らふりぃの読書な雑記-92
金田一耕助シリーズ。童謡殺人。[??]

[仁礼家(“秤屋”)]
仁礼仁平:仁礼家先代当主, 故人
仁礼嘉平:仁礼家当主
仁礼富貴子:幼い頃に死亡
次子:嘉平の妹, 神戸に嫁いでいる
咲枝:嘉平の妹, 鳥取県に嫁いでいる
仁礼直平:嘉平の息子
仁礼路子:直平の妻
仁礼勝平:嘉平の息子, 鬼首村青年団団長
仁礼文子:嘉平の娘

[由良家“枡屋”]
由良卯太郎:由良家先代主人, 故人
由良五百子:卯太郎の母
由良敦子:卯太郎の妻
由良敏郎:卯太郎の長男, 由良家当主
由良敏郎:卯太郎の次男, 戦死
由良房子:卯太郎の長女
由良栄子:敏郎の妻
由良泰子:卯太郎の娘, 歌名雄の恋人

[別所家“錠前屋”]
別所辰蔵:仁礼家の葡萄酒酒造工場工場長
別所蓼太:辰蔵・春江の父, 千恵子の戸籍上の父
別所松子:辰蔵・春江の母, 千恵子の戸籍上の母
別所五郎:辰蔵の息子, 鬼首村青年団団員
別所春江:千恵子の生みの母
別所千恵子:女優・大空ゆかり, 春江の娘,

[亀の湯]
青池源治郎:元人気弁士・青柳史朗, 過去の殺人事件の被害者
青池リカ:源治郎の妻, 亀の湯女将
青池歌名雄:源治郎の息子, 鬼首村青年団副団長, モテ男
青池里子:源治郎の娘, 赤痣を気にしてあまり人前に出ない
お幹:“笊屋”, 亀の湯女中

恩田幾三:別所千恵子の実の父, 青池源治郎殺害事件の容疑者として失踪中
多々羅放庵:本名・多々羅一義, 庄屋の末裔
栗林りん:放庵の5番目の妻
日下部是哉:大空ゆかりのマネージャー
本多(大先生):医師
本多(若先生):大先生の息子, 医師
本多一子:若先生の妻
おいと:旅籠“井筒”の女将
お照:“井筒”の嫁
町田幸太郎:西柳原の料理屋の主
達子:幸太郎の娘, りんの手紙を代筆
マサ子:由良家の近所の娘
お兼:由良家の近所のおかみさん

金田一耕助:私立探偵

磯川:岡山県警警部
立花:岡山県警警部補, 捜査主任
加藤:刑事, 立花の部下
乾:刑事, 立花の部下
山本:刑事, 立花の部下



うちの裏のせんざいに
すずめが三匹とまって
一羽のすずめのいうことにゃ
おらが在所の陣屋の殿様
狩り好き酒好き女好き
わけて好きなが女でござる
女たれがよい桝屋の娘
桝屋器量よしじゃがうわばみ娘
枡ではかって漏斗で飲んで
日がないちにち酒浸り
それでも足らぬとて返された
返された


かつて鬼首村で大きな事件があった。恩田幾三という流れ者によって青池源治郎が殺害されたのだ。事件が発覚したとき、源治郎の死体は囲炉裏に突っ込まれ、その顔は原型を留めていなかった。恩田は事件以来姿を消し、警察が全国を捜索したにも関わらず、20年の歳月を経ても発見されなかったのである。

恩田は村に滞在中に別所春江と男女の関係を持っていた。恩田が消えた後、春江は彼との間にできた子・千恵子を生んだのだが、当然村人の目は冷たい。春江は千恵子を両親に預けて村を去り、後に彼女を引き取った。

それから数年後、千恵子は女優・歌手の大空ゆかりとして大成功し、故郷に錦を飾る。村の若者たちにとっては過去の事件など遥か昔のことであるし、それよりも年上の者たちにとっても鼻が高いのか、かつて彼女たちに母子に冷たく当たったことなどすっかり忘れたかのごとく歓迎した。

