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日本航空 再建への道

日本航空 再建までの道のりを観察しながら、企業経営の気づきを書いていきます。

2010年4月17日
週刊ダイヤモンドに、
国交省“国際線撤退”案に楯突いた
JAL「更正計画」骨子の全容』
との緊急レポートが掲載された。

「国交省に楯突く」とは物騒な文言だが、
2010年3月31日にまとめたと言われる
「新再生計画」骨子が同記事にまとめられているので、
数回に分けて見ていく。

『会社更生法の適用申請から1ヶ月後の
2月22日、JAL管財人である企業再生機構の
中村彰利専務は、国交省幹部から
「国際線の再編案について」と題したペーパーを
受け取った。

それは、「事実上の国際線撤退勧告」(JAL幹部)だった。

①堅い見通しの下でも利益が見込める
(具体的には、本社経費負担分を除く、
すべての費用を差し引いた二次貢献利益が10%以上の)
路線に限定

②全日本空輸(ANA)との競合等により、
利益の上がりにくい路線からは撤退、

③アライアンスパートナー等の連携企業との路線展開上、
必要な路線は維持、

④わずかな路線しか残らない空港については全面撤退、

これら4つの基準が明記されていた。


これを2006~08年度の平均収益率に当てはめた場合、
現在運航中の57路線のうち36路線を廃止せざるをえない。

当然、路線廃止に伴う営業収入の減少は、
それ以上のコスト削減で賄わなければならない。

したがって、支援機構による事業再生計画で2700人と
されている特別早期退職者についても、
1万人を超える上積みが必要だとしている。

・・・

国交省案が提示されたとき、
JALはすでに経営企画部門を中心に、
支援機構や大口債権者である日本政策投資銀行の
管財人らが加わり、
再生計画の立案に着手していた。

なにしろ、更正計画案の東京地方裁判所への
提出期限は6月末、
更正計画の認可および更正手続き終了は
8月末に迫っている。
メガバンクなど債権者の合意を取り付ける
折衝期間を考えれば、
遅くとも2月末には骨子を固めたかった」(支援機構幹部)』



同記事の後半部分にも記載があるが、
更正計画提出は先送りにされる可能性が大きくなっている。

同記事には国際線撤退のJAL案と国交省案の比較が
掲載されているが、
素人目に見ると、国交省案の方が、
すっきりと分かり易い撤退計画に見えてくる。

成田からの国際便については、
主要都市以外からほぼ撤退。

特に台湾(台北、高雄)、グアム、シドニー
から撤退を行うことに関しては、
特段JALが飛ばなくなっても、困らない気がする。

これを見て「事実上の国際線撤退勧告」と捉えることが、
よく分からないが、この辺、どう考えればいいのだろう。

何はともあれ、
再建にあたって、
国交省も銀行団も日航の完全に味方となっていないことは確かだ。

日本航空は4月6日、
銀行団との交渉をまとめるために、
リストラを前倒しで実施することを発表した。

以下、日本経済新聞 2010年4月7日記事より



『会社更生手続き中の日本航空と
管財人の企業再生支援機構が
人員削減を大幅に前倒しするリストラ案を
まとめたことが6日、明らかになった。

グループ全体(約5万人)の3分の1にあたる
1万6452人の人員削減を2010年度末までに実施する。

当初は3年間で実施する予定だったが、6月末期限の
更正計画案をまとめるために
組織のスリム化を急ぐ必要があると判断した。

路線縮小と老朽機材の売却を並行して行い
早期の黒字化を目指すとして、
取引銀行団などの理解を得る考え。

削減する1万6452人の内訳は
貨物事業を含む間接部門5405人、
客室乗務員2460人、
営業2043人、
パイロット775人など。

関西国際空港、中部国際空港の発着路線の整理により、
両拠点の地上職は現行7割減の642人まで減らす。
年間817億円の人件費削減効果を見込む。

人員削減はできるだけ早期退職の募集の積み増しや
事業売却などで実施する予定。

現在2700人の早期退職を募集しているが、
6月ごろに第2弾、9月以降に第3弾を予定する。

計画に達しない場合は一時帰休やワークシェアリング
などを検討。
整理解雇に発展する可能性もある。

1月19日の会社更正法の適用申請時の案では
2012年度までの3年間で1万5700人を事業売却や
採用抑制、早期退職などで削減する計画だった。
しかし、毎日5億~10億円の営業赤字が発生する
状況が続いており、更正計画案をまとめるには大幅な
前倒し実施が必要と判断した。

