※すべて反転表示。 ネタバレ注意。

オーガスト・ダーレスが生み出した名探偵ソーラー・ポンズが活躍する短編。 数あるシャーロック・ホームズのパロディ的な探偵譚のひとつ。 ホームズ譚「ソア橋の怪事件」の中で触れられた、「語られざる物語」にインスパイアされた作品のようだ。

フォン・ルーダ教授がファヴァシャム教授宅を訪れ、一緒に外出することになる。 そしてルーダは玄関でファヴァシャムを待つがなかなか出てこない。 そこで中に入ってみると既にファヴァシャムの姿はどこにもなかった…という怪事件。


真相は、大学のカネを持ち逃げしようと企てたファヴァシャムが、フォン・ルーダ教授という別人に成りすまし、二人の人物を使い分ける生活を数日間送っていたというもの。 元々家の中にはルーダ(ファヴァシャムによる成りすまし)一人しかおらず、玄関でちょっと小芝居した後にやって来た警官に状況を説明し、ファヴァシャムが消えたと錯覚させた。

だがそもそも、こんな作り話を誰が信じるというの。 ファヴァシャムが家の中に居たと証明するのはルーダの証言のみであり、どう考えてもルーダが嘘をついてると疑われるだけだろう。 それで辻褄合うんだし。 まずはおそらくルーダがファヴァシャム失踪に関わってることはもちろん、殺したとさえ疑われる可能性が高い。

「ファヴァシャムがカネを持ち逃げしたとなると一生追い回されるが、死んだということになれば、ルーダとなった自分はもう自由だー!」という目的のトリックらしいが、死体も発見されず、この状況でそんな結果になるはずがないし、仮に死んだと思われたら第一容疑者はルーダだろう。 こんな手口では、一旦目を付けられたらいつまでも誤魔化し切れるものじゃない。 そもそも別人に成りすましたまま安穏と残りの人生を過ごせるくらいなら、こんな手が込んだことをするよりは、特に何もせずに消えて成りすましたほうが遥かに簡単じゃない?