雨のあとに虹 その187
「遅れましてすみません。」
待合わせの喫茶店に入って来た俊之はみずきを見て言った。
「忙しくなったのは良い事だから良いわよ。」
みずきは明るく言った。
「みずきさんのアドバイスのとおりに榊原をはじめ静江と純一くんとも過去のわだかまりを一切捨てての付き合いを意識しています。」
俊之が言うと
「それで良いのよ。」
みずきは言った。
「人を恨んだり陥れたりしてもそれはいずれ自分に跳ね返って来ますね。」
俊之が言うと
「正しい事をきちんとやっていれば人は認めてくれるし着いて来てくれるはずよ。」
みずきは言った。
「はい。」
俊之が言うと
「あいつのためなら何とか努力してやろうと思わせるような魅力ある行動をしなさいよ。」
みずきは言った。
「それを心がけます。」
俊之が言うと
「人を恨んでも憎んでも最終的には自分をダメにするだけなのよ。」
みずきは言った。
「いろいろ勉強になります。」
俊之が言うと
「それより早くケーキ食べなさいよ。」
みずきは言った。
「おいしそうですね。」
俊之が言うと
「高級感があるわね。」
みずきが優しく言った。
天門は電車の中で流れていく景色を見ながら考えていた。開運を施すにはその人のプライベートに触れなければならない。それにはある意味での守秘義務も発生するのだ。何よりも嘘をつく事は許されていない。今回は直接自分が何かを言うわけではないが俊之のためならば一度だけ方便を使う事にしようと考えていた。それは天門にとって一度だけ例外をつくる事になるのだ。天門が駅に着いてホームへ降りると携帯に着信があった。出ると桑田からであった。
「お忙しいところすみません。」
電話の向こうで桑田が言った。
「私なら大丈夫ですよ。」
天門が言うと
「高村さんの取材が終わって漫画の製作も順調に進んでいます。」
桑田は言った。
「それは良かったですね。」
天門は言うと
「天門先生は高村さんの今後をどのように鑑定されましたか?」
桑田は言った。
「先日お話した通りですよ。」
天門は言うと
「総武グループのトップとして将来と恋愛はどうなりますか?」
桑田は単調直入に言った。
「漫画が出版されるまでは口外してほしくないのですが良いですか?」
天門は静かに言った。
「お約束します。」
桑田が言うと
「総武のトップとしては高村さんしだいで10年やから20年はトップにいると思います。」
天門は言った。
「恋愛運は如何ですか?」
桑田が言うと
「周囲の協力がカギになると思いますよ。
天門ははっきりと言った。
「周囲の協力ですか?」
桑田は言ったが内容が把握できないようであった。
「高村さん。」
未来は突然現れた俊之を見て驚いて言った。あすなろ会の子供たちに対して行われる月に一度の誕生日会が終わったのである。
「すっかり遅れてすみません。」
俊之が言うと
「それは良いけど忙しいのにありがとう。」
未来は言った。
「こういう時間も時には必要ですよ。」
俊之が言うと
「来てくれただけでも子供たちが喜びますよ。」
未来は言った。
「適当なプレゼントが見つからなくてすみません。」
俊之は鞄の中から小さな箱をいくつか出して言った。
「心がこもっていれば良いのよ。」
未来が微笑みながら言った。