犯罪研究家・アンブローズ・チタウィック登場作品。主人公であるチタウィック自身が犯行の目撃者。英国式ユーモア。[??]
アンブローズ・チタウィック:犯罪研究家
ミス・チタウィック:アンブローズの伯母
ミス・シンクレア:殺された老婦人
リン・シンクレア:ミス・シンクレアの甥
ジュディス:リンの妻
アガサ・ミルボーン:ミルボーン卿夫人
ジョージ・ミルボーン卿:アガサの夫
マウス:アガサの弟
メアリ・グール:ミス・シンクレアのお相手役
ウィルキンスン:執事
ハロルド・J・ベンスン:リンの従弟
モーズビー:ロンドン警視庁主席警部
パーカー:署付警部
多くの者にとって“ピカデリー・パレス・ホテル”のホテルは付属物に過ぎず、その名称が意味するのはラウンジである。そこは様々な階層・職業の者が集う雑多な空間であり、常に人で溢れていた。
ごった返す店内で席を探す労を厭わずにチタウィック氏がそんな所を訪れなければならぬのは、彼の伯母から時折逃れるため、そして彼がクラブに入ることに彼女が頑強に反対するせいである。
さて、なんとか席に着きコーヒーを手に入れたチタウィックは、いつものように“探偵ごっこ”を始めた。見知らぬ者を観察し、その人物のプロフィールを推理するのである。ところが今回は当の相手から激しく睨み返されてしまい、すごすごと縮こまるしかなかった。しかしそうなってはなおさら気になるというもので、しばらく時間を置いてまたその赤毛の男のほうを盗み見ると、男はもうチタウィックを睨んではいない。これはしめたものと、今度は慎重にチラチラと見ていると、その男は連れの老婦人の隙を突き、彼女のカップの上に手をかざすという不自然な動きをした。次の瞬間、男はチタウィックのほうを振り向き、前よりももっと激しく睨みつけた。チタウィックは狼狽したが、幸いなことに彼宛ての電話に呼び出され、そそくさと席を立った。
電話室に来てみると、チタウィックは彼への電話などなかったことを知る。どうやら別人と間違われたらしい。席に戻るとあの男はもういなくなっており、老婦人が一人居眠りをしているようだ。紳士であるチタウィックは、彼女に恥をかかせ続けてはならぬと立ち上がる。「ハンドバッグを床に落としましたよ」と、なるべくさりげなく声を掛けようと彼女に近づく。肩を叩くが反応はない。彼女の体勢が頭から崩れた。彼女は死んでいた。
状況は単純なように思えた。赤毛の男――リン・シンクレアという人物らしい――が彼の伯母のカップに毒を盛り、殺害したということだ。ところがチタウィックは計略に引っ掛かり、リンの妻やその関係者たちに引き合わせられ、説得されると、ついに目撃したことは事実だが赤毛の男はリンとは別人かも知れぬという程度には譲歩し、事件を調べ始めたのである。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
分量の割にはミステリとしての内容は薄い。複数の意図が絡んだ犯行だが、その整理や詰めが甘く、ゴチャゴチャした印象。ユーモアを交えた文体にクドさを感じる部分もあり、やや冗長さはあるものの、それを差し引いてもストーリーテリングは良い。
御都合主義的な点としては、犯人が所持していた毒物がたまたま臭気で気づかれやすいものだったから、手順を複雑化させて被害者に毒を盛ったということ。つまりもし臭気の薄い毒物を持っていればもっと単純な犯行だったわけで…。あと、たまたま複数のワルイヒトが…ってのも。
いくら相手の目が悪いとはいえ、被害者のよく知る甥に成り済まして会話するというのはどうなんだろう? 振り込め詐欺よりも難しいぞw
“インヴィジブル・マン”。
(1) 午後2時半、“ピカデリー・パレス・ホテル”のラウンジで、チタウィックが趣味の人間観察をしている。老婦人、次いでやって来た赤毛の男を眺めていると、男と目が合ってしまった。慌てて目を逸らすが、相手はチタウィックを睨めつけるように見ている。チタウィック、もうそっちは見ないことにするが、しばらくするとついそっちをまたチラチラ見始めてしまう。男はもうチタウィックのほうを見ていない。男、老婦人の視線を逸らすと、彼女のカップの上に手をかざす不自然な行動を取る。チタウィック、別人と間違われて電話に呼び出されて席を外す。戻ったときには既に男の姿はなく、老婦人は死んでいる。
(2) 老婦人はミス・シンクレア。服毒死。カップのコーヒーからアーモンド臭があり、青酸化合物検出。彼女の手には毒薬を入れた瓶があるが、これは彼女が生存中に握ったものではない。ミス・シンクレアのバッグには午後3時半の待ち合わせを記した手紙。
