失踪し、7年ぶりに戻ってきたという西田操。自伝的小説「覆面作家」の執筆を開始すると、少々奇妙な出来事が起こり始めた。そして遂には、執筆中の小説の内容が現実に反映され始める。(「・ω・)「にゃおー (U^ω^)わんわんお! [??]
西田操:推理作家
西田比佐子:操の妻
小谷野修治:編集者
宮沢:派出所巡査
浦辺ミネ:占い師
笹間博之
笹間利江
益子圭司
新人賞に応募された「完全犯罪」は、見事栄冠を勝ち取った。しかしその作者・西田操は表彰式にも代理を立てるなど、人前に姿を表すことを拒み、覆面作家として知られるようになった。実は当時の西田は交通事故により、顔や両脚に大きな怪我を負ってしまい、普段は車椅子で覆面姿で過ごしていた。そのような事情のため、彼は人前にその姿を晒すことを極力嫌がり、その意を汲んだ編集者が、性別すら謎の、まさに“覆面作家”としてデビューすることを提案。西田はそれを了としたのである。
西田は元々世界史の教師だったのだが、いつまでも休職していては、元の職場からも良い顔されないだろう。思い悩んだ末、新人賞の受賞と賞金の獲得を機として、専業作家となることにした。ところが、デビュー作が大ヒットしたプレッシャーからか、二作目はなかなか筆が進まない。そのうちに西田は、妻にも行き先を告げずに失踪した。7年経ったら戻ってくるというメッセージを残して。
西田操失踪から7年。「完全犯罪」を生み出した別荘を、一人の男が訪れた。紛れもなく、西田操その人であった。顔にも脚にも大きな傷跡などなく、かつての“覆面作家”を思わせるところはなかった。そこに居るのは、新作の着想を得て、執筆欲に燃え、新たなスタートを切らんとの熱意溢れる男だった。
別荘に西田の妻の姿はなかった。――当然だ。7年も音沙汰なしの夫の帰りを待っているはずがない―― しかし、別荘には電気も電話も通じていた。つまり、忘れない程度には、妻もここを訪れているのだろう。西田はさっそく「完全犯罪」のときの担当編集者・小谷野にファックスを送り、新作「覆面作家」の執筆に取り掛かった。
西田が一息ついた頃、小谷野から電話が掛かってきた。新作に取り掛かっていることを告げるが、何せ西田失踪から7年である。電話の相手が本当に西田なのかすら訝しむような小谷野だったが、すぐにやって来て面会すると、ひとまず納得した様子。西田が妻のことを尋ねると、彼女は一人、阿佐ヶ谷で暮らしているという。「覆面作家」は西田の自伝的小説で、その内容からしても、少々彼女とは顔を合わせづらいものがあった。もし自然に彼女に自分の存在が知られてしまうなら仕方ないが、今はまだわざわざ知らせたくないと、小谷野に告げると、彼も同意した。
執筆を再開した西田の別荘に警官が尋ねてきた。不法侵入の通報があったのだという。西田は驚いた。なぜ自分の別荘に入るのに、誰かの許可が要るのかと。しかし考えてみれば、西田は7年も失踪していた上に、当時の彼は車椅子での覆面姿しか知られていない。誰かに不法侵入者と思われても仕方ないかも知れぬ。ともかく、西田が免許証と保険証を提示すると、警官も納得し、帰っていった。匿名の通報者は女だったという。
西田は相変わらず執筆を続ける日々だったが、彼の周囲に不可解な出来事が起こり始める。向かいの売り家に明かりが灯ったり、外出した帰り道に怪しい足跡が残っていたり、別荘内の物が微妙に動かされたような形跡があったり、挙句の果てには室内に脅迫文も残されていた。西田の周りには、まるで彼を監視しているような不審人物の影。一度などは玄関の扉を叩く音と、呼び掛ける女の声に応えて、家の外に出てみれば、窓越しに見えた女の姿はそこになく、残されたのは雨合羽のみ。翌朝にはその雨合羽も消え、幻覚でも見たのかと訝しむ日々。そして、「覆面作家」にも登場する、今は亡き占い師・浦辺ミネがかつて住んでいた家に彼女らしきの姿を認め、そこに入り込んでみれば、彼女を見つけることはできなかったが、故意に殺されたらしき猫の死体があった。もはや彼は命からがら逃げ延びるのみだったが、その途中で拾って杖がわりにした板を見れば、それは卒塔婆。「西田操。享年三十二」 彼が死んだ日付は、7年前の8月31日と記されていた。
