雨のあとに虹・Part2 その5
「少しでも動いたらお前の生命はないぞ!」
犯人は深澤久美子の首にナイフを突きつけたままで言った。犯人は興奮状態であり周囲には入場客が遠巻きに深澤久美子と犯人を見つめて立っていた。
「俺が変わりに人質になるから久美子を放してくれ!」
敏弘は言ったが
「ダメだ!」
犯人は大きな声で言った。
「バカやまねはやめてくれ。」
敏弘が言うと
「どうせ俺の人生なんてこんなものだ。」
犯人は言った。
「落着いてくれ。」
敏弘が言うと
「俺の人生なんてどうにでもなれ!」
犯人は公興奮状態で叫んでいるだけで聞く耳を持たないのであった。20代前半と思える犯人自分の不幸を世の中のせいだと考えていた。34歳の敏弘から自分の世の中や不幸をのせいにするのは甘えた考えにしか思えないのであった。
「すぐに警察が来るから大丈夫だよ。」
敏弘が言うと深澤久美子は小さく頷いて目を閉じていた。30歳の深澤久美子は落着いて見えているが恐怖に年齢は関係ないのである。深澤久美子は時間が経つのが遅く感じられて頭の中は真っ白であった。
「クラッカーは野外だとそんなに大きな音ではないけど屋外は音が響くね。」
俊之が言うと
「何だか少し恐いですね。」
久美子はクラッカーを手にとって言った。
「私大きな音を想像すると手が動かなくて苦手です。」
久美子に同調して陽子が言った。
「女性はだれでもそうかもしれないね。」
俊之が言うと
「あの大きな音が苦手ですよ。」
久美子は言った。
「矢島は高校の卒業式にクラッカーを鳴らしたよ。」
俊之が思い出したように言っうと
「矢島さんがクラッカーを鳴らしたのですか?」
陽子は俊之に言った。
「そうだよ。」
俊之が言うと
「今では信じられませんね。」
久美子は言った。
「矢島は今でこそ人の良いおじさんだけど高校時代は悪だったからね。」
俊之は冗談交じりに言った。
「あの矢島さんがですか?」
久美子が言うと
「想像できないですね。」
陽子は言った。
「校長先生が腰を抜かすほど驚いていたよ。」
俊之が言うと
「そうだったのですか?」
陽子は言った。
「大変です。」
立花が言って慌てて走りながら部屋に入って来た。
「どうかしましたか?」
陽子が立花に言うと
「先ほど広場で若い男がナイフで女性を人質にとっていまして周囲は騒然としています。」
立花が言うと
「警察へ連絡はしましたか?」
俊之が確認をして言った。
「すぐに通報しました。」
立場が言うと
「解った。」
俊之は言った。
「あとは警察に任せましょう。」
立花が言うと
「このクラッカーを持って行くけど良いかい?」
俊之は言った。
「はい。」
久美子が言うと俊之は久美子からクラッカーを受け取って走出そうとしていた。
「社長!」
立花は言った。
「大丈夫だよ。」
俊之は言って走り出していた。
「俊さん。」
久美子が言うと
「無理をしないでください。」
陽子も言った。
「川嶋さんも久美ちゃんも気をつけないとダメだよ。」
俊之は走り背後にいる久美子と陽子に言った。俊之は頭脳明晰だけでなく運動神経もよく46歳と言う年齢にしては俊足であった。
「社長!」
立花は言って追いかけて来た。
「急ぐからあとでゆっくり来れば良いよ。」
俊之は言って走る速度を落とさなかった。
「待ってください。」
立花は言うだけで引離されていった。久美子も運動神経が良い方だが立花に追いつくのがやっとでありう俊之はずっと先を走っていた。陽子は最初から走る事を諦めて歩いていたのであった。