雨のあとに虹 その156
「何度足を運んでいただいても融資は難しいですよ。」
折原は純一に言った。
「だからそこを何とかできませんか?」
純一が言うと
「連帯保証人か担保がないと無理ですよ。」
折原は言った。
「三友銀行さんのような大きな」金融機関なら助けてくれても良いでしょ?」
純一が言うと
「当行も慈善事業ではないのでご理解ください。」
折原は言った。
「ダメですか?」
純一は言った。
「不良債権になるのが恐いものでね。」
折原は言った。純一はため息をついて応接室のから見える窓外の景色を見た。
俊之は翔太と直子のふたりと別れて15分ほど電車に乗って都心とは反対側の駅で降りた。駅から10分ほど歩いて小さな雑居ビルに入と大手の保険会社の代理店をしている会社の入口に俊之は立っていた。俊之の顔を見ると
「高村ちゃん。」
と前田は言った。
「急にすみません。」
俊之が言うと
「高村ちゃんが平日に訪ねて来るとは珍しいね。」
前田が言った。前田は平日には保険の営業をして競馬開催日には場外馬券売場の警備員をしていた。
「実は前田さんに協力をお願いしたくて来ました。」
俊之が言うと
「内容にもよるけど高村ちゃんの頼みなら何でも協力するよ。」
前田は機嫌良く言った。
「私はこれから用事があるから先に上がるわね。」
ひとみが久美子に言った。
「お疲れ様でした。」
久美子は言いながらひとみに近づいて行った。
「あとは3人に任せたわよ。」
ひとみは小百合にももうひとりの女性店員にも言った。
「大丈夫ですよ。」
小百合は言った。
「店長プレゼントありがとうございます。」
久美子がひとみに改めて御礼を言った。
「そこ代わりに成人式の写真を見せてよ。」
ひとみは妹を見るような目で久美子を見て言った。
俊之は夜のビジネス街の一角にあるビルのエレベーターに乗った。最上階にはおしゃれなバーがあった。このバーにひとりで入って行くのは久しぶりであるが初めてではない。以前にはよく来ていた。俊之が入って行くとまだ客の数は少なく空いている席に案内されて座った。周囲を見て俊之は久しぶりに三友商事に時代に戻ったような錯覚を覚えていた。そんな雰囲気に溶け込んだように俊之と同年代の男がバーに入って来た。俊之が30代後半に見えるのと違いその男は年相応に見えた。俊之が右手を上げるとその男はやって来て俊之の前に座った。
「高村とは久しぶりだな。」
その男は言った。
「増田くんとゆっくり会うのは3年ぶりだよ。」
俊之が言うと
「少し痩せたようだが元気そうだな。」
増田康文は懐かしそうに俊之を見た。
「高村さんは来週こちらに来ますか?」
田崎は社長室に入って来ると矢島に言った。
「来遊は一度顔を出すはずだ。」
矢島は言った。
「そうですか?」
田崎が言うと
「用件がある時には直接高村の携帯に電話をしても構わないぞ。」
矢島が言うと
「やっぱりそうした方が良いですよね?」
田崎は言った。
「遠慮するな。」
矢島は言った。
「携帯に連絡します。」
田崎が言うと
「あいつはきちんとサポートしてくれるはずだ。」
矢島は大きな声で言った。