黒星警部シリーズ。逃亡中のチンパンジー・ゴンタ捜索のために猿島を訪れた黒星警部。島の唯一の住人である猿島家で、ゴンタによるものらしき殺人事件が発生し、肩を落とす。現場は密室で、出入口は煙突の狭い穴しかない。しかも、死んだ藤吉郎は事切れる直前に、「猿が殺したんだ」と言い残していた。(U^ω^)わんわんお! [???]
猿谷藤吉郎:猿谷家当主
猿谷誠一:藤吉郎とその前妻の息子
猿谷則子:誠一の妻
猿谷大輔:誠一と則子の息子
猿谷静江:藤吉郎の後妻
村上美奈代:静江の連れ子
沖田源造/チヨ子:猿谷家の使用人夫婦
春山すみれ:猿谷家の住み込み看護婦
水野邦男:不動産業者
葉山虹子:フリーライター
河島ゆかり:「月刊・旅の情報」編集部員
黒星光:白岡署警部
ゴンタ:チンパンジー
いつも事件を引っ掻き回してばかりの黒星光警部は、相手が猿なら大した問題も起こさないだろうと判断した上層部から、逃亡したチンパンジー・ゴンタ捜索を任された。この猿は、文字まで読めるほどの高い知能の持ち主。無人島である猿島への定期便の乗客の数が、往復で三名ぶん合わないことを確認した黒星は、そのうちの一人はもしや猿の変装ではないかと推測し、島へと渡った。
黒星はさっそく闇の中に怪しい姿を発見し、取り押さえようとするものの、石での一撃を食らい、すんでのところで取り逃がした。捜索を再開すると、彼は民家を見つけた。原則的には人の居住を認められていないこの島で、唯一それを認められているのが、島の伝説にその祖を持つ、この猿谷家だった。そこで彼は懐かしい顔を見る。それはかつて鬼面村で、ともに事件解決にあたった葉山虹子だった。彼女は帰りの船に乗り遅れて、島に取り残されてしまったのだ。実は彼に石をぶつけたのは猿ではなく、彼女であった。
猿谷家では奇妙な事件が発生していた。施錠された書斎内で、当主・藤吉郎が死んでいたのである。外へ開いているのは、暖炉にある30センチ四方ほどの正方形の穴のみ。自身の好みの状況の事件にもかかわらず、黒星の表情が冴えないのは、この事件の犯人(?)は猿のゴンタであり、もっと早く捕まえていればこのような悲劇を招くこともなかったと、彼が考えているためである。
黒星が猿谷家の者たちの力も借りて島を捜索するも、猿はなかなか見つからない。その代わりに、不動産業者の水野が倒れているのを発見し、救助する。意識がはっきりしない彼は、「猿にやられた」と漏らす。
ただ探し回っても埒が明かぬと、祠に仕掛けた猿捕獲の罠は失敗。またもやその代わりに発見されたのは、静江の死体だった。目の上のたんこぶの藤吉郎と静江亡き今、自分こそが猿谷家の当主と、傲慢に振る舞う誠一だったが、さっそく不動産売却の話を進めようと、水野とともに書斎に籠った途端に命を落とした。今回も書斎は施錠されている。室内には二匹のマムシ。水野はそれに噛まれ、心臓に病気を抱えていた誠一は、そのショックで死んだようだ。
隠された遺言書を捜す黒星と虹子。ところが、発見されたのは意外な物だった。それは藤吉郎作と記された、探偵小説の梗概。内容は有名な古典作品の稚拙なパロディだったが、設定は猿谷家のものがそのまま用いられている上に、この事件の状況と酷似していた…。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
「鬼面村の殺人」で知り合った黒星警部と虹子が再会し、またもや奇妙な事件に巻き込まれてしまう。本格物パロディであることもそうだが、事件の真相の大枠もよく似てる。解決編も当然、二転三転の展開。
作中では、「猿が殺したんだ」「毒へびじゃが仕方ねえな」といった、謎めいた言葉が、真相へのヒントとして用いられているが、少々筆が強引過ぎるのではないかとも感じられる。「猿が~」という台詞を、意識が朦朧としていたために…と片付けてしまうのは厳しい。梗概から、マムシをあのように扱うように解釈することも、そしてそれにすぐに気づくというのも苦しい。
まるで事件のモチーフであるかのように、美奈代が「モルグ街の殺人」を読んでいるのは必然としても、「オリエント急行の殺人」を手に取ってるのは、やっぱやり過ぎだよw
① 猿島に取り残された虹子、闇の中で何者かに襲われる。
② 虹子、島の唯一の住人家族、猿島家の世話になる。
③ 美奈代、自室の窓の外に猿のような姿を目撃。
④ 藤吉郎、施錠された書斎内にて、「猿が殺したんだ」と言い残し、死亡。頭部に打撃。暖炉は外部へと開いているものの、30センチ四方ほどの正方形の穴。
⑤ 黒星警部登場、文字も読めるほど頭の良いチンパンジーのゴンタが島に入り込んだらしいと明かされる。
⑥ ゴンタ捜索中に、水野が倒れているのを発見。水野、「猿にやられた」と呻く。
⑦ 目覚めた水野、背広を着た猿に襲われたと証言。
⑧ 猿捕獲用の罠として、眠り薬を混入したおはぎを用いる。おはぎは消えていたが、猿の姿なし。近くに静江の死体を発見。死因は後頭部への打撃と見られる。犬のシロ、おはぎを食べて眠っている。
⑨ 誠一と水野、施錠された書斎で密談。遺言書の捜索も兼ねてのことと思われる。翌朝、死亡しているのが発見される。誠一は心臓麻痺、水野はマムシに噛まれての死と見られる。現場に居たマムシが2匹捕まる。煙突を確認していた源造、突然体を震わせて、「毒へびじゃが仕方ねえな」と呟く。
⑩ 藤吉郎作と記された、探偵小説の梗概が発見される。内容は有名な古典作品のパロディだが、実際の猿谷家の設定を用いたもので、これまでの事件の状況と酷似、。但し、小説の設定上では死んだ振りの藤吉郎が、本当に死亡している。