らふりぃの読書な雑記-48
奇妙な屋敷での殺人事件。トリックゲーム。(U^ω^)わんわんお! [???]

速水恭三:警視庁捜査一課警部補
速水慎二:その弟
速水一郎(いちお):その妹
木下:恭三の部下

[8の字屋敷の住人]
蜂須賀菊雄:蜂須賀建設社長
蜂須賀民子:菊雄の妻
蜂須賀菊一郎:その長男, 蜂須賀建設副社長
蜂須賀節子:菊一郎の妻
蜂須賀雪絵:その娘
蜂須賀菊二:菊雄の次男
矢野孝夫:蜂須賀家の雇人
矢野良枝:同, 孝夫の妻
矢野雄作:その息子
佐伯和男:菊一郎の秘書
河村美津子:手話の教師



その中央には渡り廊下、上から見るとまるでデジタル時計の「8」のようなデザインの「8の字屋敷」。その奇妙な屋敷ならではのトリックを用いた殺人計画を遂行することに、その人物はもはや義務感すら感じていた。

午前1時頃。寝付けぬ雪絵の部屋を訪れてい河村た美津子が、何か物音を聞いたと、窓のカーテンを開けた。こんな時刻にどうしたのか、渡り廊下に雪絵の父・菊一郎が立っていた。そして、その向こうの部屋の窓が開いており、そこに人影があった。そこは矢野雄作の部屋のはずだ。今日はみんな眠れないみたい…と、美津子が言いかけたとき、向こうの部屋の中の人影が左肩に何かを構えた。次の瞬間、強い衝撃を受けたように菊一郎の体が跳ね飛ばされ、倒れるのを、雪絵と美津子は目撃した。小刻みに痙攣を続ける菊一郎の胸には、金属製らしき細長い物が突き立っていた。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



我孫子武丸のデビュー作。本格志向ながらも、ギャグマンガレベルの扱いされる登場人物が居たりもする、ユーモア・ミステリ。犯人は動機や目的なんてのは何それと言わんばかりの人物だが、その異常性が重さには結びつかず、そこに強い感情など描かれない。その潔いゲーム性もまた、読感の軽さに拍車を掛ける。

作中ではディクスン・カーや、他の作家が用いたトリックにも多数触れているほか、かの有名な「密室講座」まで用いたプレゼンテーションも展開される。まさしくマニアがマニア向けに書いたようではあるが、それが内輪受けにはならず、ミステリ初心者でも充分楽しめるものになっている。

第一の殺人では、東西に伸びる渡り廊下の中央付近に置かれた死体がわずかに引きずられ、移動した跡がある。なぜ犯人は、死体を東寄りから西寄りに動かしたのか?

いかにもゲーム的なトリックで、もしこれを現実に用いるなら、難点もあろう。被害者がその工作に不審を抱かないか。用いた道具は大きすぎても小さすぎても駄目だが、よくもそんなに都合良くサイズがピッタリだったか。犯人は事前にテストもできないから、飛散する血の行方も気になろう。

第二の殺人は、閉じられた室内で、ボウガンの矢が死体を貫通し、出入り口の扉に固定していた。窓は開いている。しかしもし犯人が渡り廊下から狙撃したなら、その姿を刑事に目撃されているはず。被害者が狙撃されたと思しき悲鳴の直後に刑事は現場に駆けつけており、殺害後に犯人が手の込んだ工作をする時間はなかった。

犯人にとっても予想外の事態で生まれた不可思議状況。窓の外に浮くボウガンというのは偶然が生み出したもので、それ自体には大した意味はない。というか、結果としてそれを生み出してしまった犯人の行動は、そもそも元から無理っぽい。こちらは緊急事態による犯行なので、計画があってなきものなのも仕方ないが、そもそもこれが想定外というのは、こんなに凝り性な犯人にしては、元々の計画が浅すぎだろう。