雨のあとに虹 その164 | 開運童子のブログ

雨のあとに虹 その164

「三友商事の山本さんからです。」

陽子は言って電話を保留にすると俊之が受話器を取って

「高村です。」

と言った。山本は恐縮して

「高村さんには申し訳ありませんでした。」

と言った。

「小さい事は気にしないでください。」

俊之が言うと

「中村から細かい報告を受けましたよ。」

山本が言うと

「山本さんから謝罪の電話をいただくとは思いもしませんでした。」

俊之は驚いて言った。

「田所は本社の勤務を解いて子会社に出向させます。」

山本が言うと

「僕たちをうまく利用しましたね。」

俊之は言った。

「何とか機嫌を直してほしくてね。」

山本が言うと

「起きた事は仕方がありませんので大事なのはこの後の姿勢ですよ。」

俊之は言った。

「それはきちんと自覚しています。」

山本が言うと

「二度とこのような事が起きないようにしていただければ大人になりたいと思います。」

俊之は言葉を選んで言った。

「二度と起こさせないよ。」

山本は強い口調で言った。

「それで田所さんに責任を取らせて子会社に転籍ですか?」

俊之が言うと

「高村さんもご存知のとおりに田所の悪行は目に余るものがあったからね。」

山本は言った。

「総武を堕しに使うのはこれが最初で最後にしてくださいよ。」

俊之はきっぱりと言った。陽子は俊之の隣で会話を聞いて俊之を頼もしく見ていた。

 改札口から育子が出て来た。スポーツバッグを抱えて歩くその姿は雑誌のモデルそのものであったが合気道初段であるとは誰も気づいていない。育子の姿を見つけた久美子は自分から近づいて行って

「育子さん。」
と言った。久美子に声をかけられた育子は声の方を見た。

「久美ちゃん。」

育子は言って久美子の方へ駆け寄って来た。

「急にすみません。」

久美子が言うと

「気にしないでね。」

育子は言った。

「そこのファミレスに行きましょう。」

久美子が言うと

「そうしましょう。」

育子は言った。ふたりは近くのファミレスに入って行くとすぐに席に座ることがきた。

「卓球の練習はきつくないですか?」

久美子が言うと育子は

「練習そのものは最初のうちはきつくてもすぐに慣れてくるからね。」

育子は言った。

「そうですか?」

久美子が言うと

「今ではそんなにきつくないよ。」

育子は言った。ふたりは寛いで珈琲を飲んでいた。

「私は高校時代にテニスをしていたけれど今は授業以外のスポーツからは遠ざかっていますよ。」

久美子が言って育子を見た。久美子はアスリートとしての育子が羨ましくもあったのである。

「人はそれぞれだから良いのよ。」

育子は言った。

「私は育子さんが羨ましいですよ。」

久美子が言うと

「久美ちゃんの出来る事を伸ばしていったらそれが自然だと思うよ。」

育子は言った。

「そうですよね?」

久美子が言うと

「私は久美ちゃんが羨ましいよ。」

育子は言った。

「本当ですか?」

久美子が言うと育子はスポーツバッグの中から小さな箱を出して

「これを久美ちゃんにと思ってね。」

と言った。

「おしゃれな箱ですね。」

久美子が言うと

「受取ってね。」

育子は言った。

「とても嬉しいです。」

久美子が言うと

「成人式のお祝いだよ。」

育子は言った。

「ありがとうございます。」

久美子が言うと

「あとで晴れ着の写真も見せてね。」

育子も久美子の晴れ着姿を見たくて言った。

「ちゃんと写真を撮ってお見せします。」

久美子は言いながら小さな箱に育子の優しさが見えたような気がしていた。

「久美ちゃんからタイミングよく留守電が入っていて良かったよ。」

育子は言った。

「私は育子さんの声が聞きたかったから電話をしてみただけですよ。」

久美子が言うと

「今日渡さないと間に合わなかったね。」

育子は言った。育子はかなり前から久美子と親しかったような錯覚を覚えていたが久美子と出会ってから1ヶ月も経っていなかったのである。