オランダで日本人のバラバラ死体が発見される。被害者である水島智樹の友人、山尾恭司は事件を調べ始める。彼らも参加していた、麻薬愛好の会「盆栽クラブ」の面々にはアリバイがあるが…。[??]
[盆栽クラブ]
ロン・ヤヌス
アニタ・ヤヌス:ロンの妹
正木遥介
正木美鈴:遥介の妹
久能健太郎
水島智樹
山尾恭司
[警察関係者]
ヘルトヤン・スタフォルスト:警部
ヤネット:ヘルトヤンの妻
フランク・ノーナッカー:巡査部長
モル:課長
スミット:警察医
アントン:水上警察フロッグマン
[その他]
橘:恭司のバイト先である「ミカド」の店長
オットー・スターン:「ブルームーン」店主
ムスタファ:同店員
ヨハン・オーフェルマース:棺桶職人, 死体の発見者の一人
オランダはアムステルダムにて発生したバラバラ殺人事件。死体の主はは水島智樹と特定される。被害者が日本人ということもあり、彼の友人でもある恭司の前に、すぐに刑事が話を訊こうと現れたのも当然であった。もっともそれは恭司に特に強い嫌疑を掛けているというわけではなく、通り一遍のごく通常のもので、死亡推定時刻の恭司のアリバイを確認すると、あっさりと引き上げた。そのときに恭司が二回目の麻薬吸引を試していたことは、同席していたロンと遥介によって裏付けられた。
恭司は水島に好感を持っていた。美鈴を巡っては恋のライバルだったとしても、恭司のその気持ちは変わらない。ふたりは美鈴が本気で心配するほどの激しい議論を交わしたりもしたが、お互いの間では、それは表面的な対立にすぎない娯楽だったのだ。そんなことももうできないかと思うと、悲しくなるのだった。美鈴も落ち込んでいる。同じ悲しみを彼女と共有していることを密かに喜んでいるのではないか――恭司は冷徹に自問したりもしていた。水島とは反りが合わなかったロンや遥介は、恭司ほどには悲しんでいないかも知れない。だが、彼に恋心を抱いていたらしいアニタは、相当のショックを受けているようだ。水島の死は、やはり大きな悲劇と言うしかなかった。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
有栖川有栖のノン・シリーズ作品で、本格物のイメージが強い作者にしては、少々異色な印象を受ける作品。全体的に乾いた陰鬱さが漂う。悲劇でありながら、妙に冷めた雰囲気の中で、物語は淡々と進んでいく。
作品は三部構成となっており、大阪~アムステルダム~再び大阪と、舞台を移す。メインの事件はアムステルダムでのバラバラ殺人だが、ほかに二つのバラバラ殺人も描かれる。そのひとつは大阪で、もうひとつは恭司作の小説の中で。
本作に異色という印象を与える要素のひとつは、はっきりと解答を得られない謎がいくつか残るというもの。美鈴の「すごく欲しかったもの」とは何だったのか? それは単に自らの終わりを与えてくれるものだったのだろうか。それとも、兄と同じ「幻視」の力だったのだろうか。あるいは、最後の望みを叶えてくれる存在だったのだろうか。
もっとシンプルな謎としては、アムステルダムのバラバラ殺人についても、正解は示されていない。殺害した動機も、バラバラにした理由も曖昧なまま、そして犯人についても、ひとつの推測が語られるのみである。
裏表紙の紹介文には、「有栖川有栖裏ミステリー・ベスト1の傑作」などとあり、なんとなく予感するものがあって、事前にいくつかのレビューに軽く目を通しておいたのでショックはなかったけど、予備知識なしで本作を読んだら、たぶん落胆してた。
① 山尾恭司が初めての麻薬パーティーに参加。
② 恭司がバラバラ殺人を題材とした小説の序盤を水島智樹に披露。
③ 恭司が2回目の麻薬パーティーに参加。
④ 水島の胴体、左腕、左脚が、それぞれ運河の別々の場所で発見される。それを知った警察の大規模な捜索により、頭部もすぐに運河から発見される。後頭部に鈍器で打撃を受けた上、首を紐で絞められ窒息死し、その後、四肢と頭部を切断されたと断定。