雨のあとに虹 その239・最終回
田中の運転でバスが動き出すと俊之と久美子を中心に思い思いに会話が交わされていた。
「一時はどうなるかと思ったよ。」
矢島が言うと
「高村さんの運気は上がっているはずですよ。」
天門は言った。
「未来さんも喜んでくれるはずですよ。」
木暮理事長が言うと
「お疲れ様でした。」
直子は言った。
「会社に電話するのはあとにします。」
陽子が言うと
「あとで何かおいしいものを食べましょう。」
春香は言った。
「明日榊原さんに会いに行きます。」
ひとみが言うと
「今度の休みに海に行こうよ。」
久美子が俊之に言った。
「あの海でやり直しをしようよ。」
俊之は言った。
「笹川さん」
育子が言うと
「どうかしたの?」
翔太は言った。
「私たちも何処かへ遊びに行かない?」
育子が言うと
「どこかに行きたくなったね。」
翔太は言った。
「あのふたりを見ていたら宛てられたよ。」
育子が言うと
「僕たちも観覧車に乗ってみようよ。」
翔太は言った。田中が運転するバスを10人ほどのオートバイ部隊が取り囲んでいたがそれは関口たちであった。関口たちは思い思いに右手を上げて前方に走り去って行った。
「関口さんたちにもいろいろと協力してもらったよね?」
俊之は関口たちを見ながら久美子に言った。
「関口さんたちにあとでお礼を言いましょうよ。」
久美子も言いながら関口たちを眼で追って俊之に言った。雨が降ったあとに空が晴れると虹が七色の橋を架けるのを誰もが一度は見た事があるはずである。七色の色彩を放つ虹の架け橋を渡るように田中が運転するバスは日常が待つ都心へと走っている。その架け橋を渡る事によって新しい何かが始まるのを俊之と久美子も含めてバスに乗っている全員が期待していた。春が近づく沿道には蕾をつけた桜の木が俊之たちを乗せたバスを見送るように空に向かって大きく伸びていた。吹いている風には微かに春の香りが漂っていたのである。
完