らふりぃの読書な雑記-97
“蒼鴉城”に暮らす一族が次々と殺される。死体はどれも首を切断されている。見立て殺人。二名の探偵。[??]

[今鏡家]
多野都(たのと):今鏡グループの創立者, 故人
多侍摩(たじま):多野都の息子, 故人
絹代(きぬよ):多侍摩の妻, 故人
椎月(しいつき)
伊都(いと):多侍摩の長男, 殺人の被害者
有馬(ありま):伊都の息子, 競走馬好き, 殺人の被害者
万里絵(まりえ):有馬の娘, 双児の一人, 外見と言動は純真無垢な少女
加奈絵(かなえ):同
御諸(みもろ):多侍摩の次男, 故人
夕顔(ゆうがお):御諸の養女, 眼鏡の知的・和風美人
静馬(しずま):御諸の息子, 木更津たちを敵視するような態度を示す
畝傍(うねび):多侍摩の三男, 横柄で癇が強そうな老人
菅彦(すがひこ):畝傍の息子, 父とはまったく正反対に温和で頼りない様子
霧絵(きりえ):菅彦の娘, 庶子, 体の弱そうな少女, 数ヶ月前に母を亡くし蒼鴉城に引き取られた

久保(くぼ)ひさ:家政婦
山部民生(やまべたみお):作男
木更津悠也(きさらづゆうや):探偵
香月実朝(こうづきさねとも):私
辻村(つじむら):警部
堀井(ほりい):刑事
中森(なかもり):刑事
由比籐(ゆいとう):警官
メルカトル鮎(あゆ):銘探偵

マリア・クッチャラ:霧絵の母, 故人
龍樹茂久(たつきしげひさ):椎月の駆け落ち相手
ミハイル・イヴァノヴィチ・メドヴェージェフ:今鏡家に滞在していた亡命ロシア人, 作曲家, 故人
下中西(しもなかにし):多侍摩の弁護士
中道(なかみち):教授, 神経医学の第一人者
清原(きよはら):木更津探偵社社員



巨大企業・今鏡グループはその主を失ったばかり。探偵・木更津悠也はその一族の一員・今鏡伊都から相談に来て欲しいとの手紙を受け取った。しかしその直後、今鏡家の邸宅、通称“蒼鴉城”には近づくなという警告文が何者かから送られてきたのだった。木更津は香月実朝を伴って蒼鴉城へと向かった。

ところが彼らが蒼鴉城に到着すると、そこには馴染みの辻村警部の姿があった。木更津に相談を依頼した当の相手、伊都が既に殺されていたのである。しかも死体には頭部がなかった。

死体の頭部はあっさり見つかった。だがその頭部は伊都のものではなく、その息子・有馬のものであった。そこで伊都がしばしば籠っていたという通称“地獄の門”という部屋に入ると、そこにはギロチン台。そして伊都の生首と有馬の首から下が置かれていた。二人の首は死んでから切り落とされたものではなく、生きているうちに刎ねられたことが後に判明した。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



かの有名な「黒死館殺人事件」をモチーフにしてるらしいが、そっちは僕はまだ未読。本棚のどっかに埋もれてるはずなんだけど…。

副題にあるとおり、本作はこの作者のデビュー作にしてシリーズ探偵・メルカトル鮎の最後の事件。そんなところからも窺えるように、微妙な意味合いを含んでしまうが、“凄い”作品であることは間違いないw まるで哲学を語るような大仰な台詞など、“大真面目に”本格ミステリのパロディを描いてるかと思えば、登場人物たちの命名や、時折唐突に挿入される特撮TVドラマの台詞などの明らかに小ネタ的なふざけた場面も散見される。

二転三転の解決編はもはやギャグと紙一重、あるいはそっち側に思いっきりはみ出しているかも知れないw 第9章での推理は驚天動地。そこで示される“真相”は不気味なものであるにも関わらず、「ごめんなさい。こんなとき、どんな顔をすればいいのかわからないの」としか言いようがないトンデモ推理w

