金田一耕助シリーズ。落ち武者の伝説の残る村での連続殺人。[??]
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
黄金を奪い取ろうと、8名の落ち武者を殺害したものの、祟りを恐れ、八つの墓を立てて奉ったことに由来する、八つ墓村。時代は下り、大正の世に惨劇は起きた。落ち武者たちへの襲撃の首謀者の子孫、田治見要蔵が一夜にして32名もの村人を惨殺したのだ。そして翌朝、要蔵は姿を消し、その行方は杳として知れず、四半世紀が過ぎた。
神戸に暮らす寺田辰弥は、辰弥の母方の祖父だという井川丑松と引き合わされ、自分が田治見という家の一族であると知らされる。田治見家の嫡男たる久弥と、その妹の春代は病弱で、子が望めず、それでは血筋が絶えてしまうということで、その弟である辰弥を呼び戻したいという。初めて会う祖父と何を話したらいいのかと戸惑いつつも、言葉を掛けた次の瞬間、急に丑松が苦しみ始める。水を飲ませる間もなく、丑松は絶命した。毒殺だった。
疑惑の目は向けられたものの、一応のところは嫌疑は晴らされた辰弥は、数日前までは名前すら知らなかった、八つ墓村へと向かう。
辰弥は村に到着した途端、濃茶の尼なる人物から、八つ墓明神が云々、お前は村に来るな、と罵倒される。それは村に来る前に届いた、謎の手紙に書かれていた内容と似ていた。
田治見家に到着すると、なるほど兄・久弥は明日をも知れぬ体だった。久弥と、その大伯母の小竹・小梅姉妹は、要蔵の弟・修二の家系である里村慎太郎にはなぜかどうしても田治見家を継がせたくないらしく、それもあって辰弥は歓迎されているようだった。しかし何かの含みを持たせたような笑顔を見せていた久弥は咳き込みだす。薬を飲ませてみたものの、それは治まるどころか激しくなるばかり。そして吐血し、動かなくなった。
その場に立ち会っていた医師・久野恒実は形ばかりの治療を行ったが、既に絶命していることは明らかだった。「興奮のしすぎで死期を早めたのですね」と語る彼の言葉は、不思議なほどに周囲の者に自然に受け入れられた。しかし、そう告げた久野の声は、かすかに震え、狼狽したように、辰弥の視線から顔を背けた。
そして金田一耕助というひとが村へとやって来た。いったいどういう人物なのか不明ながら、どうも警察関係者らしい。久弥の死は再調査され、それは毒殺と判明する。その後も続く、連続殺人事件のひとつだった。
不気味な由来を持ち、狂気の惨劇の記憶を残す村。その村の由緒正しき名家に病弱な兄と妹と、その大伯母である双子。屋敷の地下から繋がる、大迷宮の鍾乳洞。落ち武者の呪いなのか、次々と増える犠牲者たち。過剰なほどに古色蒼然たる設定が、僕にとっては素晴らしいw この世界観が徹底しているからこそ、ある意味ではロマンティックで、普通ならあまりにも非現実的として首を捻りそうな、この犯行の動機も受け入れられるのだろう。
名探偵・金田一耕助は、最後に本人もそう述べたとおり、いまいち活躍してない。事件解決に金田一の推理はほとんど貢献しておらず、添え物程度の扱いなのは不満ではあるのだが、とにかくこの物語は面白い。犯人を特定する決定的な証拠があまりにも直接的で、推理小説的とは言い難い点などからして、辰弥を主人公とした、冒険小説と捉えたほうが妥当なのかも知れないが、伏線の張り方はかなりフェアであり、ミステリとしても面白い。再読してみれば、犯人の言動や反応には、なるほどそんな意味があったのかと、改めて気づく部分も多いだろう。
犠牲者リストとも言える謎のメモは、もっと村の伝説との繋がりをはっきりと感じさせるように、8名の犠牲者が出ると読者に意識させるようにして、明確に童謡殺人として見せたほうが良かったのでは。そのメモの基となった日記についてだが、本作発表年からすると、おそらくエラリー・クイーンの「Yの悲劇」は念頭にはあっただろう。
麻呂尾寺の英泉については、やや筆が強引か。
作中に登場する、謎の地図を読者も見られるようにしてあったら、もっと嬉しかったなw
