法月綸太郎シリーズ。雪の密室殺人。[???]
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
招待され、訪れた山荘にて、法月警視はなかなか寝付けなかった。窓の外を流れる水の音が、やけに気に触る夜だった。なぜそうしたのかわからないが、警視は自室を出て、この山荘のオーナー・沢渡冬規の部屋の扉をノックしていた。
突然の訪問にとまどう沢渡だったが、寝付けないという警視を招き入れ、ココアを出してくれた。音楽を聴き、沢渡と会話するうちに、警視はとてもリラックスしつつある自分を感じていた。では、そろそろ…と、部屋を出る警視に沢渡は、もし水音がまだ気になるようなら、これを使ってくださいと、耳栓まで渡す心配りを示したのであった。自室に戻った警視は、先ほどとは違い、すぐに眠りに落ちることができた。窓の外では、雪が降り出していた。
警視は体を揺すられていることに気づいた。暗い室内で意識が朦朧とする中、耳栓を外し、廊下の灯りが差し込むほうに目をやり、自分を揺する相手に誰だと問えば、沢渡の弟の恭平だと返事がした。未だ覚醒しきらず、ベッドに横になったまま、いったい何があったのかと相手に尋ねれば、離家の電話のベルがずっと鳴っているという。離家には独り、篠塚真棹が居るはずだった。「彼女は心臓が少々弱っているし、心配だから様子を見てきます。一緒に来てください」と、部屋を飛び出す彼を追いかけようと、警視は急いでベッドから下り、コートを羽織った。部屋を出るときには、意識は既にはっきりしていた。
警視は部屋を出て、山荘の玄関を抜けた。既に雪は止んでおり、離家へと続く一組の足跡の先に恭平が居た。「鍵が掛かっています!」と、彼は警視に向かって叫んだ。警視はすぐにロビーから合鍵を持ち出すと、身に着いた職業的な習性からか、既にある足跡を消さないように注意しつつ、離家へと急いだ。
鍵を開け、離家へ入る。中では今も電話のベルが鳴っていた。寝室へと入る。真棹は天井からぶら下がり、既に絶命していた。ベルが鳴り続ける電話の受話器を取り、耳に当てると、相手はもう切っていた。
離家には、被害者のほかには警視と恭平しか居ない。後に判明する死亡推定時刻からして、もし被害者の死亡後にこの離家から立ち去った人物が居るならば、雪の上に別の足跡があるはずである。であるからして、真棹の死は自殺として処理されることとなったが、警視は断固として、これを他殺と見做した。真棹は悪質な強請り屋であり、警視自身以外の招待客は皆、彼女をこの世から排除したい理由を持っていると、彼にはわかっていた。
作品の冒頭にある、「白い僧院はいかに改装されたか?」という言葉どおりの、カーター・ディクスン作「白い僧院の殺人」を彷彿させる、雪の密室殺人を扱った作品。作中では、そちらのトリックについても触れられている。
離家の鍵については、合鍵を持ち出すのは、誰にとっても不可能というわけではないので、雪の密室の謎は、ほぼ足跡の問題のみに絞られる。
警察が即座に自殺と予断せず、すぐに足跡の精密な調査さえしていれば、こんなトリックに気づいたはず…と、解決編で語られるが、これは作者の言い訳のように思えなくもないw もしそうしたら、このトリックを使えないからね。警察がロクに調べないほうに賭けた犯人は、ずいぶんと危ない博打を打ったものだ。練りに練った計画ではなく、突発的に作り上げたものだから、それは仕方ないんだけどね。
共犯者というものの扱いは難しいんだよねぇ。数を増やせば増やすほどに、アリバイ等の偽装工作はどんどん複雑にできるけど、大抵の場合は、それに比例するかのように、読後の満足感は薄くなる気がする。共犯者があればこそのトリックが素晴らしい場合もあるけどね。まあ、個人的には、なるべく単独犯が望ましい。
アンフェアの謗りを免れようと、作者は記述に気を配ってるけど、なんとなく納得しきれないところがある。それは警視が眠りから覚める場面。果たして、警視がまったく気づかないものかと、読者の大半が思うんじゃないだろうか。
解決編は少々雑かなぁ。まるで、2時間サスペンス・ドラマだw その後にもう一つ物語は展開するから、尻すぼみってわけじゃないけど。
その、最後の展開だけど、第一部の前の「引き裂かれたエピローグ パート1」の時点で、そこ込められた作者の意図の大枠は読み取ってしまい、そして第二部の回想場面で、それについてのおおよそは推察してしまったので、衝撃度は薄れてしまった。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
