雨のあとに虹 その123
「こちらでございます。」
田中が社長室の前でドアを開けて会釈をした。俊之たち3人は中へ入った。その社長室の奥には総武グループの4代目当主であり総武企画社長の白仁正樹とそのひとり娘である春香が座っていた。正樹も春香も俊之たちを見るとふたりはすぐに席を立った。
「高村さん。」
春香が言った。
「春香でしたか?」
俊之が言うと
「すっかりご無沙汰しました。」
春香が言った。久美子も育子も黙って俊之と春香を交互に見ていた。
「春香さんに会えるのを楽しみにしていましたよ。」
俊之は言った。
「紹介します。」
春香が言うと俊之は
「はい。」
と言って正樹の方を見た。
「父の正樹です。」
春香が言うと
「白仁正樹です。」
正樹が言った。次に春香は
「高村俊之さんです。」
と言うと
「高村俊之です。」
俊之は言った。
「はじめまして!」
正樹が言って右手を差し出した。俊之は握手するように正樹の手を握り締めて
「こちらこそはじめまして!」
と言った。正樹は
「高村さんに会えてよかったよ。」
と俊之に丁寧な言葉使いで言った。正樹は65歳にしては精悍で若々しかった。
「私もお目にかかれて光栄です。」
俊之は言った。俊之と正樹は視線を合わせて頭をきちんと下げた。久美子も育子もふたりを見ていた。俊之は
「こちらは私の友人である京野育子さんです。」
と言うと育子は
「京野育子です。」
と言って頭を下げた。正樹は
「白仁正樹です。」
と言うと春香も
「白仁春香です。」
と言った。俊之は
「最後になりましたが堀川久美子さんです。」
と言うと久美子は
「堀川久美子です。」
と言って頭を下げた。
「白仁正樹です。」
正樹は久美子の目を見て笑みを浮かべて言った。春香も
「白仁春香です。」
と言って久美子の目をじっと見た挨拶が終わると春香が
「みなさん椅子にお座りください。」
と言って椅子を勧めた。一同が落ち着いたところで正樹は久美子に向かって
「久美子さんは内装のデザインをコーディネイトする仕事を目指しておられるそうですね。」
と言った。久美子は驚いて
「はい。」
と言うとのがやっとであった。
「総武の仕事やってみるつもりはありませんか?」
正樹は言った。
「総武グループの仕事ですか?」
久美子が言うと
「そうですよ。」
正樹は言った。
「私で出来るかしら?」
久美子が言うと
「無理しない範囲でどうですか?」
正樹は言った。久美子は
「とても光栄です。」
と言うと正樹は優しく微笑んで
「久美子さんが一生仕事をしても追いつかないほど山積みですよ。」
と言った。久美子は突然の事に驚きながら
「ありがとうございます。」
と言った。次に正樹は育子を見て
「育子さんは優秀な卓球の選手だと聞きました。」
と言った。育子は
「そんなに優秀ではないですよ。」
と緊張しながら言った。