雨のあとに虹 その194 | 開運童子のブログ

雨のあとに虹 その194

「ここで降ろしてください。」

俊之が言うと

「解りました。」

田中は言った。田中が運転する社用車は信号を渡ってスムーズに止まると

「お疲れさま。」

俊之は言って社用車を降りた。

「お疲れ様でした。」

田中が言うと俊之は軽く右手を上げた。信号が青になって社用車はスムーズに走り出していた。俊之は歩き出していた。後ろから

「おじさん。」

と千晴が言うと俊之は振向いていた。

「千晴。」

俊之が言うと千晴は微笑んで

「ちょうどよかった。」

と言った。

「何かあったのかい?」

俊之が言うと

「おじさんに報告があったからね。」

千晴は言った。

「報告を受けることがあったかな?」

俊之がよく解らない表情で言うと

「少し暗い時間があるでしょ?」

千晴は言った。

「大丈夫だよ。」

俊之は言った。

「どこかで珈琲を飲もうよ。」

千晴が言うと

「僕も珈琲を飲みたかったよ。」

俊之は言った。

「それなら早く行こう。」

千晴は言って俊之の腕を掴んでいた。

「それではあとで連絡をします。」

翔太は久美子に言った。

「いつでも良いから連絡をください。」

久美子が言うと

「それじゃ!」

翔太は言った。青信号で動き出した人混みの中に消えていく翔太を見て

「いつも急に現れてすぐに消えるのね。」

久美子は言った。心が落着いて歩き出した久美子に

「久美子さん。」

矢島が驚いて言った。

「矢島さん。」

久美子も驚いて言うと

「こんな所で偶然だね。」

矢島は優しく言った。久美子には矢島の巨体がとても頼もしく見えたのだった。

「急にどうしたの?」

俊之はパスタを食べる千晴に向かって言った。

「急にではなくて以前から出ていた話だよ。」

千晴は言った。少しざわついた店であったが周囲に話が漏れなくてよかった。俊之は珈琲を口に持ってくと

「それで純一くんと静江は離婚する事が避けられない状態になったわけだね。」

俊之は言った。

「もう印鑑を押したかもしれない?」

千晴はあっさりして言った。

「純一くんの事業もそんなにうまく言ってないとは知らなかったよ。」

俊之は言った。俊之の頭には純一の心配もしていると知って

「おじさんが心配する事はないと思うよ。」

千晴が言うと

「僕で力になるのなら何でもするよ。」

俊之は言った。

「あれはお父さんが天狗になったから人がついて来なかっただけよ。」

千晴が言うと

「今からでもやり直しは出来るよ。」

俊之は言った。

「お母さんは税理士として自立するから心配はいらないよ。」

千晴が言うと

「純一くんは大変な状態だから何とかしてあげたいね。」

俊之は言った。

「今更遅いよ。」

千晴が言うと

「そんなにあっさり決めて良いのかな?」

俊之は言った。

「意外とあっさり決まったよ。」

千晴が言うと

「ふたりは高校の同級生だよ。」

俊之は言った。

「それは私も知っているよ。」

千晴が言うと

「長年一緒に過ごした年月が純一くんと静江の絆を強くしなかったのだろうか?」

俊之は不思議そうに言った。

「高校の同級生だったからダメになったのよ。」

千晴は言った。

「同級生だからだめになったというのかい?」

俊之が言うと

「お父さんは大人になってからの失恋の経験がないから相手がいるのが当然と思っている。」

千晴は言った。

「そうかもしれない。」

俊之が言うと

「お母さんはあとになってからいろいろな人と出会って今では後悔しているみたい。」

千晴は言った。

「それはめぐり合わせ戸言うものだよ。」

俊之が言うと

「溝は深くなったから今では埋まらないよ。」

千晴は言った。

「寂しい話だね。」

俊之が言うと

「お父さんがおじさんにした事がお母さんも私も許せないからね。」

千晴は強い口調ではっきりと言った。

「千晴は若いのに冷静な心で見ているね。」

俊之は言った。