御手洗潔シリーズ。傾いて立つ屋敷での密室殺人。[???]

<流水館の住人>
浜本幸三郎:ハマー・ディーゼル会長, 流氷館主人
浜本英子:幸三郎の末娘
早川康平:住み込み運転手兼執事
早川千賀子:康平の妻, 家政婦
梶原春男:住み込みのコック

<招待客>
菊岡栄吉:キクオカ・ベアリング社長
相倉クミ:菊岡の秘書兼愛人
上田一哉:菊岡のおかかえ運転手
金井道男:キクオカ・ベアリング重役
金井初江:道男の妻
日下瞬:慈恵医大生
戸飼正樹:東大生
浜本嘉彦:慶応大学一年, 幸三郎の兄の孫

牛越佐武郎:札幌署の部長刑事
尾崎:同刑事
大熊:稚内署警部補
阿南:同巡査
御手洗潔:占星術師
石岡和巳:御手洗の友人

※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



実業家・浜本幸三郎によって建てられた、斜めに傾いて立つ奇妙な洋館でクリスマス・パーティーが催される。

館を訪れた者の中の一人・上田一哉が、ある朝に密室の中で刺殺されているのが発見される。前夜には不気味な顔が窓から覗き込み、男の叫びらしき声が聞かれていた。

捜査に乗り出した警察官たちを物ともせず、翌朝には密室で菊岡栄吉が第二の死体となっていた。捜査は暗礁に乗り上げ、応援にやってきたのは占い師の御手洗潔。しかしまたもや密室内で第三の事件が…。



アンフェアではないけど、こういう機械トリックはあんまり好みじゃない。いくら狭いベッドとは言え、それほど一緒に過ごしてるわけでもなく、おそらく寝姿など一度も見たことのない相手の急所に刺さる確率は割と低いのではないだろうか。絶対に失敗は許されず、必ず一撃で仕留めなきゃならないという状況において、この手段を選択したのは少々腑に落ちない。

第一の殺人の際、犯人は計画外の事態に陥る。そこで意図的に騒動を起こして、中の人物が部屋を空けた隙に、その部屋を通って皆の中に紛れるトリックを行なう。でもこのときの犯人の状態からして、室内に痕跡が残りそう。

上田殺害については、そもそも実行する必要があったのかすら疑問。解決編ではこれはさらっと流され、犯人にはむしろ同情的な雰囲気で終わるが、これってかなり後味悪い。犯人が自らの手で殺そうとしている菊岡を、上田も狙っていることを知っていたので、先を越されてはマズいから上田も殺してしまえという動機はかなり乱暴。この時点では、それほど切羽詰まった状況だったとも思えない。何せ上田は、菊岡を殺すだけなら、機会も能力もいくらでもあるし、殺して、かつ自分は処罰されないということを目論んでることは明白。殺すなら、容疑者の範囲が狭められる、こんな状況をわざわざ選ぶとも思えない。

ダイイング・メッセージも無理があるのでは。犯人の名を伝えるために、ジェスチャーに加え、血で床に印を付けているが、だったら素直に犯人の名前を書き残せばいいじゃない。犯人によって消されてしまうのを危惧してのことなら、はっきり書こうが、遠回しだろうが、この状況ではいずれにせよ同じだろう。

そもそも何のためにわざわざこんな密室殺人にしなきゃならないのか。「生涯唯一度の私の悪業を、誰かに鮮やかに見抜いて欲しかった」なんて説明では、とても納得できないよw

単に読者を混乱させる目的なのだろうが、第三の死体は余計なものに思えて、なんとなくがっかり。