見立ての推理には呆れつつも拍手喝采w そしてそれを覆す超展開には呆然。フェアかアンフェアかと問われれば後者に傾くが、推理自体には整合性が取れており、前章での“見立て”の穴を突く部分はファンならニヤリとするだろう。

喜んで騙される善良さと、心に余裕を持ち合わせ、かつ生真面目すぎない読者向けの本格推理物。



[第1章 発端] 蒼鴉城。頭部と足首の先がない死体。足の部分には甲冑の靴を履いている。右手薬指に喰い込んだ指輪から伊都と推定。帽子掛けに有馬の頭部。
[第2章 プロローグ] 巨大企業・今鏡グループの創立者・今鏡多野都と、彼亡き後にそれを継いだ多侍摩はいずれも傑人だった。多侍摩が死んで1ヶ月ほど後、事件の幕が開く。
[第3章 死と乙女] 立てられた円筒のような部屋、“地獄の門”。伊都の生首。その脇に有馬の首なし死体。その周辺に夏蜜柑の種が数個散らばっている。死体は施錠されていたこの部屋の鍵を左手に握っている。合鍵は今回使用されるまで使われた形跡がなかった。伊都の部屋のデスクの抽斗から彼の両足を発見。その上には有名な探偵・河原町祇園宛ての封筒などの書類が載っていた。伊都は木更津だけではなく、別の探偵にも依頼していたことになる。口は糊付けされ、開封された形跡なし。有馬の部屋。競走馬好きらしく、壁を埋め尽くすように馬の写真が飾られている。有馬は自身も馬主だった。レコード・プレーヤーにLPレコードが載せられたままになっている。表はドヴォルザークの“アメリカ”、裏はシューベルトの“死と乙女”の洋盤。伊都、有馬、ともに鋭利な刃物で首を刎ねられたことが死因。伊都の両足切断はその死後に行われたもの。地獄の門の床には伊都と有馬の血痕。伊都の部屋の絨毯からは有馬の大量の血液。有馬の死体の左腕に痙攣の跡。
[第4章 邂逅] 香月と今鏡家の娘たちとの邂逅。
[第5章 レクィエム] 2階の畝傍の自室のチェストの上に彼自身の生首。その顔に白い顔料が塗られている。1階の貯蔵庫に首なし死体。撲殺。首の切断は死後。
[第6章 ルクナノワ書] 静馬の自室に付した浴室に彼の首なし死体。全裸。頭部はその脇に転がっている。後頭部への強打による撲殺。第一発見者は夕顔。彼女の話によると、死んだ畝傍らしき人物が静馬の部屋に入るのを目撃し、気になりそこを早朝に訪れ、死体を発見した。教会の机の中にラテン語と英語で記された“ルクナノワ書”。伊都は生前にはこれに似た物と木の枝を手にし、黒装束で地獄の門にしばしば入っていたという。木更津、多侍摩生存犯人説を唱え、納棺所の棺を開く。棺には多侍摩の死体。首が切断されている。木更津、山に籠る。
[第7章 メルカトル登場] 多侍摩の死亡時期は公式発表どおり。しかし病死ではなく毒殺と判明。首の切断は死後三日後。頭部は長らく冷蔵庫に保存されていた様子。湖に浮かぶボートに万里絵・加奈絵の死体。両者ともに首が切断されている。服に手紙が入っている。湖を示す簡略図と「2じ」「ひみつ」という文字が記されている。その翌朝、ひさの部屋に彼女の首なし死体。頭部は“死と乙女”のLPレコードに載っている。右手薬指に喰い込んだ指輪にアルファベットが刻印されている。「SHIITSUKI」
[第8章 イマカガミ] メルカトルが自室で首なし死体となっている。頭部はテーブルの上。
[第9章 カタストロフィ] 教会のロシア十字架に菅彦の首なし死体が磔にされている。
[第10章 エピローグ] ワトソンあるいはヘイスティングスが語る真相。