修道士カドフェルシリーズの第1作。聖女の遺骨探しに絡む殺人。[?]

カドフェル:修道士
ヘリバート:修道院長
ロバート:副修道院長
リチャード:副院長補佐
ジェローム:副院長書記
コロンバヌス:修道士
ジョン:見習い修道士
ヒウ:グウィネズ村の司祭
リシャート:村の地主
シオネッド:リシヤートの娘
アネスト:シオネッドの侍女, ベネッドの姪
カドワロン:村の地主
ペレドゥア:カドワロンの息子
カイ:リシャートの鋤男
エンゲラード:リシャートの牛飼い
ベネッド:鍛冶屋
パドリッグ:吟遊詩人



ここは12世紀の英国。シュルーズベリ修道院のロバート副修道院長にとって、聖遺物がないというのはとても歯がゆいことだった。しかも近隣の修道院、それもこちらよりも小さな修道院が、新たな聖人の遺骨を発見し、それを自らの祭壇に祀ることに成功したとなれば、誇り高く、野心的な彼にとって、それは耐え難い屈辱ですらあるのだった。そんなときにコロンバヌス修道士が啓示を得たとなれば、ロバートが飛びつかぬはずがない。コロンバヌスの夢に現れたという、聖ウィニフレッドの遺骨を得るために、ロバート率いる一行は、さっそくウェールズへと向かった。

カドフェル修道士はそのような話を真に受けてはいなかった。すべてがあまりにも出来過ぎた話で、おそらく事前にロバートやその意を受けた者が、条件に合った遺骨を探し出しており、それを当修道院に持ち帰るに相応しいストーリーを作ったのだろう。ともかくカドフェルもこの一行に加わった。こんな劇的な企みを見物する機会を、あえて逃さなくてもいいだろう。

さすがに下調べはしてあったのだろうか、ウィニフレッドの遺骨をシュルーズベリ修道院に移すことについて、その地を統治する王や司教の了承は簡単に得られた。しかしその遺骨が眠る土地、グウィセリンでは、当然のことながら、教区民たちは地元の聖女の遺骨を持ち去られることを心良くは思わなかった。さらに、王と司教の了承を得ている以上は、教区民の意向などまったく無視すべきものと考える、ロバートの傲岸な態度もまた大きな反発を招いた。劣勢を悟ったロバートは、重要なのは大地主のリシャートの意向とすばやく見抜き、彼一人との面会に持ち込むことに成功するも、その賢明さはここまでだった。愚かにも金銭をテーブルに持ち出した結果、リシャートを説得する機会を失ったのである。だが、リシャートは寛大な男であった。ロバートの謝罪(少なくともリシャートはそう思っていた)を受け入れると、翌日に再び面会する約束をしたのだ。

翌日、約束の時刻を過ぎてもリシャートは現れなかった。ロバートはそれでも構わなかった。リシャートは逃亡し、敗北を受け入れたのだろうと解釈し、それに疑念を挟むことなどない人物がロバートなのである。もちろん、事実は違っていた。リシャートは森の小道で、胸に矢が刺さった状態で倒れていた。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



TVドラマシリーズとして映像化もされた、人気シリーズ「修道士カドフェル」の第一作。作者は英国人で、本名であるイーディス・パージター名義での歴史小説も書いており、また、チェコ語の翻訳家としても著名らしい。

主人公であるカドフェル修道士は、若き日には十字軍に参加するなど、波乱に満ちた人生を送ったが、その後、引退生活として修道士の道を選んだ人物。薬草を育てる穏やかな生活に満足している。

物語は謎解きよりもストーリー重視。最後は自白頼みだし、結局は決定的な証拠は握れない。被害者に矢が刺さってしたことや、その周囲に不自然な乾燥状態が見られることは、まったくストーリー的な部分であって、それが犯人に結びつきはしない。

ミステリの軸となっているのは、ある人物に弱みを作り、それが勝手にアリバイを作ってくれるトリックに関する部分だろうか。

ストーリーテリングはさすがというもので、立場の異なる登場人物が、皆(ある意味、犯人も含めて)それぞれの幸福を得る結末も心地良い。