法月綸太郎シリーズ。生き別れの三兄弟。密室から消えた教祖。首なし死体。[???]

甲斐辰朗:三人兄弟の一人
安倍誓生:三人兄弟の一人
安倍兼等:三人兄弟の一人
甲斐留美子:甲斐辰朗の妻
斎門亨:留美子の兄, 教団理事
坂東憲司:教団理事
江木和秀:弁護士
大島佐知子:教団職員
大島源一郎:その息子
山岸裕実:甲斐辰朗の秘書
李清邦:裕実の元情人
セレニータ・ドゥアノ:フィリピン人女性
田村英里也:東都医科大耳鼻咽喉科教授
メンター:“祈りの村”の指導者
リエ:“祈りの村”の女
法月警視:警視庁捜査一課
久能警部:警視庁捜査一課
法月輪太郎:脆弁家



甲斐祐作とその妻との間に、辰郎に続く、双子が誕生した。しかし、元々体が弱かった妻は、双子の出産の負担から体調を崩し、そのまま亡くなった。その双子こそが最愛の妻を失った原因であるとして、祐作は彼らを殺したいとさえ思った。しかし、祐作は決して赤子に怒りをぶつけるような人物ではなかった。さりとて、双子への憎悪は増すばかり。祐作は苦悶の日々を送った末に、双子を安倍誠という大学教授に養子に出すことを決断した。双子には、実父の正体を明かさぬことという条件は、祐作と安倍夫妻の双方にとって適切と思われた。

安倍家では双子は歓待されたが、双子の新たな母が交通事故で亡くなったことをきっかけに、父の態度に変化が表れ始めた。男独りでは、双子の両方に平等に接することが難しくなり、結果として、外見こそ瓜二つな双子は、それ以外はすべて正反対であるかのように、兄・誓生は素直で知的な性格となり、弟・兼等は反抗的なニヒリストとなった。兼等が大学に入り、独り暮らしを始めるようになると、次第に双子は疎遠になっていった。

汎エーテル教団という新興宗教団体がある。教祖の甲斐辰郎に対しては、死を予告するような脅迫状が送られており、法月綸太郎はそれを調査していた。

教祖はいつものように塔に籠り、三日間の瞑想に入った。瞑想室は塔の最上部にあり、出入り口は固く閉ざされており、脅迫者が侵入するのは不可能と思われた。

そんな最中に、とあるマンションの一室にて、首を持ち去られた死体が発見される。その事件を知った法月は、首なし死体の主は教祖であると推察し、瞑想室の中を確認してみると、推察を裏付けるように、そこに籠っているはずの教祖の姿はなかった。実は塔には秘密の脱出路があり、教祖は瞑想と称した三日間を、教団外での二重生活に利用していたのだった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



登場人物に双子、さらに首なし死体と来れば、やはりアレを用いた作品なのだが、もちろん、ヒネリを効かせている。最初から、アレについての仮説をある程度は漠然と立てつつ読み進めたが、本作は作者本人が語るとおりの、あからさまにコリン・デクスターの著作を思わせる、二転三転の推理物語なので、それを追いつつ、「えーと、AがBと思いきや、実はAはC。いや、違うか。BがCで…」などと組み合わせを考えるのも疲れるw

兼等についての証言の一部に対する説明は、まるで読者を惑わすためだけの辻褄合わせのようで、納得しがたい。作中でも実際それが仇となったが、犯人にとっては有利よりも不利が大きいのは自明と思える。それに限らず、単に読者に対してのみ機能する、犯人にとっては、理由が弱い偽装工作が多すぎるのでは。

双子、首なし死体、新興宗教のカリスマ教祖、密室からの消失(これはまったくのオマケ程度だが)、二重生活、山中で独自の生活を営む集団、二転三転する推理と、サービス精神満点で、これは一種のパロディ的な作品と見做すこともできる。「枢機卿」という渾名の李清邦についても、もっと別の構想もあったのではと睨んでいるw