雨のあとに虹 その236
俊之がデッキから戻ってロビーに来るとそこには翔太が立っていた。
「翔ちゃん。」
俊之は短く言った。
「久美子さんは行ってしまいましたね。」
翔太が言うと
「僕はだめな男だよ。」
俊之は言った。
「どうしたのですか?」
翔太がいうと
「人には勇気を持てとか最後まであきらめるなと言いながら僕は久美ちゃんを引き留める事が出来なかった。」
俊之は言った。
「それは仕方がないですよ。」
翔太は言った。
「飛行機が点になって見えなくなった時に僕は思った。」
俊之は言った。
「何を思われたのですか?」
翔太が言うと
「久美ちゃんをカナダに行かせるべきではなかったよ。」
俊之は言った。
「久美子さんも来たくなかったと思いますよ。」
翔太が言うと
「僕のそばに居てほしいと言うべきだったよ。」
俊之は言った。
「それでしたら今から正直に言ったらどうですか?」
翔太が微笑んで言った。
「今からと言っても久美ちゃんはすでに飛行機の中にいるよ。」
俊之は言った。
「この通路の先を見てください。」
翔太が言うと
「通路の先に何かあるのかい?」
俊之は言った。
「僕には高村さんにとって一番大事な女性が立っているように見えますけどね。」
翔太が言うと俊之は翔太が言った通路の先をじっと見た。