雨のあとに虹・Part2 その26
「お呼びですか?」
桜田は官房長室に入って来て言うと
「そこに座ってよ。」
官房長の岸田学は桜田に言った。岸田は50代の半ばの見るからに威厳がある顔をしていた。
「失礼します。」
桜田は言うと椅子に座った。
岸田は桜田が座ったのを確信して自分も桜田の前に座った。桜田は緊張も見せずに岸田を見た。
「もういいと思うよ。」
岸田は勤めて優しく言った。
「何がですか?」
桜田が言うと
「闘真拳を調べるのは良いけど事件性はないからね。」
岸田は言った。
「それは解っています。」
桜田は言った。
「それならこれ以上は止めたらどうだろうね。」
岸田が言うと
「事件ではないのであくまで内密に捜査をしたいのですけれどね。」
桜田が言うと
「言葉を選んだ方がいいよ。」
岸田は言った。
「どういう事でしょうか?」
桜田は岸田を睨むように言った。
「高村俊之さんは容疑者ではないよ。」
岸田が言うと桜田はすぐに状況を悟ったのであるが言葉を選んでいた。岸田は無表情であり感情を表に出す事は少なかった。
「高村氏から圧力がかかったのでしょうか?」
桜田が言うと
「高村さんは圧力をかけないでしょ!」
岸田は言った。
「それでは誰が圧力をかけたのでしょうか?」
桜田が言うと
「君も知っている増田康文だよ。」
岸田が言った。
「増田ですか?」
桜田は驚いて言った。
「君は高村さんが増田と親しかった事まで調べなかったの?」
岸田は冷静であるが非難するように桜田に言った。。
「これはいったいどういう事ですか?」
内堀が立花に言った時には俊之は別の担当が案内していて陽子も一緒であった。
「解らないのか?」
立花は言った。
「まさか立花専務まで俺を攻撃してくるとは思わなかったですよ。」
内堀は不機嫌な表情で言った。
「お前は俺が攻撃したと思っているのか?」
立花が言うと
「攻撃しましたよね?」
内堀は言った。
「だからお前はバカだと言ったのだ。」
立花は怒るように言った。
「違うと言いたいのですか?」
内堀が言うと
「俺はお前を助けた事が解らないのか?」
立花は言った。
「俺を助けたと言いたいわけですか?」
内堀が言うと
「高村社長は強力な人脈を持っているからお前の代わりなどすぐに見つけてくるぞ。」
立花は言った。
「高村俊之とはそんなに凄い男なのですか?」
内堀が言うと
「正樹オーナーも春香さんも高村社長には絶対の信頼をおいているから何をしても意義は言わないはずで逆らったら俺だって庇えないぞ。」
立花は言った。
「高村って社長はそんなにワンマンなのか?」
内堀が言うと
「ワンマンではないからこそ怒った時が恐いと言っているのが解らないのか?」
立花は含めるように言った。
「思ったより作業が順調に進んでいてよかったよ。」
俊之は言うと田中が待つ社用車を見たのである。
「今日の予定はこれで終わりです。」
確認するように手帳を見た陽子は言った。
「これで終わりだから都心まで戻ろう。」
俊之が言うと
「はい。」
陽子は言って俊之と一緒に社用車の方に歩いて行った。内堀は作業員にの影に隠れるようにして俊之を見ていたのである。
「予定より早く終わったよ。」
俊之が田中に言うと
「都心に戻りますか?」
田中が確認するように言った。
「戻ってください。」
俊之が言うと
「かしこまりました。」
田中は言った。
「安全運転でお願いします。」
陽子が微笑んで言うと
「心得ています。」
田中は言った。
「ひょっとしたら高村社長は正樹オーナーより恐い存在になるのだろうか?」
社用車が静かにスタートをするのを見て内堀は呟いたのであった。