“切り裂きジャック事件”を題材。犯人の残忍な手口の理由。[???]

カール・シュワンツ:殺人課の刑事, モニカの恋人
ペーター・シュトロゼック:同, カールの相棒
ハインツ・ディックマン:同
オラフ・オーストライヒ:同
レオナルド・ビンター:同捜査主任
モニカ・フォンフェルトン:風紀課署員, カールの恋人
クラウス・エンゲルモーア:同, モニカの同僚
モーガン:巡査
メアリー・ベネター:娼婦, ベルリン切り裂き魔事件の第一の被害者
アン・ラスカル:同, 同第二の被害者
マーガレット・バクスター:同, 同第三の被害者
ジュリア・カスティ:同, 同第四の被害者
キャサリン・ベイカー:同, 同第五の被害者
クリス・ユンゲル:同
マインツ・ベルガー:雑誌記者
レン・ホルツァー:パンクボーイ
エルケ・ゾルマー:レンの情人
クリーン・ミステリ:切り裂きジャック研究家



1988年、西ベルリン。街角に立つ娼婦が殺害された。それもただ殺されただけではなく、腹を裂かれ、腸を引き摺り出されるという残忍な手口だった。しかもその夜に殺されたのは彼女一人ではなかった。同様の手口で殺されたのは、彼女も含めて計三名。皆なぜか顔に青インクを掛けられた痕跡があった。

翌日、警察の厳しい警戒をかいくぐり、再び娼婦が二人、惨殺された。彼女たちの顔には青インクは掛かっていなかったが、一人はやはり腸を引き出され、もう一人も犯人に後少しの時間があれば、そうされたのは間違いなかった。

「後少しの時間があれば」というのは、そのとき逃亡する男の後ろ姿を警官が目撃しているからだ。後にその男、青インク入りの水鉄砲を手にした人物の正体が判明し、その男は逮捕されるが、彼は自身を連続殺人犯とは認めなかった。

そんなとき、“切り裂きジャック研究会”のクリーン・ミステリなる怪人物が現れ、青インク男は犯人ではないと言う。犯人と思しき男を捕らえたものの、彼を有罪に持ち込むには証拠が弱いことを認めている捜査主任は、真犯人を知るという怪人物の提案に乗ってみることにした。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



現実の19世紀のロンドンを震撼させ、今でも多くの研究家の興味を駆り立てる“切り裂きジャック”事件を題材にした作品。その迷宮入りの実在の過去の事件と、それをなぞるかのような現在の事件の解明に挑む。ポイントを「犯人が被害者の腹を裂き、臓物を引き出した理由」という一点にほぼ絞ったところが成功。

