雨のあとに虹 その99 | 開運童子のブログ

雨のあとに虹 その99

 田崎はひとりで不安を隠せずに立っていた。俊之が江紫組の事務所に入っていってからでもかなりの時間が経っていた。

「高村さんまで何かあったのかな?」

田崎が呟いた。その田崎から少し離れたところで翔太と関口が心配そうに江紫組の事務所を見ていたのである。

「あの中では僕たちも簡単には手出しが出来ないぞ!」

翔太は悔しそうに言った。関口は

「そうですよね。」

と言うだけだった。

「ロシアンルーレットですか?」

俊之が出されたピストルを見て言った。

「ここに1発だけ玉を入れて回す。」

柳田が言った、

「よく見せてもらって良いですか?」

俊之が言って柳田が俊之にピストルを見せた。

「ピストルは複雑に出来ていますね。」

俊之が言って柳田と視線を合わせた。

「それぞれ1回ずつこめかみで引金を引くとはずれにピストルから球が出る。」

柳田が言うと

「子供の頃にテレビドラマで見ましたよ。」

俊之は言った。

「玉が出た方が負だよ。」

柳田が言った。

「どうだね?」

町島は表情を変えずに言った。

「やりましょう。」

俊之は言った。

「高村さんは肝が据わっているね。」

町島が言った。

「その前にピストルという物を見るのは初めてなので触らせていただいてよろしいですか?」

俊之が町島の目を見て言った。

「好きに触ればいい。」

町島は言った。柳田が俊之にピストルを渡した。

「これが本物のピストルですか?」

俊之は言いながらピストルをいじくり回していた。そんな俊之を町島も柳田もじっと見ていた。

その時に俊之の携帯が鳴った町島たちは携帯が鳴っているのを確認するとし視線を移した。

「俊さんは忙しいのかな?」

久美子は独り言を言った。明日は俊之の予定が空いていればゆっくり会いたかったのである。母親である知子へのブローチは久美子にとって嬉しかったのである休憩時間にお礼も言いたかったのであるが俊之は出られない状態のようだった。休憩時間が終わると久美子はすぐにカウンターに立っていた。

「失礼しました。」

俊之が言った。俊之が携帯を確認してポケットにしまうと町島たちは視線を俊之に合わせた。

「構わないよ。」

町島が言った。

「彼女からでしたのでね。」

俊之は余裕の表情で言った。町島と柳田も緊張感がなく落着いていた。

「彼女に別れを言わなくていいのか?」

柳田が言うと町島は

「高村さんに失礼だぞ。」

と言った。

「これは失礼しました。」

柳田が俊之に言った。

「それでは始めましょう。」

俊之は言ってこめかみで引金を引いた。カチャ!と音がして不発であった。

「次は私の番だ。」

町島が言ってこめかみで引金を引いた。カチャ!と音がしてまた不発であった。

「僕の番ですね。」

俊之が言ってこめかみで引金を引いた。カチャ!と音がしてさらに不発であった。 
「高村さんもなかなかの根性だな。」

町島が言うと

「友人を救うためですよ。」

俊之は言った。

「わしの番だ。」

町島が言ってこめかみで引金を引いた。カチャ!と音がして不発であった。一同に緊張した空気が流れた。

「あと2発ですね。」

俊之は言ってこめかみで引金を引いた。カチャ!と音がして不発であった。この時点で町島も柳田も若い衆たちも凍りついていた。堅気の人間ならなら途中で怖くなって逃げ出しているはずであるが俊之は逃げ出すどころか自分から先にこめかみで引金を引いた。そして3回とも不発であった。残る1回は町島の番である。その一発には明らかに実弾が入っているはずであった。町島は自らのこめかみにピストルを近づけた。

「今日は早くあがらなくていいの?」

小百合が言った。

「そのつもりですけどね。」

久美子は言った。

「まさかデートがドタキャン?」

小百合が言うと

「そうじゃないわよ。」

久美子は言った。

「本当に?」

小百合が言った。

「電話に出ないだけよ。」

久美子が言うと

「それって危なくないの?」

小百合は言った。

「大丈夫よ。」

久美子は言った。