らふりぃの読書な雑記-67
黒星警部シリーズ。丹波家当主・竜造が海難事故で行方不明となる。長男・健太郎が新たな当主となり、遺された財を一手に握ったのも束の間、密室内であっけなく死んでしまう。自然死のようではあるが、当時の状況に不審な点もあった。そしてさらに長女・末子も命を落とす。こちらは明らかに他殺。現場に残された足跡は、被害者と第一発見者のもののみ。[???]

丹波竜造:丹波家当主
健太郎:竜造の長男
美智代:健太郎の妻
秋彦:健太郎と美智代の息子
早苗:秋彦の妹
雄二郎:竜造の次男
三郎:竜造の三男
末子:竜造の長女
神谷隆司:末子の夫
涼:隆司と末子の息子
千春:竜造の後妻
リエ:千春の連れ子
ひろみ:竜造の愛人
小四郎:ひろみの連れ子
小峰清作/花江:丹波家の使用人夫婦
片桐伸也:丹波家の顧問弁護士

黒星光:白岡署警部
竹内:同刑事
倉沢:同嘱託医



船が沈む―― もはや助かる見込みはなかった。そうなればもう腹は座ったもので、竜造は遺言書を書き始めた。遺産相続のゴタゴタを防ぐためだ。とは言え、この遺言書が無事届くかどうかは甚だ心もとないが、何もしないよりはマシだ。万に一つの可能性に賭けてみようという気持ちだった。船体に再び強い衝撃が走った――

実業家・丹波竜造が遭遇した海難事故は、大きな波紋を呼んだ。未だその遺体は発見されぬが、彼は死んだものとして扱われ、金庫の中の遺言書が公開された。それによると、遺産の大半は長男・健太郎のものとなる。丹波家当主として傲慢に振る舞う健太郎は、さっそく丹波家の宝物庫とも言える、厳重に閉ざされた仏間に入り、その宝物を検め始める。期待以上の財宝の数々に歓喜し、亡父への感謝を覚える健太郎。しかし翌朝、健太郎はその密室内で死体となっていた。

健太郎は狭心症の気があったので、その死が自然死であってもおかしくはない。だが、その夜に家の者の何名かが聞いた、バイクのエンジン音らしき音には、何か意味があるのではないか――

健太郎の死は、家の中に新たな波を立てた。竜造の遺産は莫大なゆえ、その相続人の一人の死は、他の者に大きな影響を与えるのである。そんなときに丹波家にひょっこりと三男・三郎が帰ってくる。彼は既に勘当された身なので、遺産の取り分はない。しかしその帰還が、果たして純粋に父の死を悼むためとは疑わしい。そして竜造の新たな遺言書が見つかると、情勢はまた大きく変わった。そこには、遺産の大部分が後妻・千春に渡ることが記されていた。

憤懣やるかたない、他の相続人たち。事が遺言書どおりに静かに運ぶような状況ではない。そこに訪れたのが、長女・末子の死であった。殺害現場は雪に覆われた祠。周囲に残る足跡は、被害者のものと、発見者である夫のものだけだった。

止まらぬ殺人。さらに三つの死が訪れたとき、そこに犯人のものと思われるメッセージが残された。「これで丹波家のすべての殺人は終わった。丹波竜造」


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



ユーモラスな部分も多いが、黒星が葉山虹子とコンビを組む長編「鬼面村の殺人」「猿島館の殺人」と比べると、ややシリアスで重い。最後はどんでん返しの展開なのは、作者・折原一の作品では基本だが、本作は割とシンプルなほうだろう。ある文章を、読者には別の意味に誤解させる叙述トリックも控えめ。

竜造の犯行を匂わせる痕跡を記しつつも、作者の性格によるものなのか、オドロオドロしく怪奇な雰囲気は薄い。竜造の扱いが中途半端な印象を受ける。竜造の最後の遺言もいまいち。まったく不要とすら思える。

仏間のトリックは、死ぬほどのダメージを与えるなら、死体の手に痕跡が残るべきじゃないかと思うが、元々心臓の弱い健太郎ゆえ、あっさり死んでしまったと解釈してもいいのだろう。作者は手掛かりをかなりわかりやすく書いているw

雪密室のトリックはド定番パターン。前提として真っ先に否定されるケースも多いパターンだw

序盤の、竜造の節税策の部分もストーリーの伏線になっているのは、さすがw



① 丹波家当主・竜造、海難事故により行方不明。死亡と扱われる。その際、遺言を記すも発見されず。
② 丹波邸金庫内の遺言書が有効とされ、その遺産の大半は長男・健太郎が受け継ぐことになる。
③ 健太郎、宝物庫とも言える仏間に入る。三重に施錠。宝を検めるうちに睡眠。目覚めると、停電して闇の中。数字錠の番号も合わせられず、部屋を出られない。
④ 密室である仏間にて健太郎の死体発見。死因は心臓麻痺。以前から狭心症気味だった。
⑤ 祠に不審人物。正体は勘当されていた三郎。健太郎の推定死亡時刻頃にバイクのエンジン音のような音を聞いたと証言。リエと涼も、同様の証言をしている。
⑥ 新たな竜造の遺言書発見。それによって、遺産の大半は後妻・千春のものとされる。
⑦ 祠にて、長女・末子が死亡。頭部への打撃が致命傷。現場には凶器である、血の付いた角棒。目撃情報によると、末子が祠に向かったとき、その周囲は雪で覆われ、足跡はなかった。祠内に二名による争いらしき人影が映り、神谷が救出に向かう。祠には末子の死体があり、他に人物の姿なし。祠と母屋の間には、末子のものと、神谷の往復のもの、三組の足跡残る。
⑧ 竜造の寝室にて、リエが頭部を殴られ昏倒。
⑨ 秋彦、犯人がわかったと、警察へと向かうも、バイクに細工。秋彦は死亡。
⑩ 美智代への脅迫状。「次はおまえの番だ。殺人者」 美智代、竜造との養子縁組の解消を宣言。自分を殺しても経済的利点は薄いと、誰とも知れぬ犯人に伝える。
⑪ 竜造の最後の遺言書が発見される。遺産の大半は愛人・ひろみに渡ることになる。
⑫ 千春、流産。
⑬ 涼、黒星に何かを伝えようとする。水車にウィスキーの瓶が投げつけられる。涼、その場を去る。
⑭ 涼、固く閉ざされた自室内にて、ガスにより死亡。竜造の部屋の中にメモ発見。「これで丹波家のすべての殺人は終わった。丹波竜造」
⑮ 祠に保管されていた黄金の狐像が盗まれる。リエ、竜造らしき人物を目撃。
⑯ 竜造とひろみと小四郎の死体が引き揚げられ、彼らが海難事故の際に命を落としていたことが確認される。