雨のあとに虹 その165
「来週早々に三友商事側と打合せを再開する予定ですが如何でしょう?」
恵子は俊之に言った。
「それでいいと思うよ。」
俊之は言った。
「そのように段取りをします。」
恵子が言うと
「今度はこちらに来て貰うのが筋だからそうしてもらってください。」
俊之は優しく言うが主張は崩してはいないのだ。
「承知しました。」
恵子は言った。
「交渉は結論が出ていないのもあるよね?」
俊之が言うと
「ますは総武遊園地と総武緑化の一部で三友商事と提携する考えを伝えて同意を貰います。」
恵子は言った。
「最初はそこからスタートだね。」
俊之が言うと
「うまくこちらの思惑通りにいきますか?」
恵子はやや心配そうに言った。
「次回は三友商事の岡村社長も出てくるはずだからね。」
俊之が言うと
「そこでうまく同意を得るわけですね。」
恵子は言った。
「そうしないと三友商事の経営基盤が崩れるからね。」
俊之が言うと
「そんなに経営状況が悪いのですか?」
恵子が言った。
「強気に出てきてはいるけどかなり追い詰められているよ。」
俊之が表情を崩さずに言った。
「一部上場企業だから経営は良いものと思っていました。」
恵子が言うと
「総武は三友商事と提携しなくても他に提携先はいくらでもあるよね?」
俊之は言った。
「三友商事との提携は春香さんが正樹社長にお願いした事です。」
恵子が言うと
「ここは三友商事に恩を売っておこうよ。」
俊之は言った
「はい。」
恵子は言った。そんなふたりを陽子は黙って見ていた。広い社長室で俊之がはじめて恵子に出した指示を陽子は内心驚いて聞いていた。春香と正樹が俊之を総武のトップに選んだ理由が解ったような気がした。
「税理士事務所にお前が働きに行くのか?」
純一は驚いて静江を見て言った。
「今の経営状況では私が働かないとどうにもならないでしょ?」
静江が言った。純一にも仕方がないことは解っていたが静江が働きに出る事は賛成できなかった。
「銀行から融資が受けられればこんな事にはならなかった。」
純一が悔しそうに言うと
「それは無理ですよ。」
静江は静かに言った。
「今までは簡単に貸してくれたのにどうしてダメなのかが解らない。」
純一が言うと
「経営改善計画きちんと作成していないところに誰もお金は貸しませんよ。」
静江ははっきりと言った。
「俺の何が悪い?」
純一は叫ぶように言った。純一たちが住む建物は一軒家で大きな庭があり周囲には花も植えられているから多少の大声は近所迷惑にはならないのだ。
「広い世間を知らないとね。」
千晴が話に入ってきて言った・
「何だと!」
純一の顔は見るうちに怒りの形相に変わって言った。
「考えても見なさいよ。」
千晴は言った。
「親に向かって生意気を言うな!」
純一は言うが
「相手の都合も考えずに自分の主張ばかり言うからみんな離れて行くのよ。」
千晴は言った。
「それが俺のやり方だ!」
純一が言うと
「俊之おじさんに何をしたのかをよく考えてみてよ。」
千晴が言った。
「お前は何も知らないくせに生意気を言うな。」
純一が言うと
「バチが当たったのよ。」
千晴がきついひと言を言った。それを聞いた静江が
「それ以上は止めなさい。」
とだけ言うと少しの時間だけ静寂になった。
「好きにすればいいだろう。」
純一が言うと静江は
「そうさせていただきます。」
静江は言った。千晴は静江が珍しくきつい言葉を発したので驚いて
「お母さん。」
とだけ言った。
「千晴の言う事は間違ってはいませんよ。」
静江は言った。
「俺が間違っていたと言うのか?」
純一が言うと
「あなたも広い世間を見てきてはどうですか?」
静江は言った。
「俺だって隣のおじさんや向いのおばさんと付き合っているさ。」
純一が言うと
「世の中は自分が知らない世界がたくさんあります。」
静江は言った。
「お母さんもきつい事を言うね。」
千晴が言うと
「世間は向こう三軒両隣だけではないのですよ。」
静江は言った。静江が言った言葉にはある決意が込められていたのだった。