雨のあとに虹 その224
「町島さん。」
俊之が言うと
「ありがとうございます。」
久美子は言った。俊之たちは牛山たちが去り久美子とひとみを連れて倉庫から離れた所に立っていた。
「明日には斉藤弘子は警察に逮捕されると思います。」
町島は言った。
「それで良いのですか?」
俊之が言うと
「牛山たちも年貢の納め時のようだ」
町島は言った。
「こんなに大掛かりだとは思いませんでしたよ。」
俊之が言うと
「わしは高村さんを守ると言った以上は約束を守らせてもらうよ。」
町島は言った。
「今回はあぶなかったですよ。」
俊之が言うと
「私が軽率でした。」
ひとみは反省して言った。
「ひとみさんは悪くないですよ。」
俊之が言うと
「すみません。」
ひとみは言った。
「お嬢さんには恐い思いをさせてすまないね。」
町島は久美子を見て言った。
「いいえ。」
久美子が言うと
「お嬢さん勇気ある行動をとったね。」
町島は言った。
「私は夢中だっただけですよ。」
久美子が言うと
「あの状況で高村さんを庇うとは相当な勇気だよ。」
町島は言った。
「そんな事はありません。」
久美子は今頃になって少し涙が出てきたのである。
「一番勇気があるのはお嬢さんなのかもしれないね。」
町島はそう言うと久美子を見て微笑んでいた。
「あれは何だ。」
運転していた秋田克彦は助手席に座っていた妻の秋田峰子に言った。
「暗くてよく見えないわね。」
峰子は言った。克彦は街灯がなくてスピードが出せない状態でハンドルを回した時に人間らしきものが横たわっているのを見たのである。
「ちょっと降りて見て来る。」
自動車を止めた克彦は言って外へ出て行った。
「暗いから気をつけてね。」
峰子は言った。少しすると克彦は自動車に戻って来た。
「どうだった?」
峰子が言うと
「警察に連絡しよう。」
真っ青になった克彦は言った。
「どうしたの?」
峰子が言うと
「人が死んでいる。」
克彦は言った。近くには石井純一の変わり果てた姿があった。
「そんな事があったの。」
育子は翔太との電話で少し落着いた時間を取戻しながら言った。
「これで斉藤弘子が逮捕されれば一連の事はすべて解決ですよ。」
電話の向こうで翔太が言った。
「もうひとつ残っているでしょ?」
育子は自分の部屋で寛ぎながら言った。
「もうひとつ?」
翔太が言うと
「大事な案件があるでしょ?」
育子は言った。
「その件は劇的に解決しますよ。」
翔太が言うと
「私が書いたシナリオだからしっかり演じてよ。」
育子は言った。育子は始まる最後の大一番に少し緊張をしていたが期待も大きかった。
インタフォンが鳴っていた。昨夜は帰りが遅かったからまだ眠かった。弘子は眠い目を開けてやっとの事で起き上がっていた。
「こんなに朝早く誰よ!」
弘子はと言いながら時計を見ると6時を少し過ぎていた。弘子はあまりにうるさいのでパジャマの上からガウンだけを羽織ってあくびをしながら玄関に行った。朝早くからマンションに来るとは牛山も迷惑な男だと思いながら玄関のドアを開けるとドアの向こうに中年の男がふたりと若い女性がひとり立っていた。
「朝早くからすみません。」
ひとりの男が言った。
「こんなに早く何よ。」
弘子が言うと
「斉藤弘子さんですね。」
もうひとりの男が言った。
「そうです。」
弘子が言うと
「警視庁捜査2課の杉山です。」
杉山利秀者は言った。
「同じく金田です。」
金田二郎が言うと
「中森です。」
中森あずさも言った。
「捜査2課ですか?」
弘子が言うと
「詐欺容疑で逮捕状が出ています。」
杉山が言うと弘子に逮捕状を見せた。弘子は頭が呆然となった頭の中が真っ白になっていた。女性警官のあずさが弘子に素早く手錠をはめていた。この瞬間に俊之に関する不幸は解決へと加速していた。