もうひとつの物語・6月の雨
梅雨入りして雨の日が続いていてシトシトと降る雨は梅雨独特の雨であった。そんな梅雨の谷間とも言える晴れた日に私はいつものようにその珈琲ショップに行ってみた。いつものように気分が向いて立寄ってみたのである。
「いらっしゃいませ。」
若い女性店員さんが言って対応してくれると
「ブレンドをひとつね。」
私は言って注文をすると少し時間だけ待っていた。
「お待たせいたしました。」
若い女性店員さんはハキハキした声で元気よく対応してくれていた。私は今日も不思議な事にいつもと同じ席に座っていた。私は周囲を見回して大きくい息を吸い込んでいた。私が初めてこの店に来てからかなりの月日が流れていた。店長さんや彼女の事も昨日あった出来事のように思っていたのが時間は私の心とは裏腹に早く過ぎていくものである。少しだけ寂しさを感じながら私は珈琲を含んでいた。
いつの間にか横に人の気配を感じると
「こんにちは。」
先ほどの女性店員さんが言って横に立っていた。
「こんにちは。」
私は短く言った。
「今日は店長がお休みですみません。」
彼女は言った。私は週に一度は定休日があるのは解っていたが珍しくその定休日に私が来た事をしった。
「最近では店長さんが休みの日に来るのは初めてかもしれないね。」
私は言うと少し間があった。
「いつも店長と何をお話されているのですか?」
彼女が不思議そうに私を見て言った。
「普通の世間話だよ。」
私が言うと
「本当にそれだけですか?」
彼女は言った。
「そうだよ。」
私が言うと。
「それだけではないような気がします。」
彼女は言った。
「どんな話をしているように見えたの?」
私が言うと
「何となく意味深な表情でしたよ。」
彼女は言った。
「意味深に見えたの?」
私が言うと
「何か事情でもあるのかと思いました。」
彼女は言った。彼女が誤解をするのも無理のない事である。確かに私たちの話は意味深であった。
「世間話でも話が弾むと意味深に見えるのかも知れないよ。」
私が言うと
「そうでしょうか?」
彼女は言った。
「僕には何とも言えないよ。」
私が言うと店内が少し混んできていた。
「失礼します。」
彼女は言ってカウンターへ戻って行った。
時間はゆっくり静かに流れて珈琲カップの中が空になると現実に私はすぐに戻されていた。私はゆっくり立ち上がって珈琲カップを戻しに行った。
「ありがとうございました。」
彼女が言うと
「ごちそうさま。」
私は言った。
「今度は私にも聞かせてください。」
彼女が言った。
「何の話が聞きたいの?」
私が言うと
「世間話ですよ。」
彼女は言った。
「僕でよければ良いですよ。」
私は言った。
「店長とだけ面白い話をしてずるいですよ。」
彼女が大きな声で言った。
「良い話題があったら話すよ。」
私は言った。
「楽しみにしていますね。」
彼女が言った。私は彼女の声を背に店の外に出てエスカレーに乗ると周囲にざわめきを感じていた。外は雨が降っているだろうか?それとも少し太陽が顔を出しているかも知れない?そんな事を考えて外に出ると少しだけ薄日が差していた。