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
黄金を奪い取ろうと、8名の落ち武者を殺害したものの、祟りを恐れ、八つの墓を立てて奉ったことに由来する、八つ墓村。時代は下り、大正の世に惨劇は起きた。落ち武者たちへの襲撃の首謀者の子孫、田治見要蔵が一夜にして32名もの村人を惨殺したのだ。そして翌朝、要蔵は姿を消し、その行方は杳として知れず、四半世紀が過ぎた。
神戸に暮らす寺田辰弥は、辰弥の母方の祖父だという井川丑松と引き合わされ、自分が田治見という家の一族であると知らされる。田治見家の嫡男たる久弥と、その妹の春代は病弱で、子が望めず、それでは血筋が絶えてしまうということで、その弟である辰弥を呼び戻したいという。初めて会う祖父と何を話したらいいのかと戸惑いつつも、言葉を掛けた次の瞬間、急に丑松が苦しみ始める。水を飲ませる間もなく、丑松は絶命した。毒殺だった。
疑惑の目は向けられたものの、一応のところは嫌疑は晴らされた辰弥は、数日前までは名前すら知らなかった、八つ墓村へと向かう。
辰弥は村に到着した途端、濃茶の尼なる人物から、八つ墓明神が云々、お前は村に来るな、と罵倒される。それは村に来る前に届いた、謎の手紙に書かれていた内容と似ていた。
田治見家に到着すると、なるほど兄・久弥は明日をも知れぬ体だった。久弥と、その大伯母の小竹・小梅姉妹は、要蔵の弟・修二の家系である里村慎太郎にはなぜかどうしても田治見家を継がせたくないらしく、それもあって辰弥は歓迎されているようだった。しかし何かの含みを持たせたような笑顔を見せていた久弥は咳き込みだす。薬を飲ませてみたものの、それは治まるどころか激しくなるばかり。そして吐血し、動かなくなった。
その場に立ち会っていた医師・久野恒実は形ばかりの治療を行ったが、既に絶命していることは明らかだった。「興奮のしすぎで死期を早めたのですね」と語る彼の言葉は、不思議なほどに周囲の者に自然に受け入れられた。しかし、そう告げた久野の声は、かすかに震え、狼狽したように、辰弥の視線から顔を背けた。
そして金田一耕助というひとが村へとやって来た。いったいどういう人物なのか不明ながら、どうも警察関係者らしい。久弥の死は再調査され、それは毒殺と判明する。その後も続く、連続殺人事件のひとつだった。
不気味な由来を持ち、狂気の惨劇の記憶を残す村。その村の由緒正しき名家に病弱な兄と妹と、その大伯母である双子。屋敷の地下から繋がる、大迷宮の鍾乳洞。落ち武者の呪いなのか、次々と増える犠牲者たち。過剰なほどに古色蒼然たる設定が、僕にとっては素晴らしいw この世界観が徹底しているからこそ、ある意味ではロマンティックで、普通ならあまりにも非現実的として首を捻りそうな、この犯行の動機も受け入れられるのだろう。
名探偵・金田一耕助は、最後に本人もそう述べたとおり、いまいち活躍してない。事件解決に金田一の推理はほとんど貢献しておらず、添え物程度の扱いなのは不満ではあるのだが、とにかくこの物語は面白い。犯人を特定する決定的な証拠があまりにも直接的で、推理小説的とは言い難い点などからして、辰弥を主人公とした、冒険小説と捉えたほうが妥当なのかも知れないが、伏線の張り方はかなりフェアであり、ミステリとしても面白い。再読してみれば、犯人の言動や反応には、なるほどそんな意味があったのかと、改めて気づく部分も多いだろう。
犠牲者リストとも言える謎のメモは、もっと村の伝説との繋がりをはっきりと感じさせるように、8名の犠牲者が出ると読者に意識させるようにして、明確に童謡殺人として見せたほうが良かったのでは。そのメモの基となった日記についてだが、本作発表年からすると、おそらくエラリー・クイーンの「Yの悲劇」は念頭にはあっただろう。
麻呂尾寺の英泉については、やや筆が強引か。
作中に登場する、謎の地図を読者も見られるようにしてあったら、もっと嬉しかったなw