ホームズ譚のパロディー。シャーロック・ホームズと夏目漱石との邂逅。密室内で一夜にしてミイラに。(「・ω・)「にゃおー [??]
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
英国留学中の夏目漱石がシャーロック・ホームズと知り合っていたら…という設定の、ホームズ物のパロディ作品。
漱石はある問題に悩まされていた。下宿先に幽霊が出るのだ。しかも宿を変えても変えても付いてくる。困り果てた末、紹介されたホームズに相談すると、理由は不明ながら幽霊はピタリと現れなくなった。
そして後日、ロンドンで奇妙な事件が起こる。閉ざされた室内で火災が発生し、それはすぐに消し止められたのだが、部屋の中に居た、数時間前まではちゃんと生きて動いていた人物が、ミイラと化していたのだ。そのミイラの口の中に残された紙切れには、東洋の文字のような奇妙なものが書かれていた。そこで日本人である漱石がそれを見てみると、そこには「つね61」と読める文字らしきものがあった。
まず構成が面白い。奇数章は漱石による記述、偶数章はワトソンによる記述となっており、物語の推移が交互に異なる視点で描かれている。この趣向だけでも惹かれる。
ワトソンによる章はいかにもホームズ物原典を上手くシミュレートしており、これだけでもスタンダードな外典として充分成立するだろう。火災の密室から脱出するトリックはかなり強引だが、それも"らしい"と言えば"らしい"。模倣と呼ぶには、伏線や論理性はしっかりしすぎているがw
そしてそれ以上に漱石による奇数章が面白い。こちらはワトソンによる章と対比するように、ユーモアを強く感じさせるものになっており、ホームズは初対面の相手に見当外れな推理をして、それを正そうとすると殴りかかってきたり、悪の親玉としてモリアーティ教授なる架空の人物を妄想の中で作り上げている、かなりイカれた人物として描かれている。
これは単なるお遊びレベルを超えて、あるいはこちらのほうがホームズの実情(と言っても当然フィクションなのだが)だったのではないだろうかすら思わせる。ホームズとモリアーティとの対決を描いた「最後の事件」は、ワトソンがホームズの世間体を慮り、辻褄合わせに苦労しつつ書いたでっち上げであり、読者からは様々な矛盾点を指摘され、事実が露見しそうだとワトソンが愚痴る場面などは、ファンならずとも笑みがこぼれるだろう。
作者本人が書いているとおり、ホームズの高笑いのくだりはなるほど大した効果も上げておらず、付け足しの感は否めないが、それを差し引いてもオチに至るまで、まとまりの良い、完成度が高い作品。
ただし、謎の文字の解読自体はミステリを読み慣れた者にはあまりにも簡単であり、ならばと、それが事件を解く鍵になっているかと知恵を絞ってみれば、実は事件そのものには関わっておらず、解読以上に頭を悩ます必要はなかったと、最後にようやく判明する点は残念か。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
英国留学中の夏目漱石がシャーロック・ホームズと知り合っていたら…という設定の、ホームズ物のパロディ作品。
漱石はある問題に悩まされていた。下宿先に幽霊が出るのだ。しかも宿を変えても変えても付いてくる。困り果てた末、紹介されたホームズに相談すると、理由は不明ながら幽霊はピタリと現れなくなった。
そして後日、ロンドンで奇妙な事件が起こる。閉ざされた室内で火災が発生し、それはすぐに消し止められたのだが、部屋の中に居た、数時間前まではちゃんと生きて動いていた人物が、ミイラと化していたのだ。そのミイラの口の中に残された紙切れには、東洋の文字のような奇妙なものが書かれていた。そこで日本人である漱石がそれを見てみると、そこには「つね61」と読める文字らしきものがあった。
まず構成が面白い。奇数章は漱石による記述、偶数章はワトソンによる記述となっており、物語の推移が交互に異なる視点で描かれている。この趣向だけでも惹かれる。
ワトソンによる章はいかにもホームズ物原典を上手くシミュレートしており、これだけでもスタンダードな外典として充分成立するだろう。火災の密室から脱出するトリックはかなり強引だが、それも"らしい"と言えば"らしい"。模倣と呼ぶには、伏線や論理性はしっかりしすぎているがw
そしてそれ以上に漱石による奇数章が面白い。こちらはワトソンによる章と対比するように、ユーモアを強く感じさせるものになっており、ホームズは初対面の相手に見当外れな推理をして、それを正そうとすると殴りかかってきたり、悪の親玉としてモリアーティ教授なる架空の人物を妄想の中で作り上げている、かなりイカれた人物として描かれている。
これは単なるお遊びレベルを超えて、あるいはこちらのほうがホームズの実情(と言っても当然フィクションなのだが)だったのではないだろうかすら思わせる。ホームズとモリアーティとの対決を描いた「最後の事件」は、ワトソンがホームズの世間体を慮り、辻褄合わせに苦労しつつ書いたでっち上げであり、読者からは様々な矛盾点を指摘され、事実が露見しそうだとワトソンが愚痴る場面などは、ファンならずとも笑みがこぼれるだろう。
作者本人が書いているとおり、ホームズの高笑いのくだりはなるほど大した効果も上げておらず、付け足しの感は否めないが、それを差し引いてもオチに至るまで、まとまりの良い、完成度が高い作品。
ただし、謎の文字の解読自体はミステリを読み慣れた者にはあまりにも簡単であり、ならばと、それが事件を解く鍵になっているかと知恵を絞ってみれば、実は事件そのものには関わっておらず、解読以上に頭を悩ます必要はなかったと、最後にようやく判明する点は残念か。