雨のあとに虹 その100 | 開運童子のブログ

雨のあとに虹 その100

「組長!」

柳田が緊張した声で言った。

「お前たちは黙っていろ!」

町島は言った。緊張している一同を前に俊之だけが平然としている。町島はこめかみにあてたピストルの引き金を引こうと指に力を入れた。その瞬間に若い衆が

「やめてください。」

と言いながら町島の傍に寄って行きピストルを弾き飛ばしていた。ピストルは空中を回転して俊之の前に飛んで来た。そのピストルを俊之は無言で拾っていた。

「静かにしないか!」

町島は言うと柳田は

「組長!」

と心配そうに言った。

「高村さんに失礼だぞ。」

町島は言った。

「やめてください。」

若い衆のひとりが言った。

「高村さんはきちんと義務を果たしたのだ。」

町島は言って俊之からピストルを受取るとこめかみで引き金を引いていた。

 久美子が駅ビルの中から出て来た。俊之から貰ったブローチを大事に持っていて早めに帰ろうとして信号を渡りきった時である。

「すみません。」

といつの間にか近くに来ていた翔太が言った。

「笹川さん!」

久美子が言うと

「一緒に来てください。」

翔太は言った。

「どうかしたのですか?」

久美子が言うと

「高村さんが危険です。」

さすがの翔太も慌てて言った。

 カチャ!と不発音がした。驚いた町島はさらに6回続けて引き金を引いた。

「どうしたというのだ。」

町島は言って怪訝そうにピストルの中を確かめた。

「お探しの物はこれですね。」

俊之はピストルの弾を手のひらに乗せて微笑みながら言った。

「ふざけた事しやがって!」

若い衆が怒鳴ると町島は

「静かにしないか!」

と大声で言った。

「僕は生命のやり取りをするほど大物ではありません。」

俊之は言った。

「高村さん。」

町島は言った。

「そんな勇気ありませんのでね。」

俊之は言った。

「それほどまでに矢島さんを助けたかったのか?」

町島は言うと

「僕には大事な友人ですからね。」

俊之は言った。

「高村さん。」

町島はさらに言った。

「はい。」

俊之が言うと

「この町島義介の完敗だ。」

町島は言って俊之に頭を下げた。

「頭を上げてください。」

俊之は言った。

「わしは高村さんに手も足も出なかったよ。」

町島が言うと

「これは勝ちも負けもないのです。」

俊之が言ったのを隣の部屋で矢島も聞いていた。

「高村!」

矢島が言いながら隣の部屋カから出て来た。

「迎えに来たぞ。」

俊之は言って立ち上がった。

「高村さん。」

町島が言った。

「何でしょうか?」

俊之は言って町島を見た。

「今後は矢島さんだけでなく高村さんの周囲には一切手を出さない事を約束しよう。」

町島は言った。町島の顔には敗者のそれがあった。

「こちらこそ大変失礼しました。」

俊之は言った。

「お前凄いな。」

矢島が言うと

「みんなが待っているから行こうよ。」

俊之は言って矢島を促した。俊之と矢島が出て行ったあとに

「高村俊之と言う男は凄い男だ。」

町島は言った。

「何でしょうか?」

柳田が言うと

「惜しい人物だな。」

町島は呟いた。