学生アリスシリーズ。“モアイ・パズル”への挑戦とバカンスを兼ねて訪れた南の島で、殺人事件に遭遇。密室内で、父に折り重なるように倒れた娘。二人とも銃弾によって命を奪われており、その周囲に銃はない。自殺と見るなら、そこに銃がないのがおかしいし、他殺と見るなら、犯人がどのように密室から立ち去ったのか不明。連続殺人事件。[???]
江神二郎:英都大学・推理小説研究会部長
有栖川有栖:英都大学・推理小説研究会部員
有馬麻里亜:英都大学・推理小説研究会部員
有馬鉄之助:故人, 麻里亜の祖父, 「モアイ・パズル」の作者
有馬竜一:麻里亜の伯父
有馬英人:竜一の長男
有馬礼子:竜一の養女, 英人の元婚約者
有馬和人:竜一の次男
有馬竜二:麻里亜の伯父
有馬竜三:麻里亜の父
牧原完吾:鉄之助の義理の息子
牧原須磨子:完吾の娘
牧原純二:須磨子の夫
犬飼敏之:鉄之助と妾の間の息子
犬飼里美:敏之の妻
園部祐作:医師
平川至:画家
英都大学・推理小説研究会の一員である有馬麻里亜からのバカンスの誘いに、同会員の有栖川有栖と江神二郎は飛びついた。南国の孤島・嘉敷島での宝探しである。麻里亜の話によると、彼女の祖父・有馬鉄之助はパズル好きで、島のどこかに5億円相当の宝石を隠し、その秘密を25体のモアイ像に託したらしい。そのモアイ像というのは、もちろんイースター島の本物ではなく、それを模して作った木彫りの像で、それが島じゅうに点在している。その謎を解いてやろうと、意気揚々と島に乗り込んだ一行だったが、滞在する「望楼荘」で変死事件が発生し、それどころではなくなってしまう。
牧原完吾・須磨子父子はライフルで撃たれたことにより死亡したようなのだが、その室内にその凶器は見当たらなかった。そして窓は施錠され、出入口の扉には掛け金が掛けられていたこともわかっている。仮に自殺だとしても、他殺だとしても、おかしな状況だった。
次の事件が起きたのは、島のもう一つの邸宅・魚楽荘。その持ち主である画家・平川至が死んだ。こちらは明らかに何者かの手による射殺だった。現場には、半分ほど完成していたはずのジグソーパズルが壊され、バラバラに散らばっていた。
そして、またもや新たな死体が。
現場には、告白書が残されており、そこには牧原父子と平川を殺したのは自分だと書かれていた。しかし、それは署名に至るまですべてワープロで打たれたもので、信憑性は疑わしい。そしてさらに、江神が壁に飾られたパズルに撃ち込まれた銃痕の異状について指摘すると、もはや自殺説を肯定する者は居なかった。連続殺人犯は、まだこの中に居る――。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
アリスとマリアの間に恋愛感情はありません。お互いがはっきりと否定しています。それは決して嘘ではないでしょう。でもわれわれは、そこに素敵なロマンスを見るのです。甘酸っぱくて、せつなくて、そしてちょっぴり苦い――もう過ぎ去ってしまった、あの遠い夏の日々を――
…ごめんなさい。ちょっぴりふざけてしまいましたが、これ以上は無理ですw
学生アリスシリーズの第2作。本格物では定番の、閉ざされた孤島での連続殺人事件。
嘉敷島は「U」字型の島で、その両端にそれぞれ、望楼荘と魚楽荘が建てられている。両者は海を挟んで目と鼻の先だが、陸地を通るとかなりの遠回りとなる。その手段としては、海を越えるなら泳ぎかボート、陸を行くなら徒歩か自転車となるが、島にはあまり多くないとはいえハブが生息しているので、徒歩は(特に夜は)なるべく避けるべきである――というのが、重要なデータのひとつ。
第一の殺人での不可能状況の解決はちょいと物足りない。これは犯人にとってもまったく想定外の事態で発生してしまったもので、真相を知って納得はできるが、肩透かしを食らった気分。咄嗟によくもそこまで考えて行動できるものだと…。「なるほどっ!」と、膝を打つ読者はどれほど居るだろう…。
第二の殺人でのジグソーパズルのダイイング・メッセージは面白い。でも、ジグソーパズルを組み立てたことのあるひとならわかるだろうけど、これをやろうとするなら結構細かい作業になる。少々慎重にやらないと、余計なピースが大量にくっついてきたりしちゃうこともあるし。素直に血文字を残せば良かったのに。壁にも床にもテーブルにも残すことが無理なら、自分の服か体にでも。
振り返ってみると、この犯行は計画段階から大した工夫もなく、かなり杜撰。第一・第二の殺人については特殊な工作を何もしておらず、奇妙な状況を生み出してしまったのは、まったくの誤算とその対処によるもの。第三の殺人の際は偽遺書を使ったが、それはあまりにも稚拙なもので、その場であっさりと見破られる。
しかし、良いパズラーには、名探偵に対する“名犯人”を必ずしも要するわけではないことを本作は証明している。道に落ちていた紙片から犯人の動きと、そうせざるを得なかった事情を推理し、以前に目撃した些細な出来事と組み合わせて、それを成し得た人物を特定する手際は鮮やか。平川至の死体を発見する直前での、推理小説研究会の三名のやりとりはギラリと光っているw しかし、他の人物が、誰の目にも触れずにコソーリ行動することに成功したという可能性を、完全に否定したとは言い切れないかも知れない…。
宝の在り処は、隠し場所としてはちょっと目立ち過ぎなのではないだろうか。手当たり次第の探索でも、割とすぐに発見されそうな…。
① 宝の在り処を示す、モアイ・パズル。
② 牧原完吾と須磨子が密室内で死亡(銃)。現場には銃がない。
③ 平川至が死亡(銃)。現場にパズルのピースが散乱。
④ 有栖川有栖が自室にてハブに襲われる。
⑤ モアイ・パズルの解読成功。宝は既になかった。
⑥ 有馬和人が死亡(銃)。死体の傍に銃と遺書。