10月以降に国際線16路線、国内線31路線からの撤退や
燃費効率の悪い老朽航空機の2010年度中の退役も
決めており、発生する余剰人員をすみやかに整理する考え。

労働組合の強い反発などが予想され、
予定通りに計画達成できるか現段階では不透明。
リストラの最終案になるかも微妙で、
銀行団などは実行性を勘案しながらリストラ案を評価し、
場合によっては修正を迫る考えだ。』


これから1年弱で3分の1の人間をリストラするとは、
かなりの荒療治である。

先日の客室乗務員組合からの反発を皮切りに、
今後、組合もそうそう黙ってはいないだろう。

また、ここまでのリストラを行うためには、
退職金等のリストラ費用も多額に計上する必要がある。

この費用負担が一体いくらになるのかは、
組合との合意もあるため
そう簡単には判明しないはず。

最悪、一旦清算して、別会社で再雇用するという選択肢も
発生しかねない勢いである。

まずは、9日発表の第一弾早期希望退職者募集状況が
どうなるかが第一関門となる。

客室乗務員組合が、
2010年4月6日、
大阪、福岡の乗務員室閉鎖について、
事実上の解雇にあたると、会見を行った。

2010年4月6日 毎日新聞記事
『日航 大阪、福岡の乗務員室閉鎖へ 組合「事実上の解雇」』

『会社更生手続き中の日本航空の客室乗務員組合
「日本航空キャビンクルーユニオン」が6日、
大阪府庁と福岡県庁で会見し、
会社側から大阪(伊丹)、福岡両空港の
客室乗務員室を6月末に閉鎖し、羽田と成田に集中すると
提案されたことを明らかにした。

大阪、福岡の客室乗務員は全員転居が必要で、
応じないと退職を余儀なくされるといい、
地方発の便の運航への影響が懸念される。

会見では「育児や介護を抱える客室乗務員はすぐに転勤できない。
事実上の整理解雇だ」と苦境を訴えた。

組合によると現在大阪に445人、福岡に62人の客室乗務員がおり、
2人を除きすべて女性。
今回は再建手続き中という事情もあり、
会社側は特別早期退職を募集。
締め切りは今月9日に迫っているが、
組合は「半数以上は転居が不可能」と批判した。

客室乗務員は到着した空港発の便に引き続き乗務することが多い。
閉鎖されると、羽田発の便が天候不良で欠航になった場合、
その先の地方空港発の便で乗務員が手配できず、
次々に欠航が出る可能性が高く、
利用者の信頼失墜につながるとも指摘した。

JALは「現在の4拠点体制で効率を向上させることは困難で、
雇用を守り、客室乗務員として引き続き活躍してもらうための
苦渋の決断。
9日の締め切りまで、職種に限らず理解を得られるよう
努力を続けていきたい」とし、
運航への影響については「コメントできない」としている。』

拠点閉鎖に伴う実質的な解雇とは、
他企業でもよくあること。
工場閉鎖による実質解雇や営業所閉鎖による実質解雇など
この時期よく耳にする話題である。


その際、法的基準となる整理解雇の4要件とは、
1.人員削減の必要性が存在すること
2.解雇を回避するための努力義務がつくされていること
3.解雇される者の選定基準が合理的であること
4.解雇手続きが妥当であること
となっている。