自らの身の回りにに起こる怪事に気味の悪さを感じつつも、なおも執筆を続ける西田。そのうちに、彼が執筆する「覆面作家」と現実が同調するかのような異変が起こり始めた。「覆面作家」の作中では、“俺”は二階に監禁されているのだが、その二階から物音が聞こえるのだ。――作品にのめり込み過ぎて、作中の出来事を現実であるかのように錯覚しているのか―― これは幻聴だと、自分に言い聞かせるように仕事を続けるものの、どうしても気になって仕方ない。折を見て様子を見に行くも、もちろんそこには誰も居ない。やはりこれは単なる幻聴と納得しようとするが、印刷した原稿が紛失する事態に至っては、そのように片付けてしまうのも難しかった。「覆面作家」の中の“俺”は、階下の書斎から原稿を持ち出していたのだ。西田は小説の内容と現実が同期しているなら、試しにそれを利用した罠を仕掛けてみようと思った。
罠は的中した。いつものように書斎に入った西田は、床に倒れた覆面男を見つけた。まるで、「覆面作家」の筋書きどおりに睡眠薬を飲まされて、眠っているかのようだ。――やはりこいつは実在していたのだ―― 西田はその人物を縛り上げ、二階の部屋のベッドに固定した。覆面男の素顔を見たいとは思ったが、こちらの顔を見られるのも避けたいと、包帯の上から巻いたタオルを取りたくもなかった。結局、今は自分の仕事のほうが大事と、とりあえず包帯男はそのまま放置することにした。
ほかに気になることと言えば、新聞に西田の妻・比佐子からの三行広告の掲載が続いていることだ。内容は「覆面作家」の世評やら、彼の帰宅を促すものばかりである。西田にはその意味がさっぱりわからなかった。彼はまだ「覆面作家」を発表してないのだから、それが好評を得たり、賞を獲得したりするはずがない。彼女は彼がここに居ることを、もうとっくに知っているはずであり、一度は電話で会話までしているほどなのだから、なぜ帰宅を促すメッセージを送るのみで、直接会いに来ないのかも解せない。
「覆面作家」が受賞したという、彼女からの三行広告――ひょっとして、彼女がこっそり原稿を持ち出し、勝手に「覆面作家」を発表したのではないかと、彼は思い当たった。そう納得しかけたものの、やはり疑問は残った。――じゃあ、あの覆面男は何者なんだ?――
そのとき、物音がした。「覆面作家」の作中では、二階に監禁されていた覆面男は脱出に成功し、書斎の人物を襲撃するのだ――
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
自分の書いてる小説の内容と現実とが重なり合うような状況に置かれた人物を主人公とした、ホラー・サスペンス・テイストな物語。しかし作者が折原一とあれば、やはり単純なホラーであるはずもなく、最後には合理的な解釈が成されるものの、捻った叙述と構造で読者を騙し、驚かそうとする作品となっている。
読み終わってみれば、作家などにはよくあること、ましてや「自らを“覆面作家”とするほどの西田操なら当然やるべきこと」が行われていないという大きなヒントが提示されていたことに気づく。(もっとも、そこから真相を導き出すのは厳しいと思うが、その不自然さに注意はすべきだろう) 迂闊にも、警官の訪問の場面の手掛かりに気づかなかったことが悔しいw
無理はいくつか感じる。西田が不審な物音を聞いても、家じゅうを検めないこととか、浦辺邸に用意されていた卒塔婆を都合良く持ち帰った上に焼却したこととか。小谷野に勧められての電話からの展開も腑に落ちない。
① 7年前に失踪した作家・西田操が、かつての仕事場である別荘に戻って来る。自伝的小説「覆面作家」の執筆を開始。担当編集者の小谷野と打ち合わせ。
② 西田の身の回りで、いくつかの不可解な出来事が起こる。脅迫文も残される。
③ 現実の奇妙な出来事が、小説の内容とシンクロし始める。
④ 「覆面作家」の中での“俺”は、この書斎の上の部屋に監禁されている。上階から物音が聞こえる。
⑤ 印刷した原稿が紛失する。作中での“俺”は、監禁部屋から抜け出して、階下の書斎から「覆面作家」という小説の原稿を持ち出している。“俺”は、この原稿を書いたのは誰なのかと不思議がっている。
⑥ 妻・比佐子からの新聞の三行広告が何度も掲載されている。「覆面作家」が受賞した、早く帰ってきてください、などという内容の伝言ばかり。「覆面作家」はまだ発表してないし、西田がここに居ることは比佐子も既に知っているはず。その伝言の意図が、西田にはまったく意味不明。
⑦ 西田、「覆面作家」を書き終える。すると、小説の内容と同じように、背後の扉が開き、現れた覆面男が西田を襲撃。西田は縛られ、包丁を突き付けられる。
