雨のあとに虹 その173
「大川教授。」
久美子が教授室に入って来て言うと
「堀川さんだね。」
大川教授は優しく言った。
「レポートを提出に来ました。」
久美子は言って鞄からレポートを出すと
「中を拝見するよ。」
大川教授は言うと
「はい!」
久美子は言った。大川教授はページを素早く捲って
「よく出来ているね。」
と言った。
「ありがとうございます。」
久美子は嬉しさを隠せないで言った。
「書くのが大変だったでしょう?」
大川教授は久美子を見て言った。
「一度出来たものを書き直ししたので時間がかかってしまいました。」
久美子が言うと
「これでテストは免除できるね。」
大川教授は言った。
「本当ですか?」
久美子が言うと
「本当だよ。」
大川教授は言った。
「とても嬉しいです。」
久美子が言うと
「このレポートはテストよりレベルが高いよ。」
大川教授が優しく言った。褒められて嬉しくなった久美子は
「ありがとうございます。」
と言った。大川教授は父親が娘を見るような目で久美子を見て
「堀川さんは椿さんと友達だったね。」
と言った。
「入学してから親しくしています。」
久美子が言うと
「少し勉強を教えてあげてくれないかね。」
大川教授は言った。
「ここが今回の工事の懸念事項です。」
担当係長の高根沢信夫が俊之に言った。俊之も陽子もヘルメットを冠って鉄道の工事現場にいたのである。
「あそこの大きな岩石だね。」
俊之はすぐに見つけて指を指して言った。
「そうです。」
高根沢が言うと
「大きな岩石だね。」
俊之は言った。
「あそこは工事をする過程でいろいろあったのですがダイナマイトで爆破する事にしました。」
高根沢が言うと
「あの石の上に大きな木が伸びているね。」
俊之は言った。
「ここから見ると美しく見えますね。」
陽子が言うと
「何という名前の木か解りますか?」
俊之は陽子に言った。
「私も詳しくありませんので解りません。」
陽子が言った。
「あの木はどうなるの?」
俊之が高根沢に言うと
「地元の住人は残すようにとの意見が多かったのですが気を避けての工事はコストがかかるので爆破する事に決めました。」
高根沢はあっさりした口調で言った。
「あの石は残そうよ。」
俊之は言った。
「残すとおっしゃいましたか?」
高根沢が言うと
「トンネルにしたらどうだろうね?」
俊之は言った。
「それはできません。」
高根沢が言うと
「どうして出来ないの?」
俊之は言った。
「もう爆破は決った事です。」
高根沢がいうと
「その決定が間違った選択でもかい?」
俊之は言った。
「工事も途中まで進んでいますよ。」
高根沢が言うと
「正樹オーナーには僕から説明しておくよ。
俊之は言った。
「それなら構いませんけどね。」
高根沢が言うと
「環境を守るためには多少コストがかかっても工事が遅れても仕方がない。」
俊之は言った。
「あの木を残したいお考えですね?」
陽子が言うと
「責任は僕が取るよ。」
俊之は言って主張を曲げなかった。
「次期社長がそうおっしゃるのならそうします。」
高根沢は折れて言った。
「それは決定事項ですね?」
陽子が言った。