上記記事の場合、
法廷闘争になる可能性も否定できない。


一番微妙なのが、6月末の拠点閉鎖。


解雇努力義務の1つとして希望退職を募る場合、


希望退職の告知日から募集期間の終了日までに数ヶ月の期間をおき、
仮に1回目の希望退職で想定人数に達しなかった場合には
複数回、同様の希望退職を実施すること、


希望退職の退職条件の設定にあたっては、
使用者の財政状況とのバランスも考慮し、
ある程度魅力的な条件を設定すること


等が必要とされる。


6月末の拠点閉鎖、これに伴う希望退職募集は、
設定期間として、十分と見るか、そうでないと見るかは
意見が分かれるところだろう。


日本航空全体としては、
現在募集中の早期退職、
6月中に第2弾、
9月中に第3弾、
計画が達成しない場合には、
一時帰休はワークシェアリングを検討と、
いくつかの段階、期間、更なる施策の提示を行い
ほぼ万全の解雇努力義務を果たしているため、
こちらは、会社側の落ち度も少ないと考えられる。


これだけ注目される中、
組合がどのように動くか気になるところだ。


法廷闘争に持ち込まれれば、
このような案件に関する有力なケースの1つとなるだろう。

2010年4月6日 産経新聞記事
『日航、50路線廃止方針 地元知事は反発』
との記事が掲載されている。

予想通り、廃止路線に絡む地元知事は反発。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/manufacturer/376975/


『日本航空が国内外約50路線を
10月以降に廃止する検討に入ったのを受け、
国内対象路線の地元知事からは5日、
「寝耳に水」「社会的役割を果たして」などと
反発や戸惑いの声が相次いだ。

9路線の撤退が検討される名古屋(小牧)空港を
抱える神田真秋愛知県知事は
「寝耳に水だった」とショックを隠しきれない様子。

「地方空港への打撃は
地域経済に大きな影響を与える。
国も日航も先々を見据えて判断して欲しい」と
要請した。

他の対象路線の地元知事も
「経営建て直しもあるが、
航空会社としての社会的役割を果たすよう
お願いしたい」(村井嘉浩宮城県知事)

「できることは協力していきたい」(真鍋武紀香川県知事)
と継続を強く求めた。

佐竹敬久秋田県知事は、
全国的な路線廃止に
「1県の問題ではない」
と関係自治体の連携を訴えた。

今回、廃止候補に含まれなかった路線の地元からも
「黙っているといつ整理されるか分からない」
(仁坂吉伸和歌山県知事)との不安の声が漏れた。』



和歌山県知事の
「黙っているといつ整理されるか分からない」
とは、興味深い発言だ。

そもそも、黙っているといつ整理されるか分からない
路線があること事態が問題なのに、

それを
日航は困ったことをしてくれている
という意味合いで発言することが、
旧来の政治を見るようでなさけない。

従来の枠組みが失敗しているにも関わらず、
新しい枠組みを試行錯誤しながら作り上げていこうとする
気概が全く感じられないことに違和感を感じる。

勿論、知事なのだから、県民の利益が第一であるという
考えも分からなくはないが、
その部分最適を求める姿勢が、
産業をはじめとした全ての分野において、
日本を弱体化させていることを
そろそろ日本全体の共通認識として持つべきではないだろうか。

