金田一耕助シリーズ。団地に撒かれる怪文書。いなくなった男。タールの中に上半身を突っ込んだ死体。死体の主と思われる女は生前からその正体を隠していた。[??]

金田一耕助(きんだいちこうすけ):私立探偵
S・Y先生:詩人, 金田一の友人
宇津木慎策:毎朝新聞の記者。
等々力:警視庁警部。
新井:警視庁刑事。
山川:所轄S署警部補, 捜査主任
志村:同刑事
三浦:同刑事
江間:刑事。
保科:検死医

[日の出団地の住人]
宮本寅吉:15号館(1518号室)の住人, 映画館”の支配人
宮本加奈子:寅吉の妻
宮本タマキ:寅吉の娘, タンポポ洋裁店の針子
姫野三太:15号館の住人, 俳優のタマゴ
岡部泰蔵:17号館(1723号室)の住人, 高校教師
戸田京美:泰蔵の義理の姪, タンポポ洋裁店の針子
榎本民子:17号館の住人
榎本謙作:民子の息子, 俳優のタマゴ
根津伍市:18号館(1801号室)の住人, 5号区(17~20号館)の管理人, 謄写版刷り業, カラスの“ジョー”の飼い主
根津由紀子:伍市の娘
須藤順子:18号館(1821号室)の住人, バー“スリーX”の元ホステス・ハルミ, 旧姓・緒方, タンポポ洋裁店の針子, 金田一の知人
須藤達雄:順子の夫, 保険会社の外交員
水島浩三:18号館の住人, 画家

伊丹大輔:商店街の家主
片桐恒子:タンポポ洋裁店のマダム
河村松江:タンポポ洋裁店の通いのお手伝い
岡部梅子:泰蔵の亡妻
白井寿美子:泰蔵の婚約者, 中学教師
白井直也:寿美子の兄
立花隆治:石油会社社長, 泰蔵の後輩
辻村あき子:伍市の先妻
日疋恭助:Q製薬会社の重役, 順子のパトロン
一柳忠彦:政治家, 弁護士
一柳洋子:忠彦の妻, 故人
佐山豊:日の出団地の建設の現場監督
藤野:同屋上塗装の責任者



日の出団地では怪文書事件が発生していた。その中の一通は須藤順子が昔の男と通じているという内容で、それを読んだ彼女の夫・達雄は家を出てしまった。新聞雑誌の切り抜きで作られ、「Ladies and Gentlemen」から始まる怪文書の内容は、残念ながら事実であった。

ともかく夫に帰って来て欲しいので、順子はたまたま会った古い知人の金田一耕助に相談した。ちょうどそのとき、団地で死体が発見された。

死体はその上半身をタールの中に沈めており、それが誰なのか判断することは困難だったが、服装などからタンポポ洋裁店のマダム・片桐恒子であろうと推定された。

恒子の部屋を調べた金田一はある雑誌に目を留めた。それを手に取りページを開くと、そこにはまさにあの「Ladies and Gentlemen」の文字があった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



内容的にはいつものような陰惨な事件だと思うが、その舞台がいつものような田舎屋敷の血塗られた一族を扱ったものではないためか、やや軽く感じられる。プロローグ/インターバル/エピローグに登場する、ユーモラスなS・Y先生の存在もまた軽い印象を強めている。分量的にはかなり重いが。

でもその分量の割には満足感はないなぁ。複数の思惑が絡み合うパターンだが、いくらなんでも特異な状況が重なりすぎで、ただただゴチャゴチャしてるだけではないだろうか。金田一耕助にはやっぱり田舎屋敷が似合うと再確認できる作品かねw

金田一や捜査陣以外の人物が勝手にうろちょろ動き回る展開が鬱陶しい。それらは元々連載という形式で書かれたという事情があるのかも知れないが、読んでいて気になるところ。映像作品ならそれも良いのかなぁ。

最後の展開の唐突さや、解決編の説明不足も感じるなぁ。怪文書を作るのに、「Ladies and Gentlemen」を切り抜いて使った理由も省略していい部分じゃないと思う。



[プロローグ] 愛犬とともに散歩中のS・Y先生、双眼鏡で日の出団地を覗く男を目撃。
[第1章 Ladies and Gentlemen] 順子、団地内での怪文書事件とそれに伴った夫・達雄の家出について自宅で金田一に相談。怪文書は新聞雑誌の切り抜きで作られており、「Ladies and Gentlemen」で始まっている。その最中に外で死体が発見される。
[第2章 タールの底] 死体は団地の共同ダストシュートの下のゴミ箱に頭から突っ込んでいる。ダストシュートには屋上で工事のために使用されている釜の底に空けられた穴から漏れたタールが流れ込み、死体の上半身はタールに埋もれてしまっており、死体の主の特定が困難。服装などから恒子と推定される。釜の穴は自然に空いたものではない。
[第3章 孤独な管理人] 順子、怪文書について根津に相談。
[第4章 タンポポ洋裁店] 洋裁店内に血痕。英語の雑誌がある。その中の「Ladies and Gentlemen」という文字が怪文書にあったものと酷似。破り捨てられた紙片。残った文字に「白と黒と」と読み取れる。
[第5章 マダムX] 恒子の素性は怪しい。知人もおらず、写真を撮られるのも嫌がり、一枚もない。
[第6章 処女膜を調べろ] 「Ladies and Gentlemen」から始まる、別の怪文書。岡部と京美の男女の関係をほのめかす内容。
[第7章 AとB] 死体の血液型はA型。洋裁店内の血痕はB型。
[インターバル] 達雄の血液型はB型。
[第8章 渦] 岡部、寿美子にプロポーズ。
[第9章 どん栗ころころ] 「東西、東西」から始まる怪文書。「どん栗コロコロ」から始まる怪文書。
[第10章 逃亡] 水島、逃亡。
[第11章 池の底から] 池から「Ladies and Gentlemen」が切り抜かれた雑誌と達雄の死体を発見。
[第12章 暴露] 根津は麻薬中毒。
[第13章 死体運搬人] 根津、洋裁店にあった達雄と恒子の死体を運んだことを認める。恒子には性交の痕跡らしき様子があったが、達雄にはなかった。
[第14章 その後の経過] 伊丹は恒子に強引に肉体関係を結んだが、どうしても先に果ててしまっていた。
[第15章 カラス] タマキ、首を絞められた上、額を割られて殺害される。
[第16章 白と黒] 恒子は同性愛傾向があった。
[第17章 最後の一撃] 由紀子、殺人犯に襲撃される。
[エピローグ] 金田一、S・Y先生から、双眼鏡で団地を覗いていた人物について知る。