽霊館と呼ばれている廃ビルのそばにある間欠泉を見物に行く。案内看板の電飾が故障中で、1秒間隔ほどで青い光の明滅を繰り返している。「落とし主は館内放送で呼びかけても名乗り出なかった。落とし主は実は外国人で、イタリア語を話していたが、それを聞いた客がそれを日本語と勘違いし、たまたまその横にいただけの従業員と会話しているように思い込んでいた」
[2] 明滅する青い光が、幽霊館の西側の壁の前の空中に浮かぶ人の後ろ姿を一瞬照らす。1秒の暗黒の後、人影は少し高い位置に移動している。3度目はさらに少し高く、3階の窓辺りまで移動していた。幽霊館に入る。生徒たちとともに肝試しに来ていた教師・三田村と出会う。彼らもまだ行っていない3階へと上る。人影はない。北側の窓枠に坐る女が突然に出現。女は落下。助けようとした光章は落下とほとんど同時に窓の下を見たが、その姿はなかった。「空中の人影は青い光に照らされていたのでその服の色は断定できないが、青または白装束。性別は不明だが、光章は3度めで女と直感している。幽霊館の3階の短い通路の入り口に大きな暖簾が垂れ下がっている」
[3] 屋上にも誰もいない。看板の電気が、作業員の手により完全に消える。
[4] 光章、窓から消えた女とそれ以前に会っていたことを思い出す。その女は助教授・人見。教え子3名を連れ、ここに帰郷していた。「一美は青い光に照らされた人影を男と直感している。人見はまだ若く美女。3名の教え子(降旗、飛島、向井)を連れていた。うち2名は男で水泳部に所属。事件後、光章がロビーで見かけた降旗たちは洋服を着ていた。浴衣姿の彼らに混じって映る人見の写真。脱輪したまま放置された車のトランクから人見の死体が見つかる」
[5] 人見は殴られ、絞殺されていた。死体が入っていたのは盗難車。殺害現場は血痕が見つかった幽霊館の3階と見られる。光章と一美は安藤刑事から疑いを掛けられている。「被害者の所持品に組み込まれた内蔵時計の停止時刻から、殺害されたのは午後8時52分よりも前と推定。三田村たちが幽霊館に入ったのは午後9時。その後、光章たちが入ったときには、死体は建物内にあったはず」
[6] 人見と幼馴染である三田村も警察から疑われる。「光章が目撃した人見の姿は3階に仕掛けられていたタイマーがセットされた映写機によるもの」
[7] 安藤刑事に連れられて、光章たちは3階へ。次家、空中浮遊の女の正体は、三田村が2階で操作していた風船という説を披露。「窓には映写用のスクリーンの仕掛けがある。仕掛けが回収されてないのは、その仕掛け人が既に死んだ人見だから。本人ならその映像を撮るのも簡単」
[8] 龍之介、事件の真相を説明。「人見は教え子3名を驚かそうとしており、彼らとともに3階に上がった。発作的に教え子たちは人見を殺す。階下に三田村たちが来てしまったので、西の窓から池に飛び込んで逃げる。間隔を置いて飛び降りたので、点滅する明かりに照らされた3人が、まるで同一人物が上昇しているように見えた。光章は最後に見た向井の姿によって、それが女だという印象を持った。一美は最初に見た降旗の姿によって、それが男だという印象を持った。彼らは青い浴衣を着ていた」
[9] 安藤刑事と龍之介による補足説明。「動機は痴情のもつれ。最初、死体は3階のパイプの上に置かれ、その上から暖簾が掛けられていた。ヤジロベエ効果。関係者の名字を並べると…」
[10] 光章、一美から誕生日プレゼントを貰う。