日航の件についても、
地方行政が見直される一つの契機になればと思い、
報道の続きを見ていく。

昨日報道された銀行団の要求に対し、
早速、日航は、計画の修正案を出してきた。

2010年4月3日 日本経済新聞記事より

『日航、更正計画作り難航も 国際16・国内31路線撤退案


会社更生手続き中の日本航空と管財人の企業再生支援機構は
10月以降に、国際線16路線、国内線31路線から撤退する
リストラ案をまとめた。

路線縮小に合わせて人員削減や老朽航空機の売却を進め、
早期の黒字化を目指す。

ただ、取引銀行団はもう一段の路線縮小を要求し、
逆に関連する自治体が撤回を求めるのは必至。

6月末期限の更正計画案作りは難航しそうだ。

新たに廃止を検討する国際線は
成田空港―ミラノ、関西国際空港―北京など。

国内線は伊丹―福岡の廃止や
北海道内の路線を運航する北海道エアシステム(札幌市)
を連結対象から外すことなどを検討する。

ただ、毎日5億~10億円の営業赤字が発生する現状に
銀行団の危機感は強い。

日航側に
(1)欧米路線から撤退、アジア路線に特化、
(2)中国内陸部やモスクワ、オセアニア路線の廃止
(3)ハワイなどの観光路線の分離・売却
(4)関西国際空港と中部国際空港からの撤退
などの検討を迫っている。

国際線は国家間交渉の側面があり調整に時間がかかる。
地方自治体からも
「路線維持を求める陳情が殺到するのは確実」(国土交通省幹部)。

日航自体も人員削減という問題を抱える。
現在はグループ人員(5万1800人)の3人に1人にあたる
1万5700人を事業売却や採用抑制、早期退職などで
削減する計画だが、新たな路線整理で
パイロットなど数千人の余剰人員が追加発生しそうだ。
人員削減を大幅に上積みする場合は
整理解雇などの措置も避けられないとみられ、
労働組合の反発が予想される。 』



6月末と言えば、残り3ヶ月。
労働組合との調整も含めて、かなり時間的に厳しい。

しかし、運転資金の借換、設備資金の新規借入は
今後の事業運営に必須なだけに、
銀行団の要請を無碍にはできない。

銀行団の要請4点をある程度許容した形で、
近日中に、計画の更なる修正案が出る可能性が高い。

欧米路線からの完全撤退は、なかなか現実的に厳しいため、
どこまでこれを残すかが
最終的には焦点になってくるのではないだろうか。

2010年4月2日、日本経済新聞に
3本の日航関連記事が掲載された。

会社更生計画の裁判所への提出に向けて、
銀行団と日航・支援機構、これにからむ国交省等
関係団体の綱引きが本格化してきた。

まずは、稲盛体制における
日航・支援機構 VS 銀行団
第一ラウンド開始である。



『日航の国際線、銀行団が大幅減要請へ、
アジア特化案が浮上


会社更生法の適用を申請した日本航空を巡り、
主力取引銀行団は1日、追加支援の条件として
国際線の大幅な路線縮減を要請する方針を固めた。

不採算路線の抜本的な整理をしなければ、
赤字体質から早期に脱却するのは困難とみている。

採算のよいアジア路線に事実上特化し、
現在60近くある自主運航路線を半分以下の20~30路線に
絞り込む案も浮上。
人員の削減も上積みを求める。

急激な路線縮小には政府内や企業再生支援機構に慎重論が根強く、
調整が難航するのは必至とみられる。

主力銀行団は日本政策投資銀行とみずほコーポレート、三菱東京UFJ、
三井住友の3メガバンク。

支援機構と日航は今夏の会社更生計画認可を目指している。
だが、巨額の債権放棄を余儀なくされた4行は
業績が確実に好転する確証が得られない限り、
追加支援に応じない構え。
再建計画の大幅な練り直しを迫られるのは避けられない情勢だ。

日航の国際線は他社との共同運航も含め90強あり、
このうち自主運航路線は約60。
支援機構は自主運航分だけの縮減目標を示していないが、
10以上の欧米線を残す方向とみられる。
国内線は136路線から17路線減らして119路線とする計画だ。

これに対して収益回復の遅れに危機感を強める主力行は
国内線、国際線とも追加撤退を求める。
具体的な削減数を巡る意見は収束していないが、
国際線は欧米路線から原則として撤退し、
アジア地域に実質的に特化する案を支持する声が強まっている。

現在、アジア路線は北京やバンコク、マニラなど30強ある。
関西国際空港と中部国際空港からは撤退し、
比較的収益力の高い成田、羽田空港からの運航に絞り込み、
20路線程度にすべきだとの意見もある。
欧米路線は比較的競争力のある5路線程度を残す案もある。