過去の事件とそれを模倣したような現在の事件を交互に描いているため、両者の内容の被り部分にややクドさは感じるが、全体的な分量は短めなので、読み疲れるほどではない。

別々の時代の事件を同時に扱い、歴史上の謎にも挑んでいる体裁だが、スケール感よりもまとまりの良さのほうが印象に残る。



[プレリュード] 西ベルリンの風景。
[1988年、ベルリン(1) 1] 娼婦が四人。ピンクのワンピースの女を押さえている。「見習い研修中の新入りに、仕事のやり方を教えてやって」 その場を通り掛かったレン、引き受ける。
[1988年、ベルリン(1) 2] モニカ、恋人のカールから宝石を貰う。
[1988年、ベルリン(1) 3] レン、切り裂かれたかつての情人・エルケを妄想。水鉄砲に青インクを吸い込ませる。娼婦たちを撃つつもり。
[1988年、ベルリン(1) 4] 9月25日未明、モニカ、クラウスととも街をに巡回。女の悲鳴。娼婦・メアリがうずくまっている。駆けて行く男をクラウスが追うが捕り逃す。メアリの世話をするために残ったモニカ、あまりの惨劇に呆然としている。メアリは死んでおり、腹を裂かれ、臓物が引き摺り出されている。
[1988年、ベルリン(1) 5] レン、エルケを妄想。
[1988年、ベルリン(1) 6] モニカ、帰宅。カールの指先に青インクの染み。
[1988年、ベルリン(1) 7] メアリ殺害後、アンとマーガレットも殺されていたことが判明。死体の状態は似通っている。三名とも顔に青インクを掛けられた痕跡。
[1988年、ベルリン(1) 8] 9月25日深夜、雨の中でモニカもカールもパトロールに動員されている。0時を過ぎ、モニカはカールとその相棒・ペーターに挨拶して帰宅の途に着く。悲鳴が上がり、カールとペーターは手分けして声の主を捜す。カール、壁に妙な落書きを見る。「ユダヤ人は、みだりに非難を受ける筋合いはない」 ペーター、刃物で切られ意識不明のモニカを発見。そのときさらに別の二つの小路で、それぞれ女の死体が発見される。犠牲者はどちらも娼婦。ジュリアとキャサリン。キャサリンについては犯人に時間がなかったためか臓物は引き出されていないが、それでも多数の刺し傷が残っており、充分すぎる惨殺死体。モニカは奇跡的に一命を取り留めたが、一生右脚を引き摺る可能性大の重傷。
[1988年、ベルリン(1) 9] 捜査会議。a)最初の晩の被害者たちの顔には青インクが掛かっているが、次の晩の被害者たちにはそれがない。b)前日の惨劇によって警官が多数配置され、厳重警戒中の晩にあえて犯人は犯行を重ねている。c)五名とも英国あるいはアイルランド系で顔見知り。一緒に行動することも多かった。d)マーガレットの大腸の一部は持ち去られている。
[1888年、ロンドン(1) 1] 娼婦のメアリー・アン・ニコルズが殺される。
[1888年、ロンドン(1) 2] アニー・チャップマンが殺される。たまたまそのそばに落ちていたレザーエプロンのために、無関係な人物が疑われたりもする。
[1888年、ロンドン(1) 3] エリザベス・ストライドが殺される。キャサリン・エドウズが殺される。「ユダヤ人は、みだりに非難を受ける筋合いはない」ろいう殴り書きが発見されたが、騒動を恐れた当時の警視総監の指示によってすぐに消されてしまう。
[1888年、ロンドン(1) 4] “切り裂きジャック”名義の手紙が送られてくるようになる。
[1888年、ロンドン(1) 5] メアリー・ジェーン・ケリーが殺される。
[1988年、ベルリン(2) 1] 殺害されたマーガレットの大腸の一部がベルリン署の交通管制センターに届く。
[1988年、ベルリン(2) 2] ベルリンの一風景。
[1988年、ベルリン(2) 3] レン、ベルリン切り裂き魔事件の容疑者として逮捕される。その手にある水鉄砲には青インクが詰まっている。
[1988年、ベルリン(2) 4] レンはメアリ殺害事件の際に逃亡した人物の風貌に当て嵌まる。青インク入りの水鉄砲を所持している。レンは連続殺人事件や壁の落書きへの関与を否定。メアリー殺害事件の当日、レンが多くの娼婦に青インクを掛けていたことについては大勢の目撃者あり。しかし掛けられた者の多くはそれ以上の被害は受けず、生きている。
[1988年、ベルリン(2) 5] モニカ、カールの指先に青インクが付いていたことを思い出す。
[1988年、ベルリン(2) 6] “ベルリン切り裂きジャック”を名乗る者からの手記が新聞に投稿される。手記にあったホテルの207号室の滞在者は“クリーン・ミステリ”と名乗る東洋系の英国人らしい。彼はレンは犯人ではないと主張する。そして真犯人を知っているという。
[1988年、ベルリン(2) 7] クリーンはまずクラウスとの面会を希望。クリーンはクラウスに殺害された五人の遺体の護衛を依頼する。しかしクラウスは家族が待っていることもあり、できれば遠慮したいという。クリーンはあっさりとそれを受け入れ、クリーンは帰宅する。クラウスとの面会の間、クリーンは右手でガラス玉を弄んでいたが、相手はまったく気に留めず。クリーン、駐車場からすぐの部屋に五つの棺桶を移動。クリーンとビンター主任、それを見張るために隠れる。
[1988年、ベルリン(2) 8] クリーン、かつてのロンドンに住んでいたマリア・コロナーの話をする。
[1888年、ロンドン(2) 1] マリア、キャサリン・エドウズに依頼されたドレスを届ける。マリア、婚約者から貰った宝石を見せる。娼婦たちはそれを強奪し、マリアを床に押さえる。通りがかりのウィリー・ハモンド、マリアを強姦。娼婦たちの誰かが宝石を呑み込む。
[1888年、ロンドン(2) 2] 帰宅したマリア、ナイフを手に街へ出る。
[1988年、ベルリン(3) 1] 棺を見張るクリーンとビンターの視界の中に誰かが現れる。その人物は棺を開けた。
[1988年、ベルリン(3) 2] クリーンは話し終え、去って行く。迎えの男がいる。彼らは日本語らしき言葉を交している。
[1988年、ベルリン(3) 3] 詩。
[エピローグ] ビンター主任はロンドンの“切り裂きジャック研究会”を問い合わせたが、そこにクリーン・ミステリなる人物は存在しなかった。