雨のあとに虹 その227
「風が少し暖かいわね。」
ひとみが言と
「ここ数日間暖かくなってきましたね。」
久美子は言った。ふたりは休憩時間にしては珍しく屋上に来ていた。
「もう3月なるのね。」
ひとみは空を見上げて言った。
「ここ数ヶ月時間が経つのが早かったですね。」
久美子が言うと少しだけ南風が久美子の頬を流れていた。
「いろいろあったけど冬はいつまでも続かないわよ。」
ひとみは言った。
「すぐに春が来て花も咲き小鳥もさえずりますね。」
久美子が言うと
「良い詩ね。」
ひとみは言った。
「誰が書いたか覚えていないですけどこの言葉だけは不思議に覚えていいます。」
久美子は言った。
「春が来ない冬はない。」
ひとみが呟くように言うと
「どこかで聞いたような説得力がある言葉ですね。」
久美子は言った。
「麗子さんが口癖だった言葉よ。」
ひとみは麗子の顔を思い浮かべて言った。
「まさにその通りですよ。」
久美子は言った。
「堀川さんもそう思うの?」
ひとみが言うと
「冬の寒さにじっと耐えて苦しさを克服した者だけが春を迎えた時に喜びに出会えるのだと思います。」
久美子が言った。
「その言葉は凄く含蓄があるわね。」
ひとみが言うと
「高校での担任の先生が言っていました。」
久美子は言った。
「その担任の先生も辛い冬を乗り越えて春を迎えたのね。」
ひとみが空を見て言うと
「この青さはいつまで続くのかしら?」
久美子も空を見上げて言った。
「どこまでも続いているといいけどね。」
ひとみは言った。
「私たちの子供もその子供もさらにそのまた子供もずっと先になってもこの綺麗な青空が見られるといいですね。」
久美子は目に涙を浮かべて言った。
「急にどうしたの?」
ひとみもいつの間にか目に涙を浮かべて言った。
「最近は暗い話題が多いから少しでも明るい話題があるといいですね。」
久美子が言うと
「私も堀川さんと同じ気持ちよ。」
ひとみは言った。ふたりが見上げた空は透き通るように青かった。
「ご馳走様でした。」
歩きながら育子は言った。
「お腹がいっぱいになったかい?」
俊之も隣で歩きながら優しく言った。
「決勝戦が終わった時間がお昼過ぎだったからね。」
育子は言った。お昼の混雑した時間帯のあとに俊之が育子を連れてレストランに入り先ほど出て来たばかりであった。駅までの通りは木があって自然も多くふたりはゆっくり散歩をしていた。
「そろそろ春だね。」
俊之が言うと
「春と言えば高村さんと出会ってちょうど1年だね。」
育子は言った。
「月日が経つのは早いね。」
俊之が言うと
「あの日も今日のように雲ひとつない快晴だったよ。」
育子は言った。
「出会ったのは夜だよ」
俊之が言うと
「そうだったね。」
育子は言った。
「僕は痴漢に間違われたね。」
俊之が言うと
「それも不思議な縁ですよね。」
育子は言った。
「確かに不思議な縁だね。」
俊之は思い出すように言った。
「あれからいろいろな人に出会って特にこの数ヶ月は凄く魅力的な人に出会えたからね。」
育子は言った。