人員削減についても上積みを求めていく。
現行案はグループ人員数(5万人1800人)の3人に1人にあたる
1万5700人を事業売却や採用抑制、早期退職などで削減する内容。

銀行側は路線縮小に伴いパイロットも含め数千人規模の余剰人員の
追加整理が必要になる可能性があるとみている。

パイロット、整備士など特殊技能者の再雇用の受け皿づくりなどは
容易でないこともあり、
政府内には雇用情勢が安定するまで
急激なリストラを控えるべきだとの声も上がっている。』


記事 その2

『銀行団に危機感、更正計画を疑問視


主力銀行団が日本航空に対し厳しい姿勢で臨むのは、
今夏をめどに裁判所の許可を得る日航の
会社更生計画に実効性を持たせるのは容易ではないとの
危機感からだ。

業績悪化は続いており、
「このままでは追加融資は難しい」(大手行幹部)との指摘もある。

ただ国家間の交渉が絡む国際線の扱いには
微妙な問題も多い。
銀行団と政府や企業再生支援機構との調整は難航する局面も
予想される。

3メガ銀行は3月26日に日航向け貸出債権(簿価ベースで約1800億円)の
買い取りを支援機構に求めた。
「縁を切りたいわけではない」(別の大手行幹部)としつつも
強硬な態度を示すことで、
更正計画の中身を監視し、圧力をかける姿勢を鮮明にした形だ。

更正計画の認可後は約5000億円のつなぎ融資の借換や、
航空機購入のための2000億円の融資を
銀行団とまとめなければならない。

新規融資がなければ、最悪のシナリオでは更正計画が頓挫し、
清算(二次破綻)に追い込まれかねない。
銀行団が早い段階で路線撤退の上積みを求めるのも
政府や機構との調整が一筋縄ではいかないとみているためだ。

稲盛和夫会長はこれまでの記者会見で
「国際線のない日航はイメージできない」などと発言。
余剰人員が膨らめば、リストラ費用もかさむ。
極端な事業縮小は現実的でないとの判断が底流にある。

国際線からの一方的な撤退は外交上好ましくないとの見方もある。
世界的な航空競争の激化で将来的に路線を復活するのも
難しいとみられる。

落しどころはどこか。
欧米路線はロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、
ロンドン、パリ、フランクフルトの6拠点を維持。

一方、関西国際空港と中部国際空港から撤退でアジア路線を
スリム化したり、ハワイなどの観光路線や
オセアニア路線をグループ外に分離したりする案が
浮上する可能性もある。
国土交通省など関係省庁と機構、銀行団との厳しい交渉が
続きそうだ。』


銀行団は、
全日空と同じ戦略を採れと言っているようだ。


銀行側は債権放棄を認め、かつ追加融資に応じるというのだから、
当然言うべき主張であると私は考える。
もし、計画通りに業績が回復しなければ、
銀行団も株主、預金者等から責任を問われるからだ。

これに応える形で計画をブラッシュアップする責任が
当然にして日航にはある。

これまでの流れを見れば、銀行団の主張は想定の範囲内だが、
次の記事が、個人的には驚いた。



『国交相「融資団の支援が大事」 日航国際線縮減で


前原誠司国土交通相は2日の閣議後の記者会見で、
会社更生手続き中の日本航空の主力取引銀行団が、
追加支援の条件として国際線の大幅縮減を要請する方針を
固めたことについて、
日本政策投資銀行、メガバンク3行の融資団がこれから
しっかり支援していくことが大事
」と述べた。

国交相は
「国の税金を使って再生の手続きをやっているので、
二次破綻は絶対避けなくてはいけない。
金融機関の評価を含めて、日本航空がきっちりと再生可能な
再生計画を作ることが大事

と強調した。

主力銀行団は、赤字体質からの早期脱却には不採算路線の
抜本的整理が不可欠とみており、
現在約60の自主運航路線を半分以下の20~30路線に
絞り込む案も浮上している』


