レスター警部シリーズ。主人公は“ミス・マープル”の甥という設定。旧家の秘密に関わる事件。ちょっとブラック。[??]

ジェーン・デュポン:イギリス婦人
シケモク男:メリーゴーランドの管理人
トマス・ソントロープ:シケモク男の旧友のオランダ人
アンリ・ド・マルシニー伯爵:マルシニー城の当主
シャルル・ド・マルシニー伯爵:アンリの息子
ド・マルシニー夫人:シャルルの妻
バベット:シャルルの娘
ベルトラン・ド・シャンブラン:シャルルの従弟
クロード・セヴラック:マルシニー家の主治医
ヴェリエ神父:同聴罪司祭
エミール:同召使い
クロチルド・バラス:歴史学者
エムリー:城の元女中
ロベール・レスター主任警部:ジェーン・マープルの甥
フールネル警視レスターの上司
リュカ警部:レスターの同僚



高名なる名探偵・ミス・マープルの甥、レスター警部。いったい何が作用したのか、彼は衝動的に、3年分の負債を負ってまで、フェラーリを購入してしまう。彼は決して名運転手ではなく、カー・マニアでもなかったが、それでも充分な満足感を得ていた。そしてバカンスのシーズンが訪れると、彼は愛車に乗って手近な田舎へと行き、そこでのんびりと過ごすことにした。なぜなら彼の口座は空っぽだったから。

ランヴジョルという小さな町に到着したレスターは、ジェーン・デューポンという老婦人と知り合う。彼女にはどこか伯母・マープルを思わせるところがあったが、彼女もまた、あの懐かしのセント・メアリ・ミードを何度か訪れたことがあるという。

明け方のことだった。レスターは窓の外の聴き慣れた音で目を覚ました。事態に気づいた彼はベッドから飛び出し、バルコニーへと辿りついた。すると、ちょうどそこには彼の愛車が、彼が乗ってもいないのに発進し、去ろうとする光景が。不思議なことにどこかほっとしたような気分になり、彼はベッドへと戻り、すぐに眠り込んだ。

翌朝、レスターは、かつて彼の愛車だったフェラーリが崖から転落し、その運転者・トマス・ソントロープが死んだことを知らされた。事故ということだったが、彼がジェーンとともに現場を調べてみると、いくつか不審な点もあり、彼は自主的に捜査してみることになった。

ある日、レスターはまたもや死体と遭遇する。その死体の主は、トマスの旧友という男で、他人のシケモクを吸うと、その人物のことがわかると自称するシケモク男であった。シケモク男は、自分が所有するメリーゴーランドの象に頭を潰されていた。彼の両手首には、なぜか鈴がリボンのような物で結びつけてあった。

第一の死体の主・トマスには、かつてシャルル・マルシニー夫妻の娘・バベットを死に追いやった過去があった。つまり、事件はあるいはマルシニー伯爵家に関わっているようであり、レスターとジェーンはその城を訪問した。そこに暮らすのは、老齢のために今では屋根裏部屋にほとんど隠遁の身の当主・アンリ、その息子・シャルルとその妻、シャルルの従兄弟・ベルトラン・ド・シャンブラン、家の主治医・クロード・セブラック。そして、歴史学者・クロチルド・バラスが滞在していた。

シャルルも死んだ。ベッドの脇の壁から落ちたパステル画に頭蓋骨を砕かれて。なにぶん古い家である。たまたま壁が崩れても、決して不思議ではない。しかし、この短期間で三つめの死体であった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



典型的なフレンチ・ミステリだろうか。後味はあまり良くないし、レスターが頭を絞って捻り出した解決も、読者に対しては、あっさりと打ち砕かれたことが語られる。まあ、レスターの解決は「なんだこりゃ?」なんだけどw 純文学畑で既にその地位を確立していた作者には、「読者は手掛かりを元に推理~」などという意図は毛頭ないらしく、ミステリのパロディという見方もできる。物語は不条理でもあり、そんなところも、いかにもフレンチ。主人公・レスターがマープルの甥という設定も、特に意味があるようにも思えない。それはキャラデだけ利用し、その性格や世界観はまったく無視した同人誌に近いものだろうかw しかし設定借りるなら、もう少しくらいはそれを活かそうと思わないものか。そう言えば古くはルパン物に登場した、ホームズをパロったキャラの扱いはひどかったが、あれのほうがまだマシかも知れない。方向性はともかく、作者の原作への思いは感じられるw

まあ、結末の一部については序盤から予感はあった。死体から鈴を持ち去ったレスターが特にそれに触れずにいたときの反応なんてのも、駄目押しだった。

フレンチ・ミステリは、プロットや物語の運びは面白いのに、推理を楽しめない印象があるけど、これもそうだった。