雨のあとに虹 その211
「おはようございます。」
社長室に入って来た俊之を見て陽子は言った。
「おはよう。」
俊之は言った。席に座った俊之に
「高村さんは今日が何の日かご存知ですか?」
陽子がいたずらっぽく言うと
「何かあったかな?」
俊之は言った。
「お忘れですか?」
陽子が言うと
「三友商事との打合せはもっと先だね。」
俊之は言った。
「そうではないですよ。」
陽子が言うと
「鉄道工事の件は立花さんからの報告待ちだね。」
俊之が書類を捲って確認して言った。
「今日はバレンタインデーですよ。」
陽子が言うと
「もうそんな時期かになったのか。」
あらためて気がついた俊之は言った。
「これは私からの気持ちです。」
陽子が言ってチョコレートの箱を出した。
「ありがとう。」
俊之は言った。陽子が選んだチョコレートはおしゃれなパッケージで高級感があった。チョコレートを見た俊之は少し照れていた。
「沢田くん。」
山本は役員室に入って来た沢田が挨拶をしようとしたのを遮るように言った。
「はい。」
沢田が言うと
「貴志くんは不慮の事故で命を落としたのだから仕方がない。」
山本は言った。
「私も同感です。」
沢田が言うと
「田所の件は困ったものだよ。」
山本はと怒りを抑えきれずに言った。
「マスコミの人たちも取材殺到しています。」
沢田が言うと
「あんな凶悪な事件を起こすとは思わなかったよ。」
山本は言って困った顔をした。
「おはようございます。」
恵子が言って社長室に入って来た。
「おはよう。」
俊之は言ってパソコンを打っていた手を休めてから目を上げた。
「これをバレンタインデーのチョコレートです。」
恵子は言ってチョコレートの箱を俊之に差し出した。
「ありがとう。」
俊之は恵子の目を見て言った。
「薬師寺さんでふたりですね。」
陽子が言った。
「やはり川嶋さんが最初でしたか?」
恵子が言うと
「ふたりともありがとう。」
俊之は言った。
「川嶋さんに先を越されましたね。」
恵子が言うと
「貰えると思っていなかったのでとても嬉しいよ。」
俊之は言った。
「高村さんは本命の彼女から貰えますよね?」
恵子が冗談を言うと
「それだといいけどね。」
俊之は言った。
「それは高村さんしだいですよ。」
陽子が俊之を見て言った。
「そうだよね。」
俊之が言うと
「女は男しだいですよ。」
陽子は俊之の目を見てはっきり言った。恵子は少し驚いて陽子を見ていた。