これだけ見ると、
現在の再生計画がきっちり再生可能な再生計画でないと
言っているように聞こえるし、
国の税金を使うのだから、融資団はしっかり支援してくれと
言っているようにも聞こえる。


国の税金を使って再生手続きをやっているから、
二次破綻を避けなければならないというのは、
全く筋が通っていない。

国の税金を使っても、再生が難しいのであれば、
二次破綻も許容するのが市場経済ではないのか。

この発言の流れでいくと、
万が一、二次破綻となった場合、銀行団が悪者になる。
なぜなら、税金を投入したのに、再生させなかったから。

議論をすりかえるとは、まさにこれ。

前提条件を意味不明なものにして、
その前提条件の上で、事後の結果について是非を論じる。

「日航と再生機構に全て任せている」とだけ言えばいいはず。
なぜ、この場面で発言をするのか、
また、この発言に何の意味があるのか全く分からない。

銀行団としてもきっといい迷惑だろう。


何はともあれ、今後、日航・再生機構と銀行団の
綱引きは激しくなる。

静岡―福岡ライン(3往復)
静岡―新千歳ライン(1往復)を
フジドリームエアラインズ(FDA)が日航と共同運航する。

以下、読売新聞2010年4月1日記事
「撤退JAL路線、地元資本で継承・・・静岡空港)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100401-00000431-yom-bus_all

『3月31日で静岡空港から撤退した日本航空の路線を
引継ぐ地元資本の航空会社
「フジドリームエアラインズ(FDA)」が1日、
札幌(新千歳)、福岡両線の運航を始め、
1番機の福岡行きが午前9時14分に飛び立った。

静岡市の物流会社「鈴与」が設立したFDAは、
2009年7月から静岡空港を拠点に
熊本、鹿児島、小松(石川県)の3路線を運航している。

1日からはこれらに加え、札幌線1日1往復、
福岡線同3往復を日航と共同運航する。

・・・

FDAは6月1日から、同じく日航が撤退する松本空港(長野県)でも
札幌、福岡両線を引継ぐ。』


これでFDAの就航路線は、
静岡―小松
静岡―熊本
静岡―鹿児島
静岡―福岡
静岡―新千歳
松本―福岡(6月より)
松本―新千歳(6月より)
7路線となる。

保有機材は
E170(76席) 2機
E175(84席) 1機
の3機のみ。(日経トレンディ4月号より)

ちなみに2010年3月31日 日本経済新聞記事によると、
FDAは1日2便の小松―静岡便を
6月から1日1便に減便するとのこと。


FDAとしては3機を与えられた路線内で
いかに高稼働で動かすかという、
算段の立て易い状況にある。

加えて松本空港に関しては、
カウンター設置料などに2100万円、
利用促進のために1890万円を長野県が予算化しているらしく、
地方自治体からの協力も得られる。


E170に関しては、4月1日より、
羽田―南紀白浜(和歌山)を日航が就航させており、
年度内に現在の6機から10機に増やす計画がある。

E170を導入済みの札幌―秋田の場合、
08年度に38%だった搭乗率が導入後、
昨年10月以降は平均で47%まで改善しており、
羽田―南紀白浜でも搭乗率向上が期待できる。

リージョナルジェット機は低燃費で、席数によっては
客室乗務員が減員できるなど中長期的なメリットはあるが、
単純計算で1席当たりのコストが高まる面もある。
このため日航は、チェックインや搭乗ゲート案内などを
職員1人で何役も対応できるように改善したり、
運航と運航の間の時間を短くして最短25分で折り返すようにする。
このほか1回5万9500円かかる着陸料や空港使用料の
減免措置についても、自治体との調整を進めている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100331-00000029-fsi-bus_all
(2010年3月31日 フジサンケイビジネスアイ 記事参照)


