雨のあとに虹・Part2 その6
「やっと僕たちの出番がきたようですね。」
笹川翔太が現れて人混みまで走って来た俊之をみつけて言った。呼吸ひとつ乱していない俊之は平然としていた。翔太が傍に来ると
「今はどのような状態なの?」
俊之は言った。
「膠着状態ですね。」
翔太が言うと
「怪我人はいないね?」
俊之が言うと
「それは大丈夫です。」
翔太は言った。
「人質は女性だね?」
俊之が言うと
「関口たちが犯人を取り囲んでいますので最悪な事態はないと思いますが人質の女性は精神的に疲れが出る頃です。」
翔太は冷静に分析をして言った。
「頼むから久美子を放してくれ!」
敏弘が犯人に言っている声が俊之の耳まで聞こえてきた。
「俊さん!」
久美子が言うと
「久美子さんは走るのが速いですね?」
翔太は言った。
「笹川さん!」
久美子が言って俊之の傍にくると
「遅れてすみません。」
立花が息を切らして言った。
「あの女性の方は久美子さんです。」
久美子が驚いて言うと
「深澤久美子さんですよ。」
立花は言った
「久美ちゃんと同じ名前の女性だね?」
俊之が言うと
「あの女性は久美子さんと同じ名前で今日の新社長就任記念の表彰者です。」
翔太が完結に言った。
「そういう事であるなら僕は社長として犯人からそのもうひとりの久美子さんを助けなければいけないね。」
俊之が言うと
「そう言うと思っていました。」
元気よく翔太が言った。
「僕が合図したらこのクラッカーを鳴らしてくれるかい?」
俊之が翔太に言ってクラッカーを渡すと人混みを分けて行った。
「俊さん!」
久美子が言うと
「大丈夫だよ。」
俊之は振り返って言った。
「高村さんが合図をしたらこのクラッカーを鳴らしてくれ!」
翔太が言うと
「解りました。」
関口久夫は言った。
「僕は人質の女性を保護する。」
翔太は言うとクラッカーを関口に渡した。
「早く捕まえましょう。」
関口は言うとメンバーいる場所まで戻って行った。夏の日差しが周囲の空気を暑くしているだけでなく緊張感で極限状態にも限界がきていた。
「社長も無理しないでください。」
早足で歩きながらもやっと現場に着いた陽子は祈るように大きな声で言った。
「今週は高村さんも忙しそうですが来週あたり3人で打合せをしませんか?」
田崎文夫は矢島建設の社長室でいつもの明るい声で言った。
「そうだな。」
矢島正一は言った。
「久しぶりに一杯やりましょうよ。」
田崎が言うと
「高村がうちの取締役に就任した記念に一杯やるのもいいな。」
矢島は言った。矢島建設の社長である矢島は180センチを超える長身にがっちりと重量感ある身体はまさに巨体であった。柔道3段の猛者であることは見た目で誰にでもすぐにすぐに解った。俊之の高校時代の同級生である矢島は20代のころから俊之の才能を見抜いて一目置いていたのであった。
「それでは夕方までに高村さんに連絡しておきます。」
田崎が言うと
「そうしてくれ!」
矢島は言った。
「任せてください。」
田崎が言うと
「これからはあいつも忙しくなるから今のうちに親睦を深めていかないといけないな。」
矢島は言うと声を出して笑ったのである。