招待され、訪れた山荘にて、法月警視はなかなか寝付けなかった。窓の外を流れる水の音が、やけに気に触る夜だった。なぜそうしたのかわからないが、警視は自室を出て、この山荘のオーナー・沢渡冬規の部屋の扉をノックしていた。
突然の訪問にとまどう沢渡だったが、寝付けないという警視を招き入れ、ココアを出してくれた。音楽を聴き、沢渡と会話するうちに、警視はとてもリラックスしつつある自分を感じていた。では、そろそろ…と、部屋を出る警視に沢渡は、もし水音がまだ気になるようなら、これを使ってくださいと、耳栓まで渡す心配りを示したのであった。自室に戻った警視は、先ほどとは違い、すぐに眠りに落ちることができた。窓の外では、雪が降り出していた。
警視は体を揺すられていることに気づいた。暗い室内で意識が朦朧とする中、耳栓を外し、廊下の灯りが差し込むほうに目をやり、自分を揺する相手に誰だと問えば、沢渡の弟の恭平だと返事がした。未だ覚醒しきらず、ベッドに横になったまま、いったい何があったのかと相手に尋ねれば、離家の電話のベルがずっと鳴っているという。離家には独り、篠塚真棹が居るはずだった。「彼女は心臓が少々弱っているし、心配だから様子を見てきます。一緒に来てください」と、部屋を飛び出す彼を追いかけようと、警視は急いでベッドから下り、コートを羽織った。部屋を出るときには、意識は既にはっきりしていた。
警視は部屋を出て、山荘の玄関を抜けた。既に雪は止んでおり、離家へと続く一組の足跡の先に恭平が居た。「鍵が掛かっています!」と、彼は警視に向かって叫んだ。警視はすぐにロビーから合鍵を持ち出すと、身に着いた職業的な習性からか、既にある足跡を消さないように注意しつつ、離家へと急いだ。
鍵を開け、離家へ入る。中では今も電話のベルが鳴っていた。寝室へと入る。真棹は天井からぶら下がり、既に絶命していた。ベルが鳴り続ける電話の受話器を取り、耳に当てると、相手はもう切っていた。
離家には、被害者のほかには警視と恭平しか居ない。後に判明する死亡推定時刻からして、もし被害者の死亡後にこの離家から立ち去った人物が居るならば、雪の上に別の足跡があるはずである。であるからして、真棹の死は自殺として処理されることとなったが、警視は断固として、これを他殺と見做した。真棹は悪質な強請り屋であり、警視自身以外の招待客は皆、彼女をこの世から排除したい理由を持っていると、彼にはわかっていた。
作品の冒頭にある、「白い僧院はいかに改装されたか?」という言葉どおりの、カーター・ディクスン作「白い僧院の殺人」を彷彿させる、雪の密室殺人を扱った作品。作中では、そちらのトリックについても触れられている。
離家の鍵については、合鍵を持ち出すのは、誰にとっても不可能というわけではないので、雪の密室の謎は、ほぼ足跡の問題のみに絞られる。
警察が即座に自殺と予断せず、すぐに足跡の精密な調査さえしていれば、こんなトリックに気づいたはず…と、解決編で語られるが、これは作者の言い訳のように思えなくもないw もしそうしたら、このトリックを使えないからね。警察がロクに調べないほうに賭けた犯人は、ずいぶんと危ない博打を打ったものだ。練りに練った計画ではなく、突発的に作り上げたものだから、それは仕方ないんだけどね。
共犯者というものの扱いは難しいんだよねぇ。数を増やせば増やすほどに、アリバイ等の偽装工作はどんどん複雑にできるけど、大抵の場合は、それに比例するかのように、読後の満足感は薄くなる気がする。共犯者があればこそのトリックが素晴らしい場合もあるけどね。まあ、個人的には、なるべく単独犯が望ましい。
アンフェアの謗りを免れようと、作者は記述に気を配ってるけど、なんとなく納得しきれないところがある。それは警視が眠りから覚める場面。果たして、警視がまったく気づかないものかと、読者の大半が思うんじゃないだろうか。
解決編は少々雑かなぁ。まるで、2時間サスペンス・ドラマだw その後にもう一つ物語は展開するから、尻すぼみってわけじゃないけど。
その、最後の展開だけど、第一部の前の「引き裂かれたエピローグ パート1」の時点で、そこ込められた作者の意図の大枠は読み取ってしまい、そして第二部の回想場面で、それについてのおおよそは推察してしまったので、衝撃度は薄れてしまった。