日航再建についても、
FDAの今後についても、
これらを踏まえるとかなりシンプルな図式となっている。

すなわち、空港ネットワーク間を移動する旅客を最大にする
就航路線を描き、
加えて自社保有機材の稼働率を小型機により最大化させるということ。

日航の場合は、不採算路線は国のお墨付きによりガンガン撤退し、
稼動率を上げるための機材の入れ替えは国の金でできる。

撤退の受け皿も、一部についてはFDAがある。


一方、全日空については、
機材更新の金は自分で稼がなくてはならない。

加えて、小型機として三菱重工業のMRJを25機発注しており、
1号機の納入は2014年。
今から4年後になる。
日本製に拘っているのだろうか。
品質すら定かでない機材を購入するとは、見上げた心意気である。

願わくば、三菱重工業にMRJで成功頂いて、
日本の航空産業を勃興し、
自助努力している全日空に幸あらんことを。


『JAL再生の嘘 組織の腐敗は止まらない』
屋山太郎 著 が PHP研究所から
2010年4月6日付けで発売された。

内容は題名のとおり、かなり厳しい指摘に終始しており、
「日航が潰れても誰も困らない」とまで言い切る。

興味深い部分を一部抜粋


『520名もの犠牲者を出した日航ジャンボ機墜落事故が
八月に起きた1985年12月、
日航再建に乗り込んできた伊藤淳二氏は、
事態を正確に認識していたといってよい。

伊藤氏が立てた方針は、
①人事の公平、
②不正義の清算、
③経営の責任体制の確立
の3つだった。

・・・

伊藤氏の日航再建の三つの方針は
まさに正鵠を得たものだったが、
それがなぜ挫折したのか。

全労の力を甘く見たうえ、
全労を取り巻く政治情勢、
運輸官僚などの介入などについてもあまりにも
無知すぎたということだろう。

・・・

伊藤氏は政治音痴だったがために、
一直線に走って利権の構造に手をつけようとした。
これを恐れた政治家、運輸官僚、全労人脈が
一体となって、伊藤氏のミスをあげつらい、
陰険な追い出し工作を行った―
というのがコトの真相だ。』

(同書 p114-126)


日航再建の3つの方針がこれとは、
稲盛会長も驚きだろう。

『しかし、経費を一生懸命に削減したが、
それでも人件費に手をつけざるを得なくなってしまったのなら、
これは仕方ありません。

人員削減は私利私欲のためにするものではありません。
何も手を打たず、全従業員が路頭に迷うことが善なのか、
十人に辞めてもらって、残る30数名の従業員を
守っていくのが善なのか、という厳しい選択から出てきたものです。

仏教には、
「大善は非情に似たり」という言葉があります。
大きな善を為そうと思えば、
普通の人から見れば、「非情な人」と映ることがあるという意味です。
今あなたがやろうとされていることは、
まさにその大善に当たると思います。』
(『高収益企業のつくり方』 稲盛和夫 より)


稲盛氏の大善は、日航の従業員や組合に届くのだろうか。
この本を読む限り、
なかなか難しそうだ。



JAL再生の嘘/屋山 太郎
¥1,575
Amazon.co.jp



金融機関からまるで評価されていない
日航の再建計画とその計画進捗状況。

主要行の同意を得られなければ、
当然にして、下位行が計画を支持するわけがない。

そして、日航はリストラを加速させる。

『日航の特別早期退職、予定の3倍募集へ』
読売新聞 2010年3月27日記事より抜粋
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100327-00000674-yom-bus_all

『会社更生手続き中の日本航空が
特別早期退職の募集目標を当初予定していた2700人から
大幅に上積みし、今秋までに約8000人とする計画であることが27日、
明らかになった。

6月末に裁判所に提出する更正計画に盛り込む方針だ。
新たに募集の対象となるのは、
賃金水準が高い管理職のパイロットや客室乗務員らが中心になるとみられる。
人員削減の大幅な上積みにより、
危機感をもって経営再建にあたる姿勢を明確にする。

