雨のあとに虹 その189
「気分はどうですか?」
多恵子は榊原に言った。
「最近は体調が良いよ。」
榊原は穏やかな表情で言った。入院してからくゆっくり身体を休めたおかげで以前のような不調はなかった。静かな病室は榊原に精神的な安らぎを与えたのかも知れない。
「それはよかったですね。」
多恵子が言と
「不思議なものだな。」
榊原は言った。
「何が不思議だとおっしゃるの?」
多恵子が言うと
「高村に会ってから体調が良くなっているよ。」
榊原は言った。
「主治医の先生も驚いていましたよ。」
多恵子は正直に言った。
「このお寺は梅雨時に来ると紫陽花がきれいだよ。」
俊之が言うと
「今度は梅雨になったら来たいね。」
久美子は言った。
「梅雨になったらまた来ようよ。」
俊之が久美子の目を見て言った。
「もう一度来たいです。」
久美子は言うと吹いてくる北風から寒さを感じて俊之に自分の身体を寄せていた。
「お待たせしました。」
ひとみはいつのもようにお客に言った。今日は久美子がいないが小百合とカウンターに入っていた。
「お次のお客様こちらへどうぞ。」
小百合も明るい声で言った。いつまでも久美子だけに頼るわけにはいかないのである。早く久美子のような人材を育てなければいけないとひとみは考えていた。
「この大仏は大仏殿の中にあったけれど津波で神殿が流されて今の状態になったと聞いたよ。」
俊之が言うと
「津波がここまで来たとは大きな台風だったの?」
久美子は驚いたように言った。
「かなり大きかったようだね。」
俊之が言うと
「当時の被害は大きかったのかしら?」
久美子は言った。
「あとで調べてみるよ。」
と俊之は微笑みながら言った。久美子は台風とは言え海岸からかなりの距離があるこの位置に津波が来た事もあるのかとびっくりしていた。
「これであと戻りは出来ないわね。」
育子が翔太に言った。珍しく都心のショッピングモールをふたりで歩いてそこで催されたイベントも楽しんでいたのである。
「始めてしまったからあとは答えを出すしかないと思っているよ。」
翔太はいい他。
「高村さんの心にある傷は厄介かもしれないわね。」
育子が言うと
「それは大丈夫だと思うよ。」
翔太は言った。
「少し時間がかかりそうだね。」
育子が言うと
「何とかなるよ。」
翔太は言った。
「みんなが協力するからうまくいってほしいよね?」
育子は心配そうな顔で言った。矢島も春香も天門も育子と同じ気持ちだったはずである。