⑧ 比佐子が現れ、覆面男を背後から殴り倒し、西田を救出する。
西田操:推理作家
西田比佐子:操の妻
小谷野修治:編集者
宮沢:派出所巡査
浦辺ミネ:占い師
笹間博之
笹間利江
益子圭司
新人賞に応募された「完全犯罪」は、見事栄冠を勝ち取った。しかしその作者・西田操は表彰式にも代理を立てるなど、人前に姿を表すことを拒み、覆面作家として知られるようになった。実は当時の西田は交通事故により、顔や両脚に大きな怪我を負ってしまい、普段は車椅子で覆面姿で過ごしていた。そのような事情のため、彼は人前にその姿を晒すことを極力嫌がり、その意を汲んだ編集者が、性別すら謎の、まさに“覆面作家”としてデビューすることを提案。西田はそれを了としたのである。
西田は元々世界史の教師だったのだが、いつまでも休職していては、元の職場からも良い顔されないだろう。思い悩んだ末、新人賞の受賞と賞金の獲得を機として、専業作家となることにした。ところが、デビュー作が大ヒットしたプレッシャーからか、二作目はなかなか筆が進まない。そのうちに西田は、妻にも行き先を告げずに失踪した。7年経ったら戻ってくるというメッセージを残して。
西田操失踪から7年。「完全犯罪」を生み出した別荘を、一人の男が訪れた。紛れもなく、西田操その人であった。顔にも脚にも大きな傷跡などなく、かつての“覆面作家”を思わせるところはなかった。そこに居るのは、新作の着想を得て、執筆欲に燃え、新たなスタートを切らんとの熱意溢れる男だった。
別荘に西田の妻の姿はなかった。――当然だ。7年も音沙汰なしの夫の帰りを待っているはずがない―― しかし、別荘には電気も電話も通じていた。つまり、忘れない程度には、妻もここを訪れているのだろう。西田はさっそく「完全犯罪」のときの担当編集者・小谷野にファックスを送り、新作「覆面作家」の執筆に取り掛かった。
西田が一息ついた頃、小谷野から電話が掛かってきた。新作に取り掛かっていることを告げるが、何せ西田失踪から7年である。電話の相手が本当に西田なのかすら訝しむような小谷野だったが、すぐにやって来て面会すると、ひとまず納得した様子。西田が妻のことを尋ねると、彼女は一人、阿佐ヶ谷で暮らしているという。「覆面作家」は西田の自伝的小説で、その内容からしても、少々彼女とは顔を合わせづらいものがあった。もし自然に彼女に自分の存在が知られてしまうなら仕方ないが、今はまだわざわざ知らせたくないと、小谷野に告げると、彼も同意した。
執筆を再開した西田の別荘に警官が尋ねてきた。不法侵入の通報があったのだという。西田は驚いた。なぜ自分の別荘に入るのに、誰かの許可が要るのかと。しかし考えてみれば、西田は7年も失踪していた上に、当時の彼は車椅子での覆面姿しか知られていない。誰かに不法侵入者と思われても仕方ないかも知れぬ。ともかく、西田が免許証と保険証を提示すると、警官も納得し、帰っていった。匿名の通報者は女だったという。
西田は相変わらず執筆を続ける日々だったが、彼の周囲に不可解な出来事が起こり始める。向かいの売り家に明かりが灯ったり、外出した帰り道に怪しい足跡が残っていたり、別荘内の物が微妙に動かされたような形跡があったり、挙句の果てには室内に脅迫文も残されていた。西田の周りには、まるで彼を監視しているような不審人物の影。一度などは玄関の扉を叩く音と、呼び掛ける女の声に応えて、家の外に出てみれば、窓越しに見えた女の姿はそこになく、残されたのは雨合羽のみ。翌朝にはその雨合羽も消え、幻覚でも見たのかと訝しむ日々。そして、「覆面作家」にも登場する、今は亡き占い師・浦辺ミネがかつて住んでいた家に彼女らしきの姿を認め、そこに入り込んでみれば、彼女を見つけることはできなかったが、故意に殺されたらしき猫の死体があった。もはや彼は命からがら逃げ延びるのみだったが、その途中で拾って杖がわりにした板を見れば、それは卒塔婆。「西田操。享年三十二」 彼が死んだ日付は、7年前の8月31日と記されていた。
