らふりぃの読書な雑記-61
作家アリスの国名シリーズ。輝くばかりに美しく、愛らしい少年だったルネが死んでから3年半という歳月が過ぎ、すっかり落ち着きを取り戻した“スウェーデン館”で殺人事件が発生。現場に残る足跡は、被害者と第一発見者のもののみという、“雪の密室”。[???]

[スウェーデン館の滞在者]
乙川リュウ:童話作家, 家主
乙川ヴェロニカ:リュウの妻
乙川流音(ルネ):リュウとヴェロニカの息子, 故人
乙川育子:リュウの母
ハンス・ヨハンソン:ヴェロニカの父
葉山悠介:リュウの従弟
綱木淑美:画家
綱木輝美:画家, 淑美の妹
等々力末臣:建設会社社長

[ペンション・サニーデイの滞在者]
迫水春彦:オーナー
迫水倫代:春彦の妻
迫水大地:春彦と倫代の息子
有栖川有栖:推理作家, 滞在客

[その他]
島野:福島県警警部
小山内:同刑事
火村英生:臨床犯罪学者, 有栖の友人



金色の髪を夏の陽に輝かせた少年は、その姿を見た者を、まるでおとぎの国に迷い込んでしまったような気にさせたものだった。だが、その光景はもう見ることができない。

小さく、可愛らしいルネは、沼に浮かんでいた。誰よりも早くその姿を見つけた姉妹は、涙を流した。ルネの母も激しく泣いた。父は呆然と佇むのみだった。客人たちは言葉もない。

それから3年半が経ち、取材旅行のために、作家・有栖川有栖がその地を訪れたとき、彼はその悲劇を知らなかった。

彼が滞在するペンションの主人夫婦の人柄は素晴らしく、その傍に建つ、通称「スウェーデン館」の住人たちとも親睦を深めることができた。その居心地の良さのために、すぐにこの地を発つのも惜しいなどと、彼が思い始めていた矢先、「スウェーデン館」にて殺人事件が起きる。

離れに残された、綱木淑美の死体。現場にはほかに誰もおらず、降り積もった雪に残された足跡は、被害者のものと思しき片道のものと、第一発見者である乙川リュウの往復のもののみ。現場の状況からするとリュウ以外には犯行を成し得ないようであるが、彼には淑美の死亡推定時刻のアリバイがあった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



それまでの作者の長編作品の中で最も早く書き上げられたものとのこと。内容は本格物の定番のひとつである、「雪の密室」を巡る、推理の一問題。こういう作品なのに、現場の詳細な図面が付されてないことから、おそらくはあまり複雑な機械トリックではないだろうと、まず推測されるw そして、小さな足跡を大きな靴で踏み消す手法では、上手く足跡を残せないことが実証され、他の作家が過去の作品で用いたトリックに疑問が投げ掛けられるw

犯人の意図は、不可能状況を作ることではなく、離れの裏の森から犯人が逃げ去ったのだと思わせることだった。しかし、警察の捜査によって、犯人が森に入って足跡を消すことはできるが、その森から出たら痕跡は残さざるを得ない、すなわち犯人は森を抜けて逃亡などしてはいない、ということになってしまった。地の利がある人物としては、いささか間抜けな計画だ。そしてその計画は、ある人物の習性を把握しているからこそ行い得たものだが、それにしても確実とは言えず、もしその途中で異変に気づかれたら、果たしてどうするつもりだったのであろうか。もはやこれまでと観念したのか、あるいは…。

これは二つのトリックを組み合わせている。その一つは、これまた「雪の密室」の定番トリック。ズバリ、このピースだと当てを付ければ、ほとんどこのパズルが解けてしまう危険性もあり、このトリックはなかなか大胆。

ハンス・ヨハンソンとの会話の中の手掛かりの出し方は、クイーンというよりもカーっぽいだろうか。大地少年の目撃情報を巡る推論は、作者からの駄目押しのヒントなのかも。



① 乙川流音が沼にて死亡。
② 離れにて綱木淑美が死亡(頭部に打撃)。囲む雪に残る足跡に謎。
③ 離れにて綱木輝美が頭部に打撃を受け、意識不明。