(3) 午後3時半、ラウンジに一人の男。チタウィック、それが先ほど目撃した人物と認める。その男はミス・シンクレアの甥であり、唯一の遺産相続人であるリン・シンクレア。3時半にミス・シンクレアと待ち合わせしていたという。薬瓶に彼の指紋があり、また本人は認めないものの2時半にその姿をチタウィックに目撃されているということで、殺人の容疑者として拘留される。彼らしき人物が毒物を購入しようと何軒かの薬屋を訪れたことも確認される。
(4) チタウィック、リンの関係者たちからの、目撃証言についての譲歩の求めには応じなかったが、彼の妻であるジュディスから懇願されると、目撃証言自体を翻すことはなくても、もしリンが無実ならそれを明らかにすることには尽力すること約束する。あの男はリンではなく、よく似た別人であるという説を心に留め、ジュディスとその友人・マウスとともに事件の調査を開始する。
(5) チタウィックら、ミス・シンクレアのメイド・グールから話を訊く。ミス・シンクレアが遺産相続人をリンから米国で暮らす彼の従弟・ベンスンへと変える可能性があったことを知る。
(6) グールは伊達眼鏡で変装している。
(7) チタウィック、男が手をかざしてからミス・シンクレアが死ぬまでの時間に問題があることに気づく。その後に彼女は別の手段で服毒したのではないかと推理。ラウンジのウェイトレスが、テーブルの上にコーヒーカップだけでなくリキュール・グラスも見掛けていたことを思い出す。そこに毒が入っていたとするならば、そのグラスがどのように持ち去られたのかが謎。周囲にいた者たちは、誰もそのテーブルの近づかなったと証言している。
(8) ベンスンが米国からやって来る。リンの窮地を救うことに協力は惜しまないという。
(9) チタウィック、グールをラウンジで目撃したことを思い出す。グールこそがチタウィックを呼び出した偽ウェイトレスという推理を披露する。グールが米国で宝石窃盗に関わっているとして警察にマークされている人物であることが判明。
(10) チタウィック、ベンスンら関係者の写真を撮影する。この人物を見たかと、目撃者たちに確かめるため。
(11) グール名義の手紙が届く。リンが主犯で自分もそれに協力したという内容。チタウィック、不審を抱く。急ぎ現像を依頼した写真を受け取りに行くが、既に誰かが代理と偽って持ち去っていた。しかし焼き増し分が残っていた。
(12) チタウィック、監禁されていたグールを救出。
アンブローズ・チタウィック:犯罪研究家
ミス・チタウィック:アンブローズの伯母
ミス・シンクレア:殺された老婦人
リン・シンクレア:ミス・シンクレアの甥
ジュディス:リンの妻
アガサ・ミルボーン:ミルボーン卿夫人
ジョージ・ミルボーン卿:アガサの夫
マウス:アガサの弟
メアリ・グール:ミス・シンクレアのお相手役
ウィルキンスン:執事
ハロルド・J・ベンスン:リンの従弟
モーズビー:ロンドン警視庁主席警部
パーカー:署付警部
多くの者にとって“ピカデリー・パレス・ホテル”のホテルは付属物に過ぎず、その名称が意味するのはラウンジである。そこは様々な階層・職業の者が集う雑多な空間であり、常に人で溢れていた。
ごった返す店内で席を探す労を厭わずにチタウィック氏がそんな所を訪れなければならぬのは、彼の伯母から時折逃れるため、そして彼がクラブに入ることに彼女が頑強に反対するせいである。
さて、なんとか席に着きコーヒーを手に入れたチタウィックは、いつものように“探偵ごっこ”を始めた。見知らぬ者を観察し、その人物のプロフィールを推理するのである。ところが今回は当の相手から激しく睨み返されてしまい、すごすごと縮こまるしかなかった。しかしそうなってはなおさら気になるというもので、しばらく時間を置いてまたその赤毛の男のほうを盗み見ると、男はもうチタウィックを睨んではいない。これはしめたものと、今度は慎重にチラチラと見ていると、その男は連れの老婦人の隙を突き、彼女のカップの上に手をかざすという不自然な動きをした。次の瞬間、男はチタウィックのほうを振り向き、前よりももっと激しく睨みつけた。チタウィックは狼狽したが、幸いなことに彼宛ての電話に呼び出され、そそくさと席を立った。
電話室に来てみると、チタウィックは彼への電話などなかったことを知る。どうやら別人と間違われたらしい。席に戻るとあの男はもういなくなっており、老婦人が一人居眠りをしているようだ。紳士であるチタウィックは、彼女に恥をかかせ続けてはならぬと立ち上がる。「ハンドバッグを床に落としましたよ」と、なるべくさりげなく声を掛けようと彼女に近づく。肩を叩くが反応はない。彼女の体勢が頭から崩れた。彼女は死んでいた。
