雨のあとに虹 その90
「すっかりお付合いいただいてすみません。」
直子が俊之を目から視線を離さずに言った。都心にあるおしゃれな喫茶店である。
「僕も少し時間があったので気にしないください。」
俊之はいつもの口調で言った。
「高村さんは他の男の人と雰囲気が違いますよね。」
直子が言った。
「そんなに違うかな?」
俊之は言った。
「違いますよ。」
直子が言うと
「自分ではよく解からないけどね。」
俊之は言った。俊之には自分が直子にどう見えているか解かるはずもないのである。
「男の人は私たち女性に対してじろじろと見つめてばかりですよ。」
直子が言うと
「そうかもしれないね。」
俊之は言った。
「先ほどの人のように勝手にこちらの都合も考えずに言葉をかけてくる場合もあります。」
直子は言った。
「そうだろうね?」
俊之は言った。
「高村さんはあまり女性をじろじろ見ないし声をかけても来ないですね。」
直子が言うと
「そうでもないけどね。」
俊之は言った。
「私たちに近づくきっかけを作ろうとしていないですね。」
直子は言った。
「そうなのかな?」
俊之が言うと
「どうしてですか?」
直子は言った。俊之は少し考えて
「そう言われても別に無視しているわけではないよ。」
俊之は言った。
「本当ですか?」
直子が言うと
「僕だって男だから女性に興味があるよ。」
俊之は言った。
「私にも興味はありますか?」
直子に言われて俊之は直子の目を見た。からかわれたのかと思ったのだ。
翔太は榊原の後をつけていた。俊之と久美子は関口に任せている。榊原は年末の忙しい時に会社を抜けて電車で隣の街へ来ていたのである。
「何処へ行くのだろう?」
翔太は呟くと素早い身のこなしで後を追った。やがて帝王義塾大学病院の前で榊原は脚を止めた。入口で立止まって榊原は
「仕方がない。」
と言ってから病院の中に入って行った。
「病院か。」
翔太は言ってしばらく様子を窺っていたが携帯を取出して
「すまないが病院に知り合いがいる人を知らないか?」
翔太は関口に言った。