自らの身の回りにに起こる怪事に気味の悪さを感じつつも、なおも執筆を続ける西田。そのうちに、彼が執筆する「覆面作家」と現実が同調するかのような異変が起こり始めた。「覆面作家」の作中では、“俺”は二階に監禁されているのだが、その二階から物音が聞こえるのだ。――作品にのめり込み過ぎて、作中の出来事を現実であるかのように錯覚しているのか―― これは幻聴だと、自分に言い聞かせるように仕事を続けるものの、どうしても気になって仕方ない。折を見て様子を見に行くも、もちろんそこには誰も居ない。やはりこれは単なる幻聴と納得しようとするが、印刷した原稿が紛失する事態に至っては、そのように片付けてしまうのも難しかった。「覆面作家」の中の“俺”は、階下の書斎から原稿を持ち出していたのだ。西田は小説の内容と現実が同期しているなら、試しにそれを利用した罠を仕掛けてみようと思った。
罠は的中した。いつものように書斎に入った西田は、床に倒れた覆面男を見つけた。まるで、「覆面作家」の筋書きどおりに睡眠薬を飲まされて、眠っているかのようだ。――やはりこいつは実在していたのだ―― 西田はその人物を縛り上げ、二階の部屋のベッドに固定した。覆面男の素顔を見たいとは思ったが、こちらの顔を見られるのも避けたいと、包帯の上から巻いたタオルを取りたくもなかった。結局、今は自分の仕事のほうが大事と、とりあえず包帯男はそのまま放置することにした。
ほかに気になることと言えば、新聞に西田の妻・比佐子からの三行広告の掲載が続いていることだ。内容は「覆面作家」の世評やら、彼の帰宅を促すものばかりである。西田にはその意味がさっぱりわからなかった。彼はまだ「覆面作家」を発表してないのだから、それが好評を得たり、賞を獲得したりするはずがない。彼女は彼がここに居ることを、もうとっくに知っているはずであり、一度は電話で会話までしているほどなのだから、なぜ帰宅を促すメッセージを送るのみで、直接会いに来ないのかも解せない。
「覆面作家」が受賞したという、彼女からの三行広告――ひょっとして、彼女がこっそり原稿を持ち出し、勝手に「覆面作家」を発表したのではないかと、彼は思い当たった。そう納得しかけたものの、やはり疑問は残った。――じゃあ、あの覆面男は何者なんだ?――
そのとき、物音がした。「覆面作家」の作中では、二階に監禁されていた覆面男は脱出に成功し、書斎の人物を襲撃するのだ――
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
自分の書いてる小説の内容と現実とが重なり合うような状況に置かれた人物を主人公とした、ホラー・サスペンス・テイストな物語。しかし作者が折原一とあれば、やはり単純なホラーであるはずもなく、最後には合理的な解釈が成されるものの、捻った叙述と構造で読者を騙し、驚かそうとする作品となっている。
読み終わってみれば、作家などにはよくあること、ましてや「自らを“覆面作家”とするほどの西田操なら当然やるべきこと」が行われていないという大きなヒントが提示されていたことに気づく。(もっとも、そこから真相を導き出すのは厳しいと思うが、その不自然さに注意はすべきだろう) 迂闊にも、警官の訪問の場面の手掛かりに気づかなかったことが悔しいw
無理はいくつか感じる。西田が不審な物音を聞いても、家じゅうを検めないこととか、浦辺邸に用意されていた卒塔婆を都合良く持ち帰った上に焼却したこととか。小谷野に勧められての電話からの展開も腑に落ちない。
① 7年前に失踪した作家・西田操が、かつての仕事場である別荘に戻って来る。自伝的小説「覆面作家」の執筆を開始。担当編集者の小谷野と打ち合わせ。
② 西田の身の回りで、いくつかの不可解な出来事が起こる。脅迫文も残される。
③ 現実の奇妙な出来事が、小説の内容とシンクロし始める。
④ 「覆面作家」の中での“俺”は、この書斎の上の部屋に監禁されている。上階から物音が聞こえる。
⑤ 印刷した原稿が紛失する。作中での“俺”は、監禁部屋から抜け出して、階下の書斎から「覆面作家」という小説の原稿を持ち出している。“俺”は、この原稿を書いたのは誰なのかと不思議がっている。
⑥ 妻・比佐子からの新聞の三行広告が何度も掲載されている。「覆面作家」が受賞した、早く帰ってきてください、などという内容の伝言ばかり。「覆面作家」はまだ発表してないし、西田がここに居ることは比佐子も既に知っているはず。その伝言の意図が、西田にはまったく意味不明。
⑦ 西田、「覆面作家」を書き終える。すると、小説の内容と同じように、背後の扉が開き、現れた覆面男が西田を襲撃。西田は縛られ、包丁を突き付けられる。
⑧ 比佐子が現れ、覆面男を背後から殴り倒し、西田を救出する。