状況は単純なように思えた。赤毛の男――リン・シンクレアという人物らしい――が彼の伯母のカップに毒を盛り、殺害したということだ。ところがチタウィックは計略に引っ掛かり、リンの妻やその関係者たちに引き合わせられ、説得されると、ついに目撃したことは事実だが赤毛の男はリンとは別人かも知れぬという程度には譲歩し、事件を調べ始めたのである。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
分量の割にはミステリとしての内容は薄い。複数の意図が絡んだ犯行だが、その整理や詰めが甘く、ゴチャゴチャした印象。ユーモアを交えた文体にクドさを感じる部分もあり、やや冗長さはあるものの、それを差し引いてもストーリーテリングは良い。
御都合主義的な点としては、犯人が所持していた毒物がたまたま臭気で気づかれやすいものだったから、手順を複雑化させて被害者に毒を盛ったということ。つまりもし臭気の薄い毒物を持っていればもっと単純な犯行だったわけで…。あと、たまたま複数のワルイヒトが…ってのも。
いくら相手の目が悪いとはいえ、被害者のよく知る甥に成り済まして会話するというのはどうなんだろう? 振り込め詐欺よりも難しいぞw
“インヴィジブル・マン”。
(1) 午後2時半、“ピカデリー・パレス・ホテル”のラウンジで、チタウィックが趣味の人間観察をしている。老婦人、次いでやって来た赤毛の男を眺めていると、男と目が合ってしまった。慌てて目を逸らすが、相手はチタウィックを睨めつけるように見ている。チタウィック、もうそっちは見ないことにするが、しばらくするとついそっちをまたチラチラ見始めてしまう。男はもうチタウィックのほうを見ていない。男、老婦人の視線を逸らすと、彼女のカップの上に手をかざす不自然な行動を取る。チタウィック、別人と間違われて電話に呼び出されて席を外す。戻ったときには既に男の姿はなく、老婦人は死んでいる。
(2) 老婦人はミス・シンクレア。服毒死。カップのコーヒーからアーモンド臭があり、青酸化合物検出。彼女の手には毒薬を入れた瓶があるが、これは彼女が生存中に握ったものではない。ミス・シンクレアのバッグには午後3時半の待ち合わせを記した手紙。
(3) 午後3時半、ラウンジに一人の男。チタウィック、それが先ほど目撃した人物と認める。その男はミス・シンクレアの甥であり、唯一の遺産相続人であるリン・シンクレア。3時半にミス・シンクレアと待ち合わせしていたという。薬瓶に彼の指紋があり、また本人は認めないものの2時半にその姿をチタウィックに目撃されているということで、殺人の容疑者として拘留される。彼らしき人物が毒物を購入しようと何軒かの薬屋を訪れたことも確認される。
(4) チタウィック、リンの関係者たちからの、目撃証言についての譲歩の求めには応じなかったが、彼の妻であるジュディスから懇願されると、目撃証言自体を翻すことはなくても、もしリンが無実ならそれを明らかにすることには尽力すること約束する。あの男はリンではなく、よく似た別人であるという説を心に留め、ジュディスとその友人・マウスとともに事件の調査を開始する。
(5) チタウィックら、ミス・シンクレアのメイド・グールから話を訊く。ミス・シンクレアが遺産相続人をリンから米国で暮らす彼の従弟・ベンスンへと変える可能性があったことを知る。
(6) グールは伊達眼鏡で変装している。
(7) チタウィック、男が手をかざしてからミス・シンクレアが死ぬまでの時間に問題があることに気づく。その後に彼女は別の手段で服毒したのではないかと推理。ラウンジのウェイトレスが、テーブルの上にコーヒーカップだけでなくリキュール・グラスも見掛けていたことを思い出す。そこに毒が入っていたとするならば、そのグラスがどのように持ち去られたのかが謎。周囲にいた者たちは、誰もそのテーブルの近づかなったと証言している。
(8) ベンスンが米国からやって来る。リンの窮地を救うことに協力は惜しまないという。
(9) チタウィック、グールをラウンジで目撃したことを思い出す。グールこそがチタウィックを呼び出した偽ウェイトレスという推理を披露する。グールが米国で宝石窃盗に関わっているとして警察にマークされている人物であることが判明。
(10) チタウィック、ベンスンら関係者の写真を撮影する。この人物を見たかと、目撃者たちに確かめるため。
(11) グール名義の手紙が届く。リンが主犯で自分もそれに協力したという内容。チタウィック、不審を抱く。急ぎ現像を依頼した写真を受け取りに行くが、既に誰かが代理と偽って持ち去っていた。しかし焼き増し分が残っていた。
(12) チタウィック、監禁されていたグールを救出。