人員削減に慎重姿勢を示していた日航の稲盛和夫会長もこの方針を
了承している模様で、日航と企業再生支援機構は今後、
取引金融機関や国土交通省などと調整に入る。

日航と機構は、今年1月に示した当初の再生計画で、
今後3年間にグループ全体の3割超にあたる1万5700人の削減を計画。
特別早期退職者の募集はこのうち2700人を計画していた。

しかし、日本航空は会社更生法の適用申請後も赤字が続いており、
金融機関などから
「人員削減数が甘い」との指摘が出ていた。
日航は、人員削減の上積みを図ることで、
金融機関から更正計画の承認を得たい考えとみられる。

今回、特別早期退職の対象者を3倍近くに増やすことにより、
更正計画で示す最終的な人員削減数は2万人規模となる可能性が出てきた。

日航は今後、労働組合などに説明して
協力を求める方針だが、労組側は反発を強めるとみられる。』


同じことを、同じ人間が、同じ環境下でやっても、
状況は変わらない。

政治や行政のシステムを含めた改革を同時に進めていかない限り、
人員削減だけでは、社員のモチベーションが下がるだけである。

日航は公共性が高い企業だと言うならば、
公共性とは何か、国全体としてもう一度見直す必要があるはず。

『みずほコーポレート、三菱東京UFJ、三井住友の3メガバンクが
日本航空向けの債権残高計1724億円全額について、
日航再建を主導する企業再生支援機構に買い取りを求めたことが
26日、明らかになった。』

読売新聞 2010年3月27日 記事より
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100327-00000124-yom-bus_all

3メガバンクは日航のリストラの進み具合に不満を募らせており、
貸借関係解消に含みを持たせる厳しい姿勢で足並みをそろえた。

支援機構は債権者数を減らして再建を進めやすくするために、
金融機関から債権を買い取る機能を持っている。
日航の場合、32の取引金融機関が計7103億円の債権を保有しており、
請求の締め切りとしていたこの日、
3メガバンクを含め計1908億円の買い取り請求があった。

ただ、この機能は本来、主要取引銀行以外からの買い取りを想定したもので、
日航の資金繰りを支えてきた3メガバンクからの全額買い取りは想定外といえる。

日航や支援機構は今夏をめどに、日本政策投資銀行などによる
つなぎ融資のうち5000億円をメガバンクなどから借り換えたい意向だ。

再建に向けては、グループ社員5万1000人の5%にあたる
2700人の早期希望退職職を募るなどしているが、
メガバンク側は
「人員や路線の削減規模が小さすぎて再建は困難。
このままでは借り換えに応じられない」との構えだ。

メガバンク側は会社更正法に基づく更正計画が固まるまでは、
買い取り請求を撤回することができ、
今後、計画策定を巡り厳しい綱引きも予想される。』


メガバンクも当初予定と異なる動きを始めた。

もともとメガバンクは担保による保全額を除いた部分の
83%を債権放棄する計画だった。

みずほコーポレートが464億円
三菱東京UFJ銀行が468億円
三井住友銀行が156億円

がそれぞれ83%の債権放棄額にあたる。

債権放棄した後も、
貸借関係が当然にして残る計画(17%部分)だったが、
これすら認めないという強硬姿勢に出てきたのだ。


債権放棄し、負債が圧縮した後、
収益が計画通りあがり、残りの債権をきっちり回収することが
金融支援の大前提。



いかに公共性の高い企業とは言え、

実現可能性の低い計画に加え、
リストラについても金融機関の想定通り進まず、
未だ単月黒字化の目処が立たたない。

この状況で、この計画で再建しますから、
債権放棄よろしく、といわれても、
当然納得できないはず。

主要行の同意が得られなかったことは、
支援機構の調整力不足である。

支援機構の計画、
日航の再建実行力
がともに、外部評価に耐えないものであるということが露呈した。

支援機構の計画見直し、
日航のリストラ加速は待ったなしである。