パンダ ぱんだです

 

早朝の街を歩いてた。   

 

もともと車の通りも少なく、

すれ違う人も無口だから静かなのだが、

大通りに近づいたところから

世界から音が消えたような感覚にとらわれる。

 

 

信号を待っていると不意に耳の奥で金属音が鳴り出し、

激しい頭痛とともに一瞬意識が飛んだようだった。

 

気が付くと、通りの中央がそこだけ色が無くなったように真白になり、

肌も真白な化者(けもの)の人たちが、

猿、雉、猪、蛇、熊、鹿、鴉、そして山犬?の

面をつけ円陣を組み舞っていた。

 

何をやっているのか好奇心が半分、

やっかいなとこに出くわしたと言う思いが半分、

そんな思いで「何かの儀式だろうか?」と眺めていた。

 

円陣の中央から黒い筒状のものが

ゆくっりとせり上がってくるのを、

「お性根抜きみたいだな・・・」と思わず呟く。   

 

黒い筒には幾重にも封が施されていたが、

化者たちが舞いをすすめると一つ、

また一つと封がほどけていった。   

 

最後の封が剥がれ落ち、

黒い筒の蓋がズズッと音を立てながら開きだすのと同時に、

化者達が面を外しだす。  

 

 「やばっ!アレみたら死ぬ」と、とっさに目を閉じ首を垂れる。   

 

その直後、頭上から何か大きなものに押さえられ体を直角に曲げられ、

「賢いな下郎」と、そんな声と共にまた世界に音が戻った。

 

 

 ・・・ここまでほんの10数秒。   

 

早朝に体を直角に曲げ立っている、

おっさんの姿を目撃した人がいるかは定かではないが、

もしいたらさぞかし気味悪く見えたことだろう。   

 

今日の見えない人でした。