クリッブ巡査部長シリーズ。死刑執行を待つ女。(「・ω・)「にゃおー [??]

クリップ:スコットランド・ヤード犯罪捜査部部長刑事
ジャウィット:同主任警部
ハワード・クロウマー:写真師
ミリアム:ハワードの妻
ジョーサイア・パーシヴァル:ハワードの助手
サイモン・アリンガム:弁護士
ロティ・パイパー:女優
ウォータロー:キュー地区担当警部
ベル:女看守
ホウキンズ:同
ジェイムズ・ベリー絞首刑執行人



写真館にて、助手・パーシヴァルが毒殺された。彼は酒には目がなく、普段から隙を見ては勝手にワインを取り出し、飲んでおり、それは館主・ハワード・クロウマーも半ば黙認状態だった。当日もパーシヴァルはハワードの留守を預かったことをいいことに、いつものようにワインを飲んでおり、そのグラスに毒が入っていた。自殺とも判断出来る状況だったが、ハワードの妻・ミリアムがパーシヴァルから恐喝されていたことなども判明し、追いつめられた末に、自殺に偽装した殺人を決行したものとして、彼女は死刑判決を受けた。彼女は己の罪状を認め、静かに死刑判決も受け入れたようだった。

しかし、刑の執行を目前に控え、匿名の人物から一枚の写真が内務大臣に届けられ、事態は急変する。その写真は、ある雑誌からの切り抜きで、犯行当日に遠方にて会議に出席していたハワードを写したものなのだが、写真館の毒物棚の鍵が付いた時計を身に付けていることがはっきりと確認できた。

さて、パーシヴァルの死の直後、ミリアムの立ち会いの下で、パーシヴァルの命を奪ったと思しき毒物が収められた棚を開けることになったのだが、鍵はハワードとパーシヴァルが身に付けている二点しかない。そしてミリアムは鍵を持っていなかったので、死んだパーシヴァルのポケットから鍵束を取り出し、棚を開けた。ここで問題となるのが、ミリアムがどのように鍵を入手し、パーシヴァルのグラスに毒を入れたのかということである。

仮に棚の中のワインボトルやデカンターに毒が入れられていたならば、そこに入れる機会も事前にあったものと思われるが、毒が入っていたのはグラスであり、助手が飲む直前に入れられたものであろうと断定された。しかし、ハワードの鍵が手元にないとなると、当然パーシヴァルの鍵を使ったことになるわけで、恐喝者たるパーシヴァルが、被恐喝者たるミリアムに毒物の鍵を無邪気に渡し、そしてその後にワインを飲むとは考えづらい。冤罪の可能性が浮上したのである。

以上のことが検討された結果、警察内部の様々な政治的要因により、クリッブ部長刑事に内密の再捜査が要請されることとなった。しかし、ミリアムの処刑はもう目前。タイムリミットが迫っていた。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



あとがきで、瀬戸川猛資はこう書いている。「なんだ、トリックや意外性が大したことないのか、それじゃあミステリとしてつまらんじゃあないかと考える人には、おそらく、いつまでたっても現代英米ミステリの魅力はわかってもらえないだろう」「ゲームから小説へ。簡略にいえば、これがここ数十年の英米ミステリの流れである」

言わんとしてることは理解はできるのだが、トリックや意外性を軽視した作品は僕の好みではない。なのだけど、本作は悪くはないですw まあ、実際本作のトリックや謎解きは大したことない。毒物の特定は甘いし、最後の展開はご都合主義、意味ありげに振る舞う死刑執行人・ジェイムズ・ベリーや、彼とミリアムが気にしている彼女の着衣は結局、事件には何の関係もないし。(結果的にベリーは、本人が与り知らぬままに事件解決に役立つことになるけど) 作者が元ネタにしたかどうかは不明だが、モロに超有名作家の最初期作品のネタが使われてるし。読み始めた最初からそれはちらついてたけど、まさかそのままとは、逆の意味で驚いたw ミリアムは既に死刑執行を待つ身ということで、切迫度はそれよりも高くなってるけど、彼女自身はまったくそれを意に介した様子を見せないし、白馬の王子様がそれを必死に回避しようとしている物語でもなく、サスペンスはあまり感じない。

ここ数十年の流れ、現代英米ミステリと言われても、本作はヴィクトリア時代を舞台にしてるということを差し引いても、現代的というよりは、むしろクラシカルな印象を受ける。それこそが現代英米ミステリだと言われたらそれまでだけどw