<十字屋敷>での殺人。目撃者は人形。[???]
竹宮家の住居は、二階の中央に十字の廊下が走る構造で、東西南北それぞれの廊下の両側に部屋があり、奥にはバルコニーがある。上から見ると十字型になっており、通称「十字屋敷」と呼ばれていた。
南の廊下の西側には竹宮佳織の部屋があり、そこには佳織のほかに、父・宗彦の姿もあった。そのとき、悲劇は起きた。
(ここからはピエロの人形の視点)
その屋敷の中央には十字の廊下が走っていた。僕はその廊下の途中の棚の上に座らされていた。十字路の先、最南端のバルコニーの脇には扉が見える。
その扉が開いたのは、突然の叫び声の直後だった。若い女を両腕で抱き抱えた男が現れた。ふたりとも驚いたような顔をしている。次の瞬間、僕の目の前の階段から女が駆け上がってきた。僕を棚から叩き落すと、十字路に背を向け、そのままの勢いで廊下の端のバルコニーへと出ると、手すりによじ登り、その向こうへと消えた。
「頼子!」 「お母さん!」 扉の前の男女が叫びが聞こえた。
(ここまでがピエロの人形の視点)
北のバルコニーの下には竹宮頼子の死体があった。自殺として処理された。
頼子の死からしばらくして、悟浄真之介という人形師が竹宮家を訪れる。彼曰く、竹宮家にあるピエロの人形は彼の父の作ったもので、過去に何度もその持ち主とその周囲に悲劇を呼んでいるのだという。そんなわけで、それを買い戻したいという申し出だった。それを聞いた竹宮家の者たちは、悲劇を呼ぶ人形という話自体を必ずしも信じたわけではなかろうが、その人形をなんとなく薄気味悪く思っていたため、引き取ってもらうことには特に異存はないようだった。しかし元々それを購入した頼子亡き今、その夫である宗彦の意向を確認しないとなんとも返事できないということで、悟浄は翌日に宗彦と面会する約束をして、十字屋敷を出た。
ところがその面会は叶わなかった。宗彦と、その秘書・三田理恵子が死んだからである。理恵子が宗彦を殺し、その直後に自殺したと見えなくもなかったが、ふたりとも殺害されたという線のほうが有力だった。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
ピエロの人形は自力で動くことはできないが、知覚能力のようなものはあり、事件を淡々と眺めている。彼は偽らない。彼の言葉として書かれた部分はすべて事実である。そういう設定で物語は綴られる。
人形の設定はオカルトじみているが、作品はフェアプレイの本格推理物。人形は事実を語っているが、当然そこには読者をミスリードする仕掛けが施されている。この趣向は面白かったけど、この設定にはまださらにいろいろな可能性がありそうな気がする。シリーズ化してほしかった。
宗彦と理恵子の殺害についてはあんまり高く評価できないかな。偶然の事情でそれに関わった者のせいで、強引に話がゴチャゴチャになってる印象。
それに対して、頼子の死については綺麗にまとまってる。教科書的なトリックが用いられ、ピエロ人形の扱いも素晴らしい。
心情を覆い隠し、張り巡らせた糸を引いていた某人物の、時折漏れ出す憎しみの強さ。自信なのか、つい隙を見せたのか、あるいはその両方が絡み合ったかのような挑戦的な台詞。真相を知った上で改めて読めば、その言動に込められいていた重さに気付かされる。
二重解決が美しい上に、哀しみの中にしか救いがなかったエンディングもまた美しい。
竹宮家の住居は、二階の中央に十字の廊下が走る構造で、東西南北それぞれの廊下の両側に部屋があり、奥にはバルコニーがある。上から見ると十字型になっており、通称「十字屋敷」と呼ばれていた。
南の廊下の西側には竹宮佳織の部屋があり、そこには佳織のほかに、父・宗彦の姿もあった。そのとき、悲劇は起きた。
(ここからはピエロの人形の視点)
その屋敷の中央には十字の廊下が走っていた。僕はその廊下の途中の棚の上に座らされていた。十字路の先、最南端のバルコニーの脇には扉が見える。
その扉が開いたのは、突然の叫び声の直後だった。若い女を両腕で抱き抱えた男が現れた。ふたりとも驚いたような顔をしている。次の瞬間、僕の目の前の階段から女が駆け上がってきた。僕を棚から叩き落すと、十字路に背を向け、そのままの勢いで廊下の端のバルコニーへと出ると、手すりによじ登り、その向こうへと消えた。
「頼子!」 「お母さん!」 扉の前の男女が叫びが聞こえた。
(ここまでがピエロの人形の視点)
北のバルコニーの下には竹宮頼子の死体があった。自殺として処理された。
頼子の死からしばらくして、悟浄真之介という人形師が竹宮家を訪れる。彼曰く、竹宮家にあるピエロの人形は彼の父の作ったもので、過去に何度もその持ち主とその周囲に悲劇を呼んでいるのだという。そんなわけで、それを買い戻したいという申し出だった。それを聞いた竹宮家の者たちは、悲劇を呼ぶ人形という話自体を必ずしも信じたわけではなかろうが、その人形をなんとなく薄気味悪く思っていたため、引き取ってもらうことには特に異存はないようだった。しかし元々それを購入した頼子亡き今、その夫である宗彦の意向を確認しないとなんとも返事できないということで、悟浄は翌日に宗彦と面会する約束をして、十字屋敷を出た。
ところがその面会は叶わなかった。宗彦と、その秘書・三田理恵子が死んだからである。理恵子が宗彦を殺し、その直後に自殺したと見えなくもなかったが、ふたりとも殺害されたという線のほうが有力だった。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
ピエロの人形は自力で動くことはできないが、知覚能力のようなものはあり、事件を淡々と眺めている。彼は偽らない。彼の言葉として書かれた部分はすべて事実である。そういう設定で物語は綴られる。
人形の設定はオカルトじみているが、作品はフェアプレイの本格推理物。人形は事実を語っているが、当然そこには読者をミスリードする仕掛けが施されている。この趣向は面白かったけど、この設定にはまださらにいろいろな可能性がありそうな気がする。シリーズ化してほしかった。
宗彦と理恵子の殺害についてはあんまり高く評価できないかな。偶然の事情でそれに関わった者のせいで、強引に話がゴチャゴチャになってる印象。
それに対して、頼子の死については綺麗にまとまってる。教科書的なトリックが用いられ、ピエロ人形の扱いも素晴らしい。
心情を覆い隠し、張り巡らせた糸を引いていた某人物の、時折漏れ出す憎しみの強さ。自信なのか、つい隙を見せたのか、あるいはその両方が絡み合ったかのような挑戦的な台詞。真相を知った上で改めて読めば、その言動に込められいていた重さに気付かされる。
二重解決が美しい上に、哀しみの中にしか救いがなかったエンディングもまた美しい。