雨のあとに虹 その221
「この女ではないのか?」
牛山が弘子に言った。
「ぜんぜん違うわよ。」
弘子が言うと
「何を早とちりしているのだ。」
牛島は言った。
「私の言うことを最後まで聞かないからいけないのよ。」
弘子は迷惑そうに言った。
「仕方がないな。」
牛島は言った。
「どうしますか?」
若い衆が言うと
「その久保田直子と言う女は日を改めて始末しろ!」
牛島が言うと
「はい。」
若い衆は言った。
「問題はこの女だな!」
牛山は縛られているひとみを見て言った。
「石井純一さんですね。」
ビジネスマンのような服装であるがどこか別の空気を漂わせた木村誠一が純一に言った。駅から離れた喫茶店の前である。
「そうです。」
純一が言うと
「斉藤さんは急に忙しくなりまして事務所まで来て欲しいそうです。」
木村は言った。
「事務所までですか?」
純一が言うと
「お金は事務所で渡すとおっしゃっています。」
木村は言った。
「事務所はどこなの?」
純一は警戒もなく言うと
「車でご案内しますよ。」
木村は言った。
「着きました。」
田中は言った。湾岸沿いにある倉庫の前であった。俊之が見ると関口たち6人がオートバイに跨っているのが見えていた。
「行こう。」
俊之が言うと
「はい。」
翔太は言った。
「私も行きます。」
久美子も言って出て来た。関口たちの前まで3人は歩いて行くと関口たちはヘルメットを外していた。
「ひとみさんは?」
翔太が言うと
「その倉庫の中です。」
関口は先にある大きな倉庫を指差して言った。
「ここなら大きな音を出しても周囲には聞こえないし周囲には何もないな。」
翔太が言うと
「僕と久美ちゃんで行って来るよ。」
俊之は言って久美子と視線を合わせていた。
「はい。」
久美子は短く言った。
「ふたりでは危険ですよ。」
関口が言うと
「大丈夫だよ。」
俊之は言った。
「私は俊さんが一緒だから大丈夫です。」
久美子が言うと
「これをつけて行ってください。」
翔太が言ってワイヤレスマイクを俊之に着けた。
「僕が名前を呼んだらみんなで来てくれないか?」
俊之が言うと
「いつでもスタンバイしています。」
翔太は言った。
「どうぞ!」
木村がドアを開けると純一は助手席に座っていた。男の運転で自動車はすぐにスピードを上げていた。
「恐いかい?」
俊之は倉庫の前まで来て久美子に言った。
「俊さんと一緒だから大丈夫です。」
久美子は静かに言った。ふたりが倉庫の前に来るとドアが開いて弘子と牛島が出て来ていた。その後ろから縛られて口をふさがれたひとみと若い衆が一緒に出て来た。
「お前ら誰だ!」
牛島は俊之に言った。