雨のあとに虹 その138 | 開運童子のブログ

雨のあとに虹 その138

純子は居眠りを始めていた。久美子は大川教授の声に耳を傾けていたが純子を気にすると講義に集中できなくなっていた。大川教授は学生の質問を受けて気さくに話をするようになっていた。久美子は手を上げて
「ひとつ質問しても良いでしょうか?」

と言った。大川教授は

「新年最初の質問は知的な美人さんからだね。」

と言った。久美子は

「美人さんは余計ですよ。」

と言うと

「何でも遠慮なく聞きなさい。」

大川教授は冗談を交えて言った。純子が久美子の横で大川教授の声を聞いて目が覚めたようである。我に返ったようにしている純子を横目に見て

「この130ページの説明ですと漠然としていますので具体例をあげて説明をお聞きできればと思います。」

久美子が室内によく通った声で言うと

「それはすまなかったね。」

大川教授は言った。

「お呼びでしょうか?」

貴志は言って役員室に入って来た。

「君に確認したい事があってね。」

山本は貴志の目を見て言った。

「どのような事でしょうか?」

貴志が言うと

「この帳簿を見なさい。」

山本が言った。貴志は

「帳簿ですか?」

と言って山本を見た。

「おかしくないかね。」

山本が言うと貴志は山本から目を逸らした。貴志は帳簿を捲ってみた。この帳簿が山本が持っている事が貴志には理解できなかった。

「この内容は須藤さんがやったものです。」

貴志は言ったあとの言葉が出ない。

「これはが本当の帳簿のようだね。」

山本は言った。

「本当の帳簿は別にありましてこれは間違った帳簿で処分をしようと思っていたところです。」

貴志が言うと

「現在経理で保管している帳簿は改ざんされていると理解して良いね。」

山本はきっぱりと言った。貴志は硬直したように動けないでいた。

「それにはいろいろと理由があります。」

貴志はやっとの事で言うと

「かなりの金額が横領されているね。」

山本は言った。

「それに加えて取引先に接待を要求してかなりの金額を懐に入れているのも確認が取れているだけで10社以上あります。」

いつの間にか須藤が山本の後ろから出て来て言った。

「責任をとってもらうぞ。」

山本は言った。須藤は

「帳簿にないものは私の方でデーターを集めます。」

と言った。

「これから負の資産は整理するからな。」

山本の最後通告するように言った。

 俊之は公園のベンチに座っていた。約束の時間より早く着いたが景色を見て時間を過ごすのも良いと思っていた。時計を見るとまだ多恵子は来るまでには時間がある。新年早々にいろいろな事があったが今年はしなければいけないことがたくさん山積みであった。ひとつずつ順番にこなしていこうと考えていた。横で

「高村さん。」

と多恵子に言われて我に返っていた。

「多恵子さん。」 
俊之が言うと

「遅くなりました。」

多恵子は言った。

「どうぞ座ってください。」

俊之は多恵子にベンチに指差して言った。

「何か解ったのですか?」

多恵子は言った、多恵子は早く知りたいと心がはやる一方で不安もあったのである。

「こちらのカルテを見ていただければ一目瞭然です。」

俊之は言いながらカルテが入った封筒を渡した。

「失礼します。」

多恵子は言うと封筒を開けて目を通した。そのわずかな時間が俊之にはとても長いように感じられたていた。

「健康診断では異常が解ったはずですよ。」

俊之が言うと

「やはり予感が的中しました。」

多恵子はあきらめたように言った。

「今からでも治療すれば少しでも良くなると思いますよ。」

俊之は言った。

「主人は言う事を聞くでしょうか?」

多恵子が言うと

「僕だった入院すると言ったらどうですか?」

俊之は言った。

「高村さんは入院するはずだと私が言うのですか?」

多恵子が言うと

「僕をライバル視しているから少しでも効果があると思いますよ。」

俊之は言った。

「私が出来る事は全部やってみます。」

多恵子は自分の夫と俊之を比べるように見て言った。

「勝つとか負けるとかという問題ではないと言ってください。」

俊之は言った。

「私も高村さんと同じ考えです。」

多恵子は言った。

「すべて生命があってはじめて成立することですよね?」

俊之は言った。

「あと人は何をしようとしているのか解らなくなりそうです。」

多恵子が言うと

「死んでしまってはその先には何もないと言ってください。」

俊之は諭すように多恵子に言った。

「ありがとうございました。」

多恵子は言うと立って俊之に会釈をした。

「お大事にしてください。」

俊之も言うと立って会釈をした。

「失礼します。」

と言って背中を向けて去って行く多恵子を俊之はただ見つめていた。