かの鬼首村の連続殺人事件が起きたのはそんなときであった。

まず始めに、今やすっかり落ちぶれていた庄屋の末裔・多々羅放庵が姿を消した。彼の家には毒の混じった吐血の跡が残っていたが、生きている彼も死んだ彼も発見されず、死んだとも単にどこかへ姿を消しただけとも知れなかった。

そして次にかつて村で最も勢力を誇っていた由良家の泰子が殺された。なぜか死体の口に漏斗が差し込まれ、滝の水を受けた枡から溢れる水が流れ込んでいた。

さらに事件は続く。仁礼家の文子が殺され、なぜかその帯に竿秤が差し込まれていた。

それらの奇怪な状況は、まるで村に伝わる手毬唄をなぞるようであった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



いつものように休養しようと田舎の村を訪れた金田一耕助が、やはりいつものように連続殺人事件に巻き込まれるw

本作は、作者が童謡殺人をテーマにした作品として書いた「獄門島」に不満で、もっといかにもな童謡殺人を描こうとして書いたもの。なかなか都合の良い童謡が見つからず、結局自分で新たに作った童謡を使用している。

悪い作品ではないが、童謡殺人物としてはあまり高く評価できるものではない。自作の手毬唄だから筋書きの都合に合わせて書かれている御都合主義はさておき、作中でその手毬唄が登場人物たちに明かされるのが遅すぎる。読者の目には冒頭からそれが晒されているのに、登場人物たちはそれを知らずまったく呑気に映り、サスペンスを弱めている。

また、犯人がこの手毬唄をモチーフとして殺人を行なった理由が弱い。庄屋(多々羅放庵)を殺してその死体を隠し、あたかも庄屋を連続殺人犯のように見せかけようとしたとなっているが、庄屋の死の痕跡を残したままにしていたり、あるいは栗林りんに扮してその姿を目撃させたりと、その行動に整合性が感じられない。そもそも犯人は手毬唄をむしろ知られないようにする行動も取っている。手毬唄をモチーフにしていることを知られなければ、庄屋を犯人に見せかける行動になっていないし、知られてしまえば次の犯行が難しくなる。あるいはすべての犯行を終えた後に手毬唄を知られるようにしたかったのだろうか。

恩田幾三を中心とした人間関係は複雑。ストーリーの大半はほぼこの人間関係を解き明かすためのものと言ってもいい。村人がさっさと正直に人間関係を明かしていれば、金田一耕助と言えどもかなり早い段階で真相に到達したのではないかと思うほど。

結局犯人は死体に見立ての装飾してるだけで、ほかにはロクな工作してないんだよなぁ。



(1) 鬼首村での過去の殺人事件。恩田幾三という流れ者が青池源治郎を殺害し、逃亡したとされている。死体の顔は焼かれていた。以来、恩田は行方不明。
(2) 源治郎殺害事件から数年後。殺人犯・恩田と別所春江との不義の子として生まれ、村を出た別所千恵子が女優・歌手の大空ゆかりとして成功し、村を訪れる。
(3) ちょうどその頃、多々羅放庵のもとに元妻・りんから復縁を求める手紙が届き、彼はそれを了承する。放庵のもとに向かうりんらしき姿が複数の村人に目撃される。
(4) 放庵、姿を消す。家の中には吐血の跡。俗に“庄屋殺し”と呼ばれる毒草の成分が検出される。水瓶に生きた山椒魚が入っている。りんはとっくの昔に死亡していることが判明。放庵がどこから生活費を得ていたのかという点が注目される。
(5) 由良泰子の絞殺体が発見される。口に漏斗が差し込まれ、滝の水を受けた枡から溢れる水が流れ込んでいた。
(6) 生まれつき身体に大きな赤痣があり、人目に触れることを極端に避けていた青池里子がなぜかその姿を人前に晒すようになる。
(7) 仁礼文子の絞殺体が発見される。帯に竿秤が差し込まれている。
(8) 由良五百子、村に伝わる手毬唄を披露する。この連続殺人事件を暗示する内容。
(9) 里子の撲殺体が発見される。ほとんど全裸で、服は周囲にも見当たらない。兄・青池歌名雄によって自宅の近所まで送られたことが、生前の彼女の最後の足取りとして確認されている。そのとき彼女は喪服だった。