雨のあとに虹 その212
「中村くん。」
山本が言うと
「はい。」
中村は緊張しながら言った。
「君の総武との交渉能力には期待しているよ。」
山本が言うと
「がんばります。」
中村は言った。
「田所の件はあまり気にしないでいつもの通りにやりなさい。」
山本が言うと
「私に何でも任せてください。」
中村は言ったが少し気が重かった。総合商社と言えば聞こえはいいのであるが品物を右から左に動かすだけでは競争力が弱くなっていた。これからは三友商事にしか出来ない何かが必要であることは中村にも解っていた。
「がんばってくれたまえ。」
山本が言うと中村は会釈をして役員室から出て来た。うつむき加減で廊下を歩いていると
「中村さん。」
まどかが中村に言った。
「田所さんは何を考えているのでしょうね?」
我に返った中村は言った。
「何も考えていないですよ。」
まどかは冷たく言うと
「仕事をしないで同僚の悪口だけを言って給料を貰っていたと思ったら今度は通り魔事件を起こして警察に逮捕だれるとは最低だよ。」
中村は愚痴を言った。
「会社が早め田所課長を処分しなかったのが悪いのよ。」
まどかは冷静に要った。
「そうだよね。」
中村が言うと
「会社はやる事が遅いのよ。」
まどかは言った。まどかにも田所に対する怒りや情けなさなど複雑な気持ちがあったのである。
「明日は私が休みだけど堀川さんにお願いしていい?」
ひとみが言うと
「明日は夕方までなら大丈夫ですよ。」
久美子は言った。
「それはよかった。」
ひとみが言うと
「何かあったのですか?」
久美子は言った。
「今週と来週はどうしても休まなければいけない日が動かせないので困っていたのよ。」
ひとみが言うと
「大学が休みに入ったので時間の融通は利きますよ。」
久美子は言った。
「いらっしゃいませ。」
小百合が言うと久美子は珈琲の用意をした。
「お客様こちらへどうぞ。」
ひとみが言うと
「お待たせいたしました。」
珈琲の用意が出来た久美子が言った。トレンドカフェの店内は少し混んできたようである。
「羨ましいな。」
俊之が貰ったチョコレートを見て立花が言った。
「ふたつだけどね。」
俊之は言った。社長室でする会話ではないが総武を支えるふたりが和やかな会話をしていた。多少の冗談がなければコミュニケーションを取るのは難しいのである。
「そのふたつが重要ですよ。」
立花は言った。
「そうだよね。」
俊之が言うと
「秘書の川嶋さんと交渉部長の薬師寺さんですよ」
立花は言った。
「あのふたりは美人で優秀だよね。」
俊之が言うと
「僕は一昨年からやっと貰えるようになったばかりですよ。」
立場は言った。
「そうだったの?」
俊之が言うと
「高村さんは1ヶ月半で貰えたわけですよ。」
立場は言った。
「それは状況が違うからだよ。」
俊之が言うと
「立花さんは私のチョコレートが欲しかったの?」
陽子が笑いながら言った。
「それは欲しいですよ。」
立花が言うと
「今日はいつもの立花さんではないようだね。」
俊之は言った。
「立花さんはクリスマスやバレンタインデーになると人が変りますからね